能登 介護担う職員の人手不足が依然深刻 いかに支えていくか

能登半島地震から、1月15日で2週間です。被災した各地の高齢者施設では、今も断水が続き、衛生環境が悪化する中、命と健康を守るため高齢者を他の施設に移す動きなどが本格化しています。一方、介護を担う職員の人手不足は依然深刻で、施設や職員をいかに支えていくかが大きな課題になっています。

地震で大きな被害を受けた石川県の輪島市や珠洲市などの高齢者施設の多くで、今も断水や停電が続き、風呂やトイレが利用できず、衛生環境が悪化しています。

こうした状況の中、発熱など体調の急変で病院に搬送される人や、新型コロナなどの感染症にかかる人、それに、災害との関連はわからないものの、体調を悪化させるなどして亡くなる人も出ています。

一方、職員の中にはみずからも被災した人が多く、限られた人員で入所者のケアにあたらざるをえない状況だということです。

このままでは高齢者の命や健康を守れないとして、入所する高齢者を他の介護施設に移す動きなどが本格化しています。

ただ、受け入れ先が見つからず施設にとどまらざるをえない高齢者も多く、厳しい状況が続いているほか、職員一人ひとりの負担や疲弊の度合いも日ごとに高まっているということです。

厚生労働省は、全国の福祉施設から応援の介護職員などを募り、15日から被災した施設に派遣することにしていますが、復旧までに時間がかかることが想定される中、施設や職員をいかに支えていくかが大きな課題になっています。

他県から派遣の介護福祉士の支援が終わる 新たな派遣求める声も

能登半島地震で高齢者や障害者などを支援する施設の職員なども被災し、人手の確保が課題となる中、石川県能登町の高齢者施設では、ほかの県の施設から派遣された介護福祉士の支援が14日で終わり、新たな介護職員の派遣を求める声が聞かれました。

認知症の高齢者などが利用する能登町のケアホーム「いるか乃里」では、14人いる職員の多くが被災し、通常どおりの勤務ができない人もいる中で、定員を超える11人の高齢者を受け入れています。

施設を支援しようと、8年前の熊本地震で被害を受けた熊本県にある高齢者施設が、1月11日から介護福祉士2人を派遣し、利用者のケアや支援物資の仕分けなどにあたりました。

派遣の期間は14日で終了し、支援にあたった本田裕志さんは「自分も熊本地震のときに大変な思いをしたので、職員の方もだいぶお疲れだと思い、少しでも負担が減るように活動しました。慣れてきたところですが、熊本に戻っても、一日も早い復興を願っています」と話していました。

施設では、支援がなければ15日からは通常の半数程度の人員で高齢者のケアなどにあたらなければならないということで、石川県を通じて国に介護職員の派遣を申し込んでいるということです。

施設によりますと、認知症の人は環境が変わると症状が悪化するおそれがあることから、できるかぎりこれまでの生活が維持できるよう、ケアにあたる介護職員の人手の確保が重要になるということです。

連日泊まり込みで対応にあたってきた、ケアホームの上野かおり施設長は「被災した職員を休ませたい中で、熊本からの派遣はとても助かりました。人手があれば利用者のケアも充実できますので、新しい派遣が決まるまでどうにか頑張ります」と話していました。

専門家「日本全体で支える体制作りが求められる」

災害精神医学が専門で、目白大学保健医療学部の重村淳教授は、みずからも被災しながら避難所や福祉施設などで支援にあたっている人について「人々のために尽くしてくれていますが、不眠不休ではいつまでも働けず、心身ともに影響が出てしまいます。発災直後には一時的にエネルギーが出て、自分自身でも気付かないうちに無理をしてしまいます。次第に感情的な高ぶりやイライラが出てきて、神経が高ぶって不眠になるおそれもあります。このような状態が続くと、抑うつ状態になり、さらに長期化すると、『燃え尽き症候群』といって、本来やるべき任務に対して情熱を傾けられず、ミスが増えてしまうことがあります」などと指摘しました。

そのうえで「可能なかぎり、本来とるべき休憩の時間を確保することが求められます。組織の上層部が呼びかけて、職員みんなの健康を守るためのリーダーシップを発揮することが重要です。支援にあたる側の人たちが長く支援活動ができるよう、日本全体で支える体制作りがこれから求められる」と話しています。