【10日詳細】イスラエル軍“ハマス戦闘員を多数殺害”

イスラエル軍はガザ地区への地上作戦と空爆に加え、隣国レバノンでもイスラム教シーア派組織ヒズボラの幹部を相次いで殺害するなど攻撃を強めています。

イスラエルを訪問したブリンケン国務長官は外交的な手段による緊張緩和に期待を示しましたが、イスラエル側がこれに応じ、地域の緊張緩和につながるかは不透明な状況です。

ガザ地区の病院などに人道支援物資届かず

イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続く中、ガザ地区では人道支援物資が届かず、厳しい人道状況が続いています。

OCHA=国連人道問題調整事務所はWHO=世界保健機関とともに、ガザ地区北部にあるガザ市のドラッグストアやジャバリアのアウダ病院に、8日に緊急医療物資を届ける計画をしていたものの、イスラエル当局によって拒否されたと9日、明らかにしました。

先月26日以来、このドラッグストアや病院への物資の輸送が相次いで拒否されていて、ガザ地区北部の5つの病院で医療品などが不足しているということです。

OCHAは「水道施設や公衆衛生施設への燃料供給も拒否され続けているため、感染症の危険性が大幅に高まっている」としています。

また、WHOもSNSに、「激しい砲撃や移動の制限などにより、特にガザ地区北部に医療物資を定期的に安全に届けることはほぼ不可能となっている」と投稿し、一刻も早い停戦が必要だと訴えています。

イスラエル軍 “ガザ地区を空爆 ハマス戦闘員を多数殺害”

イスラエル軍は10日、ガザ地区でおよそ150か所の標的を空爆した上、南部のハンユニスや中部などでイスラム組織ハマスの戦闘員を多数殺害したと発表しました。

パレスチナの地元メディアは、10日、イスラエル軍の攻撃によって南部のラファ郊外で少なくとも15人が死亡したと伝えていて、ガザ地区の保健当局は、これまでに2万3210人が死亡したとしています。

イスラエル軍は隣国レバノン南部に拠点を置くイスラム教シーア派組織ヒズボラへの攻撃も強めていて、8日に幹部を殺害したのに続いて9日にもイスラエルに対する無人機攻撃を指揮していた別の幹部を空爆で殺害したと発表しました。

ガザ地区 「国境なき医師団」施設に砲弾直撃 5歳女児死亡

「国境なき医師団」によりますと、8日午前、ガザ地区南部のハンユニスにあるスタッフとその家族100人以上が避難している施設に砲弾が直撃しました。

砲弾は爆発しなかったものの、施設にいた4人がけがをし、このうち、病院で治療を受けていた5歳の女の子が9日死亡したということです。

「国境なき医師団」は事前にイスラエル軍に対して、この施設にスタッフとその家族がいることを通知していましたが、イスラエル軍からの避難通告などは出ていなかったということです。

「国境なき医師団」は今回の砲弾を誰が発射したかは断定できないとしていますが、砲弾はイスラエル軍が使用しているものと酷似しているということで、イスラエル側に詳しい説明を求めています。

「国境なき医師団」はホームページに声明を発表し、「私たちは深い悲しみを感じている。このような民間人への攻撃を許すことはできず、ガザに安全な場所などないと改めて示すものだ。この砲弾は爆発しなかったが、もし、爆発していれば、さらに多くの犠牲者が出ていただろう」としています。

米 国連本部 建物の中で観光客装い即時停戦求めるデモ

デモを行ったのはアメリカ各地から集まったユダヤ系の人たちおよそ40人で9日、観光客を装って見学ツアーに参加して国連本部の建物の中に入り、総会議場や安全保障理事会の議場の傍聴席でデモ活動を行いました。

デモに参加した人たちはバッグに隠し持っていた横断幕やプラカードを掲げ、民間人の犠牲者を減らすための即時停戦を呼びかけました。

いずれの議場も会合が行われていなかったため影響はなく、デモの参加者たちは警備員によってその場から排除されましたが、その後は国連本部の建物の外に集まって、「バイデン大統領、和平に拒否権を使うな」と書かれた横断幕を掲げるなどして即時停戦を訴えていました。

デモに参加した人たちは「停戦を拒否することでアメリカは世界から孤立している」とか、「戦争が続き、ますます多くのパレスチナの人たちが殺され、家を追われているのと同時に、ますます多くのユダヤ人が危険にさらされている。誰にとっても安全ではない」などと訴えていました。

国連総会で米の拒否権について説明求める会合

一方、この日、国連本部の総会議場では、中東情勢に関連して先月22日の安保理でアメリカが拒否権を行使したことについて、説明を求める会合が開かれました。

アメリカが拒否権を行使したのは「ガザ地区での敵対行為の停止」を求めるとしたロシア提出の修正決議案で、国連総会の会合でアメリカのウッド国連次席大使は、「より求められるのは、ハマスに対し、紛争を終わらせるよう強く迫る国際社会の声だ」と述べた上で、ガザ地区の人道状況の改善のためにアメリカは外交努力を続けていると強調しました。

米国務長官がイスラエルで記者会見

イスラエルを訪れているアメリカのブリンケン国務長官は9日、ネタニヤフ首相やガラント国防相などと相次いで会談したあと記者会見しました。

この中で、ブリンケン長官は、イスラエル軍がガザ地区でイスラム組織ハマスへの地上作戦に加えて、1月に入って以降、隣国レバノンのヒズボラとの戦闘も激化させていることについて、「イスラエルも含め、どの国も地域の緊張を高めることは望んでいない」と述べました。

その上で、「われわれは外交的な道こそが安全保障を達成する最善の方法だと信じており、イスラエル政府もそれを追求すると言及した」と述べ、イスラエル側が外交的な解決を模索する考えを示したと強調し、緊張緩和に期待を示しました。

ただ、イスラエル国防省によりますと、ガラント国防相はブリンケン長官との会談で、ヒズボラについて、「外交的な手段のほうが良いが、軍事的な手段も準備している」と述べたとしていて、実際に緊張の緩和につながるかは不透明です。