【11日詳細】“イスラエルの攻撃はジェノサイドか”ICJで審理

ガザ地区へのイスラエル軍による攻撃をめぐりICJ=国際司法裁判所では、パレスチナ人に対するジェノサイド、民族などの集団に破壊する意図を持って危害を加える犯罪にあたるかどうかの審理が11日、始まりました。多くの市民の犠牲を伴う攻撃が正当化されるのか、国際的に注目されています。

イスラエル軍は、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの壊滅を目指し、南部ハンユニスと中部マガジへの空爆と地上作戦を行い、学校をテロ活動の拠点としていた複数の戦闘員を殺害したなどと11日、発表しました。

一方、パレスチナ赤新月社は10日、けが人を搬送していた救急車がイスラエル軍の攻撃を受けて救急隊員を含む6人が亡くなったと明らかにしました。

ガザ地区の保健当局は、これまでの死者数は2万3357人に上るとしています。

“ジェノサイドにあたるか” ICJ=国際司法裁判所で審理

こうした中、オランダ・ハーグにある国際司法裁判所では11日、イスラエルの行為がパレスチナ人に対するジェノサイドにあたるかどうかを判断する審理が始まりました。

提訴した南アフリカは、イスラエルが、民族などの集団に破壊する意図を持って危害を加える犯罪を防止し処罰する義務を定めたジェノサイド条約に違反したとして、裁判を通じて責任を追及するとしています。

そして、パレスチナの人々を守るための暫定的な措置として、裁判所に、イスラエルが軍事作戦をただちに停止し、人々を死傷させたり強制的に移住させたりすることなどをやめさせるよう求めています。

これに対してイスラエルのネタニヤフ首相は10日、公開した動画で「ガザ地区を永久に占領したり、市民を強制的に退去させたりする意図はない。イスラエルはパレスチナの市民ではなくハマスのテロリストたちと戦っていて、国際法を完全に順守している」と強調しました。

裁判では、11日の南アフリカによる弁論のあと、12日にはイスラエル側がみずからの正当性を主張するものとみられます。

ICJの判決には国際法上、拘束力があり、一部のメディアは早ければ数週間で暫定措置の判断が示される見通しだと伝えています。

ハマス ICJ審理開始を歓迎

ガザ地区へのイスラエル軍の攻撃をめぐり、ICJの審理が始まったことを受けてハマスは11日、SNSに「犠牲者に正義をもたらす決定を期待している」と投稿し、歓迎しました。

パレスチナ赤新月社“救急車が攻撃受け6人死亡”

パレスチナ赤新月社は10日、ガザ地区でけが人を搬送していた救急車がイスラエル軍により攻撃を受け、救急チームのメンバーとけが人の合わせて6人が亡くなったとSNSで明らかにしました。

亡くなったのは救急隊員と運転手、そしてボランティアのカメラマンなど救急チームのメンバー4人と、緊急の治療を要するため搬送していたけが人2人だとしています。

パレスチナ赤新月社によりますと、この救急車はガザ地区中心部でけが人を搬送中だったということで「私たちの同僚は、赤新月社の紋章がはっきりと示された救急車の中にいたところを意図的に狙われた」と訴えています。

IFRC=国際赤十字・赤新月社連盟は「絶対に受け入れられない。患者と医療従事者の保護は交渉の余地がない。決して標的にされてはならない」と強く抗議しています。

ガザ地区では病院などの医療施設や救急車がイスラエル軍による攻撃の被害を受けるケースが相次いでいて、WHOは今月5日、去年10月7日の衝突以降、これまでに94の医療施設と79台の救急車が攻撃を受けたと発表しています。

米国務長官がパレスチナ議長と会談

イスラエル軍は10日もガザ地区への地上作戦と空爆に加え、隣国のレバノンでもイスラム教シーア派組織ヒズボラの拠点に空爆を行うなど攻撃を強めています。中東を訪問中のアメリカのブリンケン国務長官はパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長と会談し、戦闘終了後のガザ地区の管理に向け、アッバス議長が体制の改革に取り組む用意がある考えを示したことを明らかにしました。

イスラエル軍は10日、ガザ地区でおよそ150か所の標的を空爆した上、南部ハンユニスなどでイスラム組織ハマスの戦闘員を多数殺害したほか、隣国レバノンに拠点を置くヒズボラへの攻撃を強めていて、10日もレバノン南部にあるヒズボラの軍事施設などに対して空爆を行ったと発表しました。

こうした中、中東を訪問中のアメリカのブリンケン国務長官は10日、ヨルダン川西岸でパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長と会談しました。

ブリンケン長官は、記者団に対し、戦闘終了後のガザ地区の管理について協議したことを明らかにし「ガザ地区とヨルダン川西岸は、パレスチナ暫定自治政府のもとで統治できるよう暫定自治政府の改革の必要性について協議した」と述べました。

その上で、ブリンケン長官は「アッバス議長はそれに向けて取り組む用意がある」と述べ、アメリカが求める体制の抜本的な改革にアッバス議長が取り組む用意がある考えを示したことを明らかにしました。

一方、イエメンの反政府勢力、フーシ派による船舶への攻撃が相次いでいることについて、ブリンケン長官は、攻撃はイランの支援によるものだと改めて指摘し「イランには繰り返し、支援をやめるよう明確に伝えている」と述べ、けん制しました。

ハマスのイスラエル襲撃は指導者ら5人か

去年10月にイスラム組織ハマスがイスラエルに行った襲撃について、イギリスに拠点を置くアラビア語の新聞「シャルク・アウサト」はハマスの指導部に近い複数の関係者の話として、計画したのはシンワル指導者とその腹心4人だったと報じました。

それによりますと、襲撃を計画したのはヤヒヤ・シンワル指導者をはじめ、弟のムハンマド・シンワル幹部、ハマスの軍事部門トップのデイフ司令官など合わせて5人で、このうちデイフ司令官の側近だった幹部はすでにイスラエル軍の攻撃によって殺害されています。

5人の幹部は襲撃の最初の実行役として、長年にわたって訓練を積んだ精鋭の戦闘員の中から70人をガザ地区の各地から選び、計画について口外しないよう、ひとりひとりに誓いを立てさせたということです。そして、ユダヤ教の安息日にあたる土曜日の10月7日を襲撃の日に選び、その3日前、部隊長クラスに計画の実行が近いことを伝え、最終的に準備をするよう伝えたのは6日の深夜だったとしています。

さらに、同じハマスの政治部門の幹部が計画について知らされたのは襲撃のわずか数時間前だったということで、イスラエル側に覚知されるのを防ぐため、組織内での情報共有も直前まで最小限にとどめていたと伝えています。

イスラエル軍 地上作戦と空爆 レバノンでも空爆

イスラエル軍は10日もガザ地区への地上作戦と空爆を続けたのに加え、隣国のレバノンでもイスラム教シーア派組織ヒズボラの拠点などへの空爆を行いました。イスラエル軍は10日、ガザ地区でおよそ150か所の標的を空爆した上、南部ハンユニスなどでイスラム組織ハマスの戦闘員を多数殺害したと発表しました。

また、パレスチナの地元メディアは、中部でも激しい攻撃が行われたと伝えていて、ガザ地区の保健当局は10日、過去24時間にイスラエル軍の攻撃で147人が死亡し、これまでの死者は2万3357人に上るとしています。このほかにも中東の衛星テレビ局アルジャジーラは10日、イスラエル軍がガザ地区中部のアルアクサ病院周辺で行った空爆で、40人が死傷したと伝えていて、犠牲者の増加に歯止めがかからない状況が続いています。

一方で、イスラエル軍は隣国レバノンに拠点を置くヒズボラへの攻撃を強めていて、10日もレバノン南部にあるヒズボラの軍事施設などに対して空爆を行ったと発表しました。

パレスチナ アッバス議長「ガザ地区は不可欠」

アメリカのブリンケン国務長官と会談したパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長は、イスラエル軍の攻撃をただちに停止し、ガザ地区の避難所や病院が機能できるよう人道支援を加速させる重要性を強調しました。

そして、イスラエルがガザ地区からパレスチナ人を追放したり、パレスチナからガザ地区を切り離したりしようとしていると指摘した上で「ガザ地区はパレスチナにとって不可欠だ」と述べ、こうした計画は解決策として受け入れられないとしました。

さらに、アッバス議長はパレスチナ問題の政治的解決に向け、パレスチナの国連への加盟と、和平について話し合う国際会議の開催を求めました。

ユニセフ パレスチナ事務所の特別代表「交渉のテーブルに」

イスラエルによる軍事作戦が続くパレスチナのガザ地区を今月訪れたユニセフ=国連児童基金のパレスチナ事務所の特別代表は「すべての子どもたちのために、当事者全員が交渉のテーブルに戻らなければならない」と述べ、改めて停戦に向けた動きを加速するよう呼びかけました。

ユニセフはガザ地区では、5歳未満の子ども全員が重度の栄養失調と防ぐことができる死のリスクにさらされているなどとして警鐘を鳴らしています。

こうした中、今月8日までガザ地区南部を訪れていたユニセフ・パレスチナ事務所のルシア・エルミ特別代表が10日、NHKのオンラインインタビューに応じました。

この中で、エルミ特別代表は「住む場所を追われた人が日々南部に到着し続け、通りはいっぱいになっている。食べものや水も少なく、とても厳しい状態だった」と現地の様子を話しました。

特に子どもたちについては「はだしだったり、薄い服しか着ていなかったりする子どももいた。子どもたちは紛争と感染症、それに栄養失調の3つの苦しみの中にある」と説明しました。

そして、課題として▼人道支援物資の不足だけでなく絶え間ない攻撃で搬入できた物資を安全に届けるのが難しいことや、▼子どもたちの深い心の傷や教育の機会を失う影響などを挙げていました。

その上で、エルミ特別代表は「短期間でこれほどの子どもが犠牲になる大規模な危機は例がない。多くの子どもの人生が永遠に変わってしまうことを懸念している。すべての子どもたちのために、当事者全員が交渉のテーブルに戻らなければならない」と訴え改めて停戦に向けた動きを加速するよう呼びかけました。