中国 去年の自動車輸出台数 日本を抜いて世界1位の見通し

中国が去年1年間に輸出した自動車の台数は、491万台となり、年間の自動車輸出台数で、日本を抜いて世界1位となる見通しになりました。EV=電気自動車の輸出が大幅に増えたことなどが主な要因です。

11日、中国の自動車メーカーなどでつくる「自動車工業協会」は去年1年間の自動車の輸出台数が、前の年と比べて57.9%増えて491万台となり、過去最高となったと発表しました。

日本の年間の輸出台数は、まだ発表されていませんが、去年11月までで399万台と、中国に届かないのは確実な情勢で、中国が年間の自動車輸出台数で日本を抜いて初めて世界1位となる見通しになりました。

これは、
▽ヨーロッパをはじめ、世界的に普及が進むEV=電気自動車などの「新エネルギー車」の輸出が前の年の1.7倍以上に増えたことや、
▽ウクライナ侵攻を受けてほかの国が撤退したロシア向けが大きく伸びたことなどが主な要因です。

中国の自動車メーカーは、日本メーカーのシェアが高い東南アジアにもEVの輸出を増やしていて、日本メーカーは対応を迫られることになりそうです。

また、あわせて発表された中国の去年1年間の新車の販売台数は、EVの販売が好調だったことなどから、前の年から12%増えて、3009万4000台となり、過去最高となりました。

中国メーカーのEV 存在感高まる

世界のEV=電気自動車の市場で、中国メーカーの存在感は高まっています。

調査会社のマークラインズが推計値も含めてまとめた去年1月から10月までに世界で販売されたEVの台数は、
▽アメリカのテスラが142万3000台で首位、
次いで、
▽中国のBYDが112万3000台となっていて、この2社で全体の3分の1以上を占めています。

続いて
▽3位がドイツのフォルクスワーゲングループで57万1000台、
▽4位が中国の広州自動車で39万1000台、
そして、
▽5位はアメリカのGM=ゼネラルモーターズが中国の上海自動車などとの合弁会社も含めたグループの合計で38万1000台となっています。

さらに
▽中国の吉利自動車が37万9000台で6位に入っています。

中国メーカーが台頭してきている背景には、中国国内でEVの販売が急速に伸びていることに加え、ヨーロッパをはじめ、世界的にEVの需要が拡大し、中国からの輸出が増えていることがあります。

一方、日本メーカーは、
▽日産自動車と、提携先のフランスのルノー、それに三菱自動車工業の3社合わせて24万台で9位、
▽トヨタ自動車のグループが7万1000台で23位となっていて、存在感を示すことはできていません。

中国のメーカー EV海外展開も加速

中国の自動車メーカーは、世界的なEVの普及に合わせ国内だけでなく海外展開も加速させています。

このうち、大手の吉利自動車は、去年11月に傘下のEVブランドの販売店をスウェーデンのストックホルムにオープンさせ、ヨーロッパへの輸出に本格的に乗り出しました。

また、
▽EV最大手のBYDが先月、東欧のハンガリー南部にヨーロッパ初の工場を建設すると発表したほか、
▽いずれも大手の長城自動車や上海自動車、それに奇瑞自動車もヨーロッパに工場を建設する方針で、現地生産の計画が相次いでいます。

一方、中国メーカーは、日本メーカーが高いシェアを持つ東南アジアでも事業を強化しています。

輸出の拡大に加え、
▽BYDと大手の広州自動車傘下のEVブランドがいずれも年内にタイに工場を建設するほか、
▽大手の長安自動車も来年からタイで現地生産を始める計画を明らかにしていて、攻勢を強めています。

中国国内では、EV市場の拡大は続いているものの、伸びは鈍化していて、中国メーカーの間で、今後、海外展開を強化する動きがさらに強まることも予想されます。

ヨーロッパでは警戒感も

中国メーカーのEVの販売が伸びていることに、脱炭素社会の実現に向けてEVの普及を進めているヨーロッパでは警戒感も出ています。

ヨーロッパ委員会によりますと、EU域内でのEVの販売額に占める中国メーカーのシェアは2019年に0.4%でしたが、2022年は3.7%まで上昇し、来年には15%に達すると予想されています。

中国メーカーの攻勢が強まる中、EUは去年10月、中国製のEVが国からの補助金で価格が抑えられているとして調査に乗り出したことを発表しました。

補助金の実態やEUのメーカーに損害を与えているかなどを調べるとしていて、EUの産業が不公正な競争にさらされ、損害を受けたと認定されれば、関税を上乗せするなどの措置をとることができます。

中国政府は、EUの調査に強く反発する一方、中国メーカーはヨーロッパでの工場建設の計画を相次いで明らかにしていて、現地生産の方針を強調することでこうした懸念を払拭(ふっしょく)するねらいもあるとみられます。

軍事侵攻後 ロシアに輸入92%が中国メーカー

ウクライナ侵攻を続けるロシアに対して欧米や日本は制裁を強化し、自動車メーカーも相次いでロシアでの生産や販売から撤退しています。

その空白を埋めるかのようにロシア国内でシェアを伸ばしているのが中国メーカーです。

ロシアの地元メディアは税関当局の話として、去年1月からの8か月間でロシアに輸入された自動車の92%を中国メーカーが占めたとしています。

軍事侵攻が始まる前の2021年には、その割合がおよそ10%だったということで、短期間でロシアの輸入市場を席けんしたことがうかがえます。

中国との国境に近いロシア極東のウラジオストクでは、連日、中国メーカーの販売店が多くの人でにぎわっていて、11日も車を買いに訪れた子ども連れや夫婦の姿が見られました。

このうち購入した車を引き取りにきた男性は「ロシアには中国車のほかに選択肢はありません。世界のほかの国々も中国の車に乗りかえていると思います。車の外見が好きですし、あとは品質もいいことを願いますが、それは乗っていくうちにわかってくると思います」と話していました。

このメーカーの新車価格は、日本円で800万円を超える高級車ぞろいですが、販売店の担当者は「車を見に来る客がどんどん増えて、売り上げも伸びています。中国車の需要が高まっていると感じます」と話していました。

この店舗にはウクライナ侵攻前までは別の外国車メーカーが入っていましたが、販売を停止したため、おととし12月から中国メーカーが営業を始めていました。