自民「政治刷新本部」で初会合 岸田首相が党改革に決意

自民党は、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、「政治刷新本部」の初会合を開き、岸田総理大臣が信頼回復に向けて党改革に全力で取り組む決意を示しました。無派閥の菅前総理大臣らは、派閥の解消を議論すべきだと主張していて、派閥のあり方の検討が焦点となります。

自民党は、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、再発防止策や派閥のあり方などを議論するため、「政治刷新本部」を設置し、11日に党本部で初会合を開きました。

冒頭、本部長の岸田総理大臣は「国民の厳しい目、疑念の目が注がれており、自民党をめぐる現在の状況は極めて深刻という強い危機感のもと、一致結束して事態に対応していかなければならない」と述べました。

その上で「私自身、最優先、最重点の課題として取り組みたい。信頼回復のため、日本の民主主義を守るためには自民党がみずから変わらなければならない」と述べ、党改革に全力で取り組む決意を示しました。

会合では、派閥のあり方をめぐり、最高顧問に就いた無派閥の菅前総理大臣らが、信頼回復には党として明確な対応を打ち出す必要があるとして、派閥の解消を議論すべきだと主張しました。

これに対し、「派閥には若手議員の育成などを担う役割もある」という声や「派閥が金集めや人事でポストを得るための組織だと思われないような改革が必要だ」という意見が出され、派閥のあり方の検討が焦点となります。

一方、本部では、政治資金の透明性を高める方策として、政治資金規正法の改正も視野に、▽収支報告書にパーティー券の購入者の名前などを記載しなければならない金額を引き下げることや、▽会計責任者が不正な処理を行った場合に、政治家にも責任を負わせることなども検討する見通しです。

本部では来週、党所属のすべての議員を対象に会合を開くことにしていて、法律や会計の専門家らからも意見を聴き、1月中に中間的な取りまとめを行う方針です。

「政治刷新本部」の構成と派閥の内訳は

自民党の「政治刷新本部」は38人で構成されます。

岸田総理大臣が本部長を務め、麻生副総裁と菅前総理大臣の総理大臣経験者2人が最高顧問に就きました。

また茂木幹事長が本部長代行を務めるなど、党執行部のメンバーも名を連ね、女性局長や青年局長を経験した中堅・若手の議員も加わっています。

派閥ごとの内訳は
▽最大派閥の安倍派が10人で
▽麻生派が3人
▽茂木派が7人
▽岸田派が5人
▽二階派が2人
▽森山派が1人となっています。
▽無派閥は、派閥を離脱した岸田総理大臣を含め10人です。

林官房長官 “国民の声受け止め全力で取り組む”

林官房長官は記者会見で「今後、国民の政治への信頼回復に向けて対応が行われるものと考えている。政府としても、政治に対する不信や物価高、少子化対策など、国民のさまざまな声を真摯(しんし)に受け止めながら、内政や外交の諸課題に全力で取り組んで一つ一つ結果を出していきたい」と述べました。

菅前首相“派閥解消は国民の声”

政治刷新本部の最高顧問に就いた無派閥の菅前総理大臣は記者団に対し「リクルート事件を受けてできた『政治改革大綱』で派閥の解消を宣言したが、できなかった。今回事件が発生し、自民党としてどう対応すべきか明確に打ち出すべきで、非常に分かりやすいのが派閥の解消だ」と述べ、会合で派閥の解消を議論すべきだと主張したことを明らかにしました。

その上で「派閥の解消は国民の声だ。派閥があるという理由だけで自民党を見放す人もいて、国民に開かれた政党として責任を持つためには、派閥の解消が必要だ」と述べました。

自民 茂木幹事長“派閥は政策研さんの場”

茂木派の会長で、刷新本部の本部長代行を務める茂木幹事長は会合であいさつし「派閥は政策研さんの場であり、党の組織を補完して人材育成や若手の教育の機能を担うものだ。こうした本来の機能や役割からみて、今回の問題も含め、どこに問題があるのかや今後のあり方はどうすべきかについて考えていかなければいけない」と述べました。

自民 太田参院議員“クリーンな視線で政治立て直す”

安倍派に所属する太田房江参議院議員は記者団に対し「集中的に議論し早期にいま起きている不信に対して説明責任を果たすことが一番大切だ。しがらみのないクリーンな視線でしっかりと政治を立て直したい」と述べました。

また、派閥を解消すべきか問われ「自民党には部会など議論して政策を作る場があり、派閥との役割分担を整理しなければならない」と述べました。

一方、野党側が本部の役員に安倍派の議員が多いと批判していることについて「たまたま安倍派に女性局の経験者が多いためだと思う。私も女性局長経験者として参加した」と説明しました。

小泉元環境相“派閥を無くす以外ない”

無派閥の小泉元環境大臣は記者団に対し「刷新本部を立ち上げたのだから『刷新』の名に値するような結論を出せるよう党内でしっかり議論を進めていきたい。みんなの意見が入ったという体裁だけ整え、中途半端な結論にするという自民党的体質があるが、それでは『刷新』にならない。みんなに意見を言わせたことをアリバイにしないことが大事だ」と述べました。

その上で「派閥ということばを使うのがはばかられるのは、人事とカネの問題がにおうからだ。人事とカネがついて回るのが派閥であるならば、派閥を無くすという結論以外にない」と述べました。

自民 三原じゅん子参院議員“派閥解消を含め議論を”

無派閥の三原じゅん子参議院議員は記者団に対し「会合では『危機感を感じて刷新しなければいけない』ということや『期限ありきではなく、派閥の解消を含めて議論してほしい』と発言した。いち派閥うんぬんという話ではなく、自民党全体の問題として政治のあり方を変えていかなければならない」と述べました。

三谷衆院議員“派閥ありきの議論 国民に受け入れられず”

無派閥の三谷英弘衆議院議員は記者団に対し「派閥ありきの議論は国民に受け入れられず、会合では『派閥が必要だと言うなら、しっかり説明して国民に理解してもらわないと派閥は今後存続しえないのではないか』と申し上げた。また若手の声をしっかりと反映させていく場がほしいということも求めた」と述べました。

立民 泉代表“新組織は順序が逆 本気度ない”

立憲民主党の泉代表は訪問先の金沢市で記者団に対し「刷新本部の役員に派閥のボスがいる中で何を変えるつもりなのか。裏金疑惑が指摘されている多くの議員に対し、岸田総理大臣も自民党も何の調査も処分もしていない。全くけじめを付けていない中、新しい組織をつくるのは順序が逆で、本気度がないと証明しているようなものだ。刷新本部で国民が満足する案が出せないことは明確だ」と批判しました。

その上で政治資金規正法の改正について「自民党に改正を語る資格はなく、野党側が出す案を自民党はただ黙って飲むべきだ」と述べました。

立民 長妻政調会長 “本部役員に安倍派議員が最多は茶番”

立憲民主党の長妻政務調査会長は、記者会見で「本部の名前は『自民党刷新本部』のほうがいいのではないか。役員のメンバー構成が、安倍派の議員が最多で10人というのは茶番に近い。安倍派の議員は、派閥パーティーの政治資金収支報告書への記載をどう処理していたのか、実態を国民に知らせてからメンバーに入るべきだ。現行の甘いルールさえ意図的に破る人が、ルールをいじれば違反がなくなるというのは茶番だ」と述べました。

そのうえで、「立憲民主党はおととし、パーティー券の購入を含めた企業・団体献金の全面禁止法案を提出しているが、自民党が飲むことは到底できないと見ている。さらに内容を厳しくした法案も検討している」と述べました。

維新 音喜多政調会長“改革提言できるか厳しく見ていく”

日本維新の会の音喜多政務調査会長は、NHKの取材に対し「派閥や今の自民党を守る考えを持つ議員も多数見られ、本気の改革を行うのはなかなか難しいのではないか。国民からは、派閥の解体的な出直しや政治資金パーティーの廃止を含めた抜本的な見直しなどが求められているが、自民党の権力を支えてきた根幹を手放すような、自分たちに厳しい改革を提言できるのか厳しく見ていきたい」と述べました。

公明 山口代表“刷新の名にふさわしい結論を”

公明党の山口代表は記者団に対し「国民の厳しい目をきちんと捉えて対応する自民党の基本的な姿勢を評価し、自民党がどこまで変われるか、刷新の名にふさわしい結論を出せるよう見守りたい。岸田総理大臣にはリーダーシップを発揮していただきたい」と述べました。

また派閥のあり方については「今回の問題との関連を厳しく問いかける必要がある。無派閥で総裁になった菅前総理大臣の意見も大いに党内議論で生かされるべきであり、派閥ありきではなく虚心に検討していただきたい」と述べました。

教育 前原代表「全く期待できない」

教育無償化を実現する会の前原代表は記者会見で「岸田総理大臣からは、リーダーシップをとる明確な意志が感じられず、全く期待できない。派閥の解消や企業・団体献金の禁止、党や派閥の政治資金パーティーを禁止するには、明確なリーダーの意志が必要だ。『人を集めました、みんなで議論してください』では、期待する答えは得られないのではないか」と述べました。

令和臨調 “令和版の新たな大綱の作成を”

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、各界の有識者が参加する「令和国民会議」、通称「令和臨調」は、4人の共同代表による声明を発表しました。

声明では、「単に政治資金規正法上の違反行為として処理して終わることなく、政治とカネの関係を含め政治のあり方全体を見直す運動の起点にすべきだ」としています。

そのうえで、自民党がリクルート事件を受けて平成元年にまとめた「政治改革大綱」を検証して、令和版の新たな大綱を作成し、政治を新しい時代にふさわしい姿に変えるべきだとしています。

そして、各党に対し、組織統治の指針となる「ガバナンス・コード」の確立・強化や、政治資金制度の改革などに取り組むよう呼びかけています。