地震の建物被害 輪島や珠洲中心に5000近くか 衛星画像で分析

今月1日の地震ではいまだに被害の全容が明らかになっていません。民間の測量会社が地震後の能登半島の衛星画像を分析したところ、輪島市や珠洲市を中心に、被害を受けた可能性のある建物は5000近くに達し、このうち、「全壊」も1765に上ることが分かりました。撮影された範囲は一部で、被害はさらに多いとみられます。

民間の測量会社「パスコ」はフランスの人工衛星が2日、輪島市の中心部や珠洲市など、能登半島の8つの地域を撮影した画像を地震前の画像と比較し、住宅やビル、倉庫なども含む建物被害の状況を詳しく分析しました。

その結果、輪島市中心部や珠洲市の沿岸部などを中心に、倒壊していたり建物の一部が道路上にはみ出たりするなどの被害が出ている可能性のある建物は少なくとも4865に上ることが分かりました。

詳しい内訳は
▽市役所周辺など輪島市中心部で1227

▽輪島市門前町で714

▽珠洲市と能登町で1136

▽穴水町で265

▽七尾市や志賀町、中能登町で1523となっています。

このうち、「全壊」と判別された建物は1765に上っています。

全壊の建物が最も多かった輪島市の中心部では、大規模な火災があった「朝市通り」周辺のほか、広い範囲で建物の倒壊が起きていることが分かりました。

また、珠洲市では宝立町の海岸沿いで多くの建物の流出が確認できますが、浸水エリアの外でも多くの建物が倒壊していて、宝立町金峰寺では複数の住宅が崩れていました。

石川県は全容を把握できていないとしたうえで、午後2時時点での住宅被害は少なくとも1825棟としていて、調査結果はそれを大きく上回っている可能性を示しています。

ただ、分析範囲は能登半島の一部にとどまるほか、衛星画像上で被害がないように見えても、実際には被害が出ている可能性もあり、被害を受けた建物はさらに多いとみられます。

専門家「中心部の市街地で被害多くみられた」

石川県輪島市の衛星画像を元にした建物の被害の分析について、東京大学地震研究所の楠浩一 教授は、「上空から確認すると地形と被害の関係性をよく把握することができる。輪島市中心部には川が流れていて湾につながっているが、この周辺は地盤が軟らかいとみられ、被害もこうした中心部の市街地に多くみられた」と指摘しました。

そのうえで、8日までの3日間、現地で建物を調査した結果と比較して「航空写真と同様、木造の建物を中心に倒壊していた印象がある。2階建ての1階が潰れた建物も多く見受けられた」と話していました。

また「特に、古い耐震基準の建物で倒壊が多かったとみられ、今回の地震で被害を免れた建物も耐震診断を行ってどの程度の性能を持っているか確認し、必要に応じて耐震補強することが大事だ」と話していました。