戦闘が始まってから100日がたったのに合わせて、WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は、SNSで声明を発表しました。
このなかでテドロス氏は、「医療に関する300を超える攻撃や、援助を行うための安全が確保できない状況が続き、ガザ地区の病院の大半が活動を停止している。まだ機能している15の施設では、限られた医療しか提供できていない」と指摘しました。
そのうえで、「医療システムが破壊されたために、本来避けられたはずの切断手術を余儀なくされたり、十分な治療を受けられず、命を落としたりする患者がいる」と述べ、危機的な医療の現状を訴えました。
そして「ガザ地区の人々は地獄のなかで生きている。100日を数え、なおも続く絶え間ない不安と恐怖はことばで言い表すことができない」として停戦の必要性を改めて強調しました。
![](/news/html/20240115/K10014321051_2401150033_0115061935_01_02.jpg)
【15日 詳細】戦闘開始から100日経過 終結は見通せない状況
イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が始まってから、14日で100日がたちました。
ハマスは新たに3人の人質の映像を公開するとともに、イスラエルの攻撃で人質も死亡した可能性があると明らかにしました。
一方、イスラエル側もこれまでにハマスの戦闘員およそ9000人を殺害したと成果をアピールしていて、戦闘の終結は見通せない状況が続いています。
WHO事務局長 SNSで声明 停戦の必要性強調
ガザ地区全域に空爆や砲撃 多数の死傷者か
イスラエル軍は戦闘の開始から100日となった14日、ガザ地区でのこれまでの軍事作戦でハマスの指揮官70人あまり、戦闘員およそ9000人を殺害したと発表するなど成果をアピールしています。
ガザ地区への攻撃は15日も続いていて、複数の地元メディアはイスラエル軍の攻撃で南部ハンユニスで少なくとも33人が死亡したなどと伝えています。
ガザ地区の保健当局は14日、過去24時間にイスラエル軍の攻撃で125人が死亡し、これまでの死者は2万3968人に上ると発表しました。
人質3人とみられる映像公開
![](/news/html/20240115/K10014321051_2401151348_0115134941_02_04.jpg)
こうした中、ハマス側は14日、ガザ地区で拘束されている人質3人の姿を写したとみられる映像を新たに公開しました。
映像では、26歳の女性と53歳、38歳の男性だとされるあわせて3人の姿が写されていますが、いつ撮影されたものかは明らかにしていません。
ハマス軍事部門報道官「人質たちの多く 最近死亡の可能性高い」
14日、ハマスの軍事部門カッサム旅団の報道官は声明を発表し、「人質たちの運命はイスラエル軍の侵略のせいで、この数週間で分からなくなった。多くは最近死亡した可能性が高く、残りの人質も差し迫った危険にさらされ、敵はその責任を負っている」と主張しました。
そして「イスラエルが侵略をやめなければ、いかなる話し合いも無意味だ」として、ガザ地区でイスラエルの軍事作戦が続く間は人質の解放に関する交渉に応じない姿勢を改めて強調しました。
さらに「イスラエルに抵抗する戦線の複数のメンバーから、今後数日のうちに敵に対する攻撃の拡大を模索していると聞いている」と述べ、ハマスへの連帯を示すイエメンの反政府勢力フーシ派や、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなどが近く、イスラエル側への攻撃を強化する可能性を示唆しました。
イスラエル ネタニヤフ首相「戦いは今後数か月続くだろう」
一方、14日、イスラエル軍はこれまでにハマスの戦闘員およそ9000人を殺害したほか、ハマスに関連する施設などあわせておよそ3万か所を攻撃したと発表しました。
イスラエルのネタニヤフ首相は14日に行われた閣議の冒頭で「戦いは今後、数か月続くだろう。必ず全員の人質を連れ戻す」と述べ、あくまでもハマスを壊滅させ、人質を連れ戻すと強調しました。
ヒズボラ イスラエルとの対決姿勢強める
ハマスとの連帯を示す、隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラも、イスラエルとの対決姿勢を強めていて、14日、イスラエル北部の住民2人がヒズボラの砲撃で死亡した一方、イスラエル軍は国内に侵入した戦闘員4人を殺害したと発表しました。
ヒズボラの最高指導者、ナスララ師は演説で「レバノンでの戦線は、ガザに連帯を示すためにある。戦いの準備はできていて、何も恐れていない」とイスラエルをけん制していて、今後の戦闘拡大への懸念も広がっています。
現在も130人超が人質に イスラエル各地で無事解放を願う催し
![](/news/html/20240115/K10014321051_2401150617_0115061935_02_05.jpg)
14日、エルサレムやイスラエル各地では人質の無事を願う催しが行われました。このうちエルサレムでは、市の中心部にある鐘が鳴らされると、集まった人たちは手に持った小さな鈴を鳴らすなどして、いまもガザ地区で人質にとられている130人以上の人質の解放を願いました。
エルサレムでの催しに参加した女性は「イスラエルで多くの人が犠牲になっただけでなく、いまも多くの人質がとられている状況です。本当にひどい100日間です」と話していました。
別の男性は「この100日間、人質解放をめぐる交渉は思うように進んでいないので、どうすればよいか分かりません。人質が無事に戻ってくることを祈るばかりです」と話していました。
![](/news/html/20240115/K10014321051_2401150618_0115061935_02_06.jpg)
またイスラエルのテルアビブでは、市の中心部に集まった人々が100秒間黙とうをささげ、ハマスの攻撃で犠牲になった1200人以上を追悼するとともに、人質の一刻も早い解放を祈っていました。
人道支援物資を搬入 赤新月社の責任者“移動するのにも危険が”
![](/news/html/20240115/K10014321051_2401150431_0115061935_02_07.jpg)
エジプトとの境界にあるガザ地区南部のラファ検問所で人道支援物資の搬入を担当する、パレスチナ赤新月社の責任者、マフムード・アブアタ氏がNHKの取材に応じました。
このなかでアブアタ氏は、ガザ地区に搬入される支援物資の量が、イスラエル政府が約束していた一日にトラック200台に満たない日もあることについて、人道状況の悪化が続く現場のニーズを満たすには不十分で、搬入量の増加が必要だと強調しました。
そのうえで「戦争が続いているので、移動をするのにも危険が伴い、すべての地域に物資を届けることができない。戦争をやめるよう求める」と述べ、ガザ地区の北部をはじめ各地に物資を届けることが困難だとして、戦闘の停止を訴えました。
![](/news/html/20240115/K10014321051_2401150431_0115061935_02_08.jpg)
イスラエル当局は去年12月から新たな検問所を開放するなどして、去年10月の戦闘開始以降、8000台を超えるトラックがガザ地区に入ったとして、人道状況への配慮をアピールしています。
一方で、OCHA=国連人道問題調整事務所は、ガザ地区北部に支援物資を運ぶ車両の通行がイスラエル側に拒否されるケースが相次いでいて、ことしに入ってから予定した物資のおよそ2割しか北部には届けられていないと、懸念を示しています。
ガザ地区では一連の衝突が始まってから100日となった14日も、イスラエル軍による激しい攻撃が行われ、パレスチナの地元メディアは多数の死傷者が出たと伝えています。
ガザ地区の保健当局は14日、過去24時間にイスラエル軍の攻撃で125人が死亡し、これまでの死者は2万3968人に上ると発表しました。
イスラエルのネタニヤフ首相は14日「戦いは今後、数か月続くだろう。必ず全員の人質を連れ戻す」と主張しています。