インフルエンザ患者数 再増加の懸念 被災地では把握困難も

全国の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、12月31日までの1週間で1医療機関当たり21.65人となり、減少傾向が続いています。専門家は、例年、インフルエンザは年明け以降に患者数のピークを迎えることなどから、再び増加に転じる可能性があるとして注意を呼びかけています。

また、能登半島地震で大きな揺れを観測した各県では患者が多く報告されている地域がある一方、正確な患者数の把握が難しくなっている医療機関もあります。

1医療機関当たり21.65人 前週から1.48人減

国立感染症研究所などによりますと、12月31日までの1週間に全国およそ5000か所の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は10万4612人で、1医療機関当たりでは前の週から1.48人減って21.65人となりました。

データをもとに推計されるこの1週間の全国の患者数はおよそ76万9000人となり、去年9月4日以降の今シーズンの累積の患者数はおよそ1058万7000人と推計されています。

5県で警報レベル そのほか全都道府県で注意報レベル

都道府県別に見ますと、
▽宮崎県が44.86人
▽高知県が36.25人
▽大分県が35.66人
▽熊本県が32.46人
▽青森県が30.38人
と、5つの県で「警報レベル」とされる30人を超えているほか、
▽愛知県で22.47人
▽東京都で19.22人
▽大阪府で15.67人
などと、そのほかすべての都道府県で「注意報レベル」の10人を超えています。

専門家「人の移動が活発になり今後増加のおそれも」

感染症に詳しい東邦大学の舘田一博教授は「年末にかけて休みになっている医療機関もあり、見かけ上、患者数が減っている可能性もある。年明けから人の移動が活発になることや、例年なら1月下旬から2月上旬にかけて流行のピークを迎えることから、今後、患者数が増加に転じる可能性もあり、推移に注意する必要がある」と話しています。

能登半島地震 患者数把握が困難な医療機関も

能登半島地震で大きな揺れを観測した各県では、インフルエンザの患者が多く報告されている地域がありますが、正確な患者数の把握が難しくなっている医療機関もあります。

専門家はこうした地域ではデータ上、流行の広がりが捉えにくくなっているため、感染のリスクを把握するため、周囲に体調を崩している人がいないか注意するなどして、感染対策に努めるよう呼びかけています。

石川県 1医療機関当たり19.88人(報告があった医療機関に限る)

石川県では調査の対象となっている医療機関のうち、能登北部の6か所すべてと能登中部の1か所で報告が困難になっています。

このため、12月31日までの1週間に報告されたインフルエンザなどの患者数について、1月4日の時点で報告があった医療機関に限って集計しています。

それによりますと、1医療機関当たりの患者数は県全体で19.88人でした。

保健所の管轄する地域ごとでは、
▽震度7を観測した志賀町、震度6強を観測した七尾市、震度6弱を観測した中能登町などを含む能登中部が48.80人、
▽石川中央が12.27人、
▽金沢市が19.06人、
▽南加賀が15.20人でした。

▽震度6強を観測した輪島市、珠洲市、穴水町、震度6弱を観測した能登町を含む能登北部は欠測となってます。

このほか、この地震で大きな揺れを観測した福井県、富山県、新潟県では、感染状況について通常どおり、発表されています。

富山県 1医療機関当たり20.90人 前週から7.23人減

富山県の12月31日までの1週間に報告された1医療機関当たりのインフルエンザの患者数は県全体で20.90人で、前の週から7.23人減少しました。

保健所の管轄する地域ごとでは、
▽富山市が24.75人、
▽中部が23人、
▽新川が22.14人、
▽砺波が20人、
▽高岡が15.15人でした。

福井県 1医療機関当たり18.13人 前週から0.51人減

福井県では1医療機関当たりの患者数は県全体で18.13人で、前の週から0.51人減少しました。

保健所の管轄する地域ごとでは、
▽丹南が25.38人、
▽坂井が25.60人、
▽福井市が19.75人、
▽奥越が14.75人、
▽若狭が10.33人、
▽二州が8.20人、
▽永平寺町を管轄する福井が4人でした。

新潟県 1医療機関当たり24.62人 前週から1.12人減

新潟県では1医療機関当たりの患者数は県全体で24.62人で、前の週と比べて1.12人減少しました。

保健所の管轄する地域ごとでは、
▽佐渡が54.67人、
▽柏崎が38人、
▽村上が37人、
▽南魚沼が36人、
▽震度6弱を観測した長岡市などを含む長岡が28.31人、
▽十日町が28人、
▽三条が27.13人、
▽上越が23.25人、
▽糸魚川が19.33人、
▽新潟市が19.25人、
▽新発田が19人、
▽新津が13人、
▽魚沼が8.67人でした。

4県とも注意報レベル超「避難所では可能な範囲で感染対策を」

4県とも県全体の定点当たりの患者数は前の週から減っていましたが、いずれも「注意報レベル」の10人を超えていて、地域ごとに見ますと、「警報レベル」の30人を超えているところも多くあります。

東邦大学の舘田一博教授は「被災した地域では、患者の数が減っていても、医療機関が報告できなかったり、被災して受診できない人がいたりするため、データでは流行の広がりが捉えにくくなっている。特に避難所では爆発的な感染の拡大が起きることもあるので、周囲に体調を崩している人がいないか注意して、感染のリスクがある場合は可能な範囲で感染対策に努めることが重要だ」と話しています。

避難所 ほかの感染症も相次ぐ 厚労省が派遣職員を増員

今回の地震では避難所などで感染症にかかる人が相次いでいます。

厚生労働省によりますと、9日時点で、避難所などで確認された感染症は、急性呼吸器感染症がおよそ70件、消化器感染症がおよそ40件に上ったということです。

厚生労働省は避難所などの感染症対策のため、先週から職員を派遣していますが、10日から職員3人を増員したほか、国立感染症研究所などから感染症対策の専門家を派遣したということです。

インフルエンザ 1医療機関当たりの平均患者数(都道府県別)
▽北海道 24.19
▽青森県 30.38
▽岩手県 21.71
▽宮城県 26.62
▽秋田県 20.27
▽山形県 26.79
▽福島県 21.79
▽茨城県 28.15
▽栃木県 16.2
▽群馬県 19.36
▽埼玉県 22.83
▽千葉県 23.18
▽東京都 19.22
▽神奈川県19.05
▽新潟県 24.63
▽富山県 20.9
▽石川県 19.88
▽福井県 18.13
▽山梨県 17.54
▽長野県 17.31
▽岐阜県 18.68
▽静岡県 20
▽愛知県 22.47
▽三重県 22.28
▽滋賀県 17.83
▽京都府 17.78
▽大阪府 15.67
▽兵庫県 19.48
▽奈良県 13.18
▽和歌山県18.57
▽鳥取県 17.41
▽島根県 21.5
▽岡山県 14.08
▽広島県 19.22
▽山口県 28.85
▽徳島県 18.16
▽香川県 22.28
▽愛媛県 16.07
▽高知県 36.25
▽福岡県 24.83
▽佐賀県 20.54
▽長崎県 26.36
▽熊本県 32.46
▽大分県 35.66
▽宮崎県 44.86
▽鹿児島県27.18
▽沖縄県 15.8