台湾 “中国 衛星搭載ロケット発射 上空通過” 混乱伝えられず

台湾国防部は9日午後、中国の衛星を搭載したロケットが台湾本島の上空を通過したと発表しました。住民らの携帯電話には警戒を呼びかけるメッセージが警報音とともに届きましたが、混乱は伝えられていません。

台湾国防部によりますと、日本時間の9日午後4時すぎ、中国 四川省の西昌衛星発射センターから衛星を搭載したロケットが打ち上げられ、台湾本島南部の上空を通過しました。

同じ時間帯に中国がこの衛星発射センターから探査衛星を搭載したロケットを打ち上げたと国営の中国中央テレビなどが伝えていて、台湾側が発表したのはこのロケットを指しているとみられます。

台湾国防部は、ロケットが飛行した高度は大気圏外だったとしたうえで、軍が把握した軌道などの情報に基づいて警戒システムが起動し、住民らの携帯電話に警戒を呼びかけるメッセージを送ったとしています。

ロケットの打ち上げから10分余りあと、住民らの携帯電話には「防空警報」というメッセージが警報音とともに、少なくとも2回届きました。

メッセージは中国語と英語が併記され、このうち中国語では「衛星発射」となっていたのに対し、英語では「ミサイル発射」となっていて、台湾国防部は「不注意だった」として陳謝しましたが、混乱は伝えられていません。

台湾のテレビ局TVBSは当時、南部の高雄を訪れていた蔡英文総統が、周囲の人たちの携帯電話の警報音が鳴る中、「大丈夫だ」と笑顔で話す様子を報じました。

一方で、TVBSは、2023年12月も台湾国防部が中国の衛星発射を複数回発表したのに、9日のように「防空警報」のメッセージが送られることはなかったとして、疑問を呈する記者のリポートを伝えています。

台湾の外交部長「中国の挑発に乗ってはいけない」

台湾外交部の呉ショウ燮部長は、外国メディア向けの会見の中で、「中国による発射はこれまでも定期的に行われているが、今回は、総統選挙の前という敏感な時期に行われた。台湾の人々に、中国と戦争になる危険があるということを知らせたいのだろう」と述べ、今回の発射が、武力攻撃に至らないグレーゾーンの手法で、台湾の人たちに影響を与えようとしたものだとの見方を示しました。

その上で、「中国の挑発に乗ってはいけない。我々の民主的な選挙が権威主義によって介入されたり、決められたりすることがあってはならない」と述べました。

※ショウは「かねへん」に「りっとう」

最大野党 国民党「総統選挙が近づいたら大げさに警報を出した」

一方、台湾の最大野党の国民党は「おととし8月に中国が発射したミサイルが台北上空を通過したときや、12月30日に衛星を搭載した中国のロケットが台湾上空を通過したときも、民進党政権は何もしなかったのに、総統選挙が近づいたら大げさに警報を出した」などとするコメントを発表し、与党の民進党が中国の衛星打ち上げを選挙対策に利用しているという見方を示しました。