地震後「外国系窃盗団が能登半島に集結」偽情報などSNSで拡散

石川県の能登地方で震度7の揺れを観測した地震のあと、旧ツイッターのXで、「外国人窃盗団が能登半島に集結している」といった偽情報などが拡散しています。こうした情報は人々が不安を感じる災害の際に広がりやすく、法務省は不確かな情報で差別や偏見を助長しないよう、冷静な対応を呼びかけています。

今月1日に石川県で震度7の揺れを観測した地震の後、Xでは「能登半島に外国系の盗賊団が集結中」とする偽情報が拡散しました。

投稿では根拠を一切示さずに、「組織で動いている。全国から集まっている」などとしていて、400万回以上閲覧されていました。

また、特定の国名や被災地の具体的な地域名を示したうえで、「マイクロバスに乗った窃盗団がいる」とする根拠不明の情報も一時広がりました。

被災地では実際に窃盗の被害は出ていて、注意が呼びかけられていますが、石川県警察本部によりますと、能登地方でこれまでに「外国人の窃盗団」は確認されていないということです。

Xでは、ほかにも外国人による炊き出しを「怪しい」と疑ったりする投稿や、「井戸で水を飲む方は毒に気をつけて」と、関東大震災時の朝鮮人虐殺のきっかけになったデマを意識したとみられる悪質な投稿もみられています。

「外国人の窃盗団がいる」などという根拠不明の情報は東日本大震災のときにもみられ、多くの人々が不安を感じる災害の際に広がりやすく、法務省人権擁護局は「不確かな情報に基づいて、偏見や差別を助長するような情報の発信は重大な人権侵害や避難、復興の妨げにもなりかねない」として、冷静な対応を呼びかけています。

専門家 “典型的なもの 拡散させないことが重要”

防災情報に詳しい東京大学大学院の関谷直也教授は「外国人の窃盗団がいる」などといった偽情報は災害のたびに拡散される典型的なもので、広がる背景として、災害時には発信する側にも拡散する側にも不安や怒り、それに誰かの助けになりたいという心理があると指摘します。

関谷教授は「必ずしも差別意識を持っている人でなくても、注意喚起の一種として根拠のないうわさ、流言を広めやすい土壌がある」としたうえで、「発信する人にとっては注意喚起だったとしても、ヘイト、憎悪を助長する可能性は十分あり、誰かに対する攻撃行動につながってしまいかねない。拡散させないことや信じてしまうことを避けるのが重要だ」と注意を呼びかけました。

関谷教授は
▽災害時には根拠のないうわさ、流言が広がりやすいことを認識すること
▽SNSでは正しい情報だけが流通しているわけではないので、全部をうのみにしないこと
そして
▽少しでも「本当ではないかも」と思ったら、その情報を広げないことがポイントだとしていて
「できるだけ公的な情報源に頼ること、自治体や報道機関などからの一次情報をまずは重視し、補足としてほかの情報を加味して、それぞれ考えることが重要だ」と指摘しています。