【珠洲市 1月9日時点】分かってきたこと まだ分からないこと

石川県珠洲市では、建物が倒壊するなど多数の住宅が深刻な被害を受けました。市役所の1階では、9日から「り災証明書」の申請の受け付けが始まりました。

また、津波の被害も深刻で、国土交通省によりますと、隣接する能登町とあわせて、少なくとも120ヘクタールが浸水したということです。

ただ、津波の被害については市や県が把握できていない部分も多く、さらに広がる可能性があります。

能登半島地震で被害の大きかった石川県珠洲市の状況をまとめています。

「り災証明書」申請受け付け始まる

珠洲市役所の1階では、9日から「り災証明書」の申請の受け付けが始まり、午前8時半の開始前から住民が次々と訪れました。

「り災証明書」は建物の被害の度合いを証明する書類で、被災した人たちが被災者生活再建支援金や義援金などの給付、応急仮設住宅への入居など、さまざまな公的支援を受ける際に必要となります。

受け付けは、応援に入った千葉市の職員など6人が対応していて、申請に訪れた人から自宅の住所や被害の状況を聞き取っていました。

市内の65歳の男性は「外を散歩しているときに地震が起きて急いで戻ったら自宅が傾き壊れていました。半年前の地震でも壊れて補修したばかりだったので残念です。珠洲市で住み続けるためにり災証明をしてもらい、支援を受けて家を建て直したいです」と話していました。

また、77歳の女性は「地震直後から避難所にいてようやく最近自宅を見ることができましたが地震のほか津波の被害も受け壊れて住むことができない状況になっていてとてもショックです。直すことができるかもわからず今後どうしたらいいかわかりません」と話していました。

総合病院の入院患者 転院で医療維持へ

住宅が倒壊し、多くのけが人が出た石川県珠洲市の総合病院では、水や食料が不足している上、看護師ら医療スタッフがそろっていないことから入院患者の半数を金沢市などの病院に移しています。

災害拠点病院に指定されている珠洲市総合病院は救助された人やけがをした人を受け入れてきましたが、水や栄養のある食料が不足している上、看護師ら医療スタッフも足りていないということです。

こうした状況を受けて病院はいまの医療体制を維持していくために、入院患者の半数を金沢市などの病院に移しています。

対象は、重い病気で入院している70人ほどで、救急車やヘリコプターを使って順次、移送するということです。

珠洲市は高齢化率が高く、避難生活が長引けば、体調を崩す人が増えるおそれがあることから病院ではいまの医療体制を維持して対応していきたいとしています。

珠洲市総合病院の石井和公事務局長は「水や食料の安定供給がされない中で、中長期的な観点で今の医療体制を維持していくために、重症患者を金沢方面に移送することにした。避難所の生活が長引けば、体調の不良を訴える人も多くなると思うので、そういう人たちの受け入れをしっかりしていきたい」と話しています。

福祉避難所 ひとつも開設できず

「福祉避難所」は災害時に通常の避難所では健康管理が難しい、高齢者や障害者などを受け入れる施設で、珠洲市では市内の7つの高齢者施設を福祉避難所に指定しています。

しかし、市によりますと、職員が被災して出勤できない施設が多く、9日時点で3つの施設が一時休業しているほか、そのほかの施設でも福祉避難所は開設できていないということです。

このうち、特別養護老人ホームの「長寿園」では、地震の影響で建物の通路などに複数の亀裂が入ったほか、断水が続いていて利用者の入浴や衣類の洗濯などができない状況が続いています。

また、職員の多くも被災し出勤できる職員は2割ほど減っていて、いまの体制では多くの避難者を受け入れることが難しいということです。

「長寿園」の横山博一副施設長は「職員も避難所から出勤して頑張っているが、市外に避難した職員もいてこれ以上の避難者を受け入れるのは難しい。少し状況が落ち着いたらできるだけ早く受け入れられるよう準備していきたい」と話していました。

「福祉避難所」は輪島市などでもほとんど開設できておらず、支援が必要な被災者の受け入れ先が足りない状況が続いていて、金沢市に設けられた「いしかわ総合スポーツセンター」などに移れるよう調整が進められています。

ため池に浄化装置を2台設置 1台がきょうから稼働

国土交通省などが所管する独立行政法人「水資源機構」は珠洲市の「野々江総合公園」のため池に浄化装置を2台設置し、このうち1台の稼働が9日から始まりました。

この浄化装置はため池の水を特殊な膜でろ過することで風呂やトイレなどの生活用水として使えるようにします。

午前中には給水車が立ち寄り、浄化した水を補給し、珠洲市内の病院や避難所に向かっていました。

2台がフル稼働すると、およそ400世帯分の1日分の生活用水にあたる10万リットルの水を1日に提供できるほか、追加の水質検査をクリアできれば、生活用水だけではなく、飲料水としても利用できるとしています。

国土交通省によりますと、珠洲市で活動している給水車の大半は、金沢市と往復して水を運んでいて、この装置の稼働によって給水作業の効率化が期待されています。

「水資源機構」の長田仁次長は「天候や道路の状況によっては水を運べないリスクが問題となっていたので、この装置を使うことで被災者に継続的に水を届けたい」と話していました。

91人が死亡 (9日午後2時)

石川県によりますと、9日午後2時の時点で、珠洲市では91人死亡が確認されたということです。

石川県は、「災害関連死」の疑いがあると発表しました。珠洲市によりますと、地震の発生後に自宅にいたり避難先に行ったりしたあとに亡くなった人について災害関連死の疑いがあると県に報告したということです。

内閣府によりますと「災害関連死」とは、地震の揺れや津波などによる直接的な被害で亡くなるのではなく、その後の避難生活などで病気などが悪化したり体調を崩したりして命が失われるケースを言います。

安否不明は19人(9日9時)

石川県は、9日午前9時の時点で家族や親族などからの情報をもとに、自治体を通じてまとめた安否が分かっていない人の名前、住所、性別、年齢または年代を公表しました。

▽珠洲市は19人となっています。

県は、この中には、転居などで連絡が取れないものの無事だった人が含まれている可能性があるとして、広く情報の提供を求めています。
連絡先は石川県危機対策課、076-225-1306です。

建物被害 全容は把握できず(9日午後2時)

石川県によりますと、珠洲市では、多数の住宅に被害が出ていますが依然として全体状況は把握できていないとしています。

転覆や沈没した漁船 120隻以上にのぼる

農林水産省によりますと、能登半島地震で石川県内では珠洲市を中心に転覆や沈没した漁船が120隻以上にのぼるということです。

農林水産省は8日午前11時半現在の被害の状況を公表し、石川県内では珠洲市を中心に転覆や沈没した漁船が7日からおよそ90隻増えて120隻以上にのぼることが確認されたということです。

また、69ある漁港のうち、半数以上にあたる37の港で防波堤や岸壁が壊れるといった被害が確認されているほか、荷さばき所などの施設も19か所で被害を受けたことが確認されています。

農林水産省は、被害の全容はまだ把握しきれておらず、漁業の再開には時間がかかることも予想されるとしています。

避難 67か所で5842人(9日午後2時)

石川県によりますと、9日午後2時の時点で珠洲市では67か所で5842人が避難しているということです。

断水 4800戸・給水情報

9日午後2時の時点で、4800戸で断水が続いています。

9日に予定されている給水支援の情報です。
珠洲市では、
▽宝立小中学校、
▽飯田高校、
▽正院小学校、
▽旧蛸島保育所、
▽上戸小学校、
▽若山小学校の6か所で、いずれも午前9時から水がなくなるまで給水を行っています。

10日、予定されている給水支援の情報です。
▽宝立小中学校、
▽飯田高校、
▽正院小学校、
▽旧蛸島保育所、
▽上戸小学校、
▽若山小学校の6か所で、

いずれも午前9時から水がなくなるまで給水を行う予定です。

停電 約6100戸(9日午後5時時点)

北陸電力送配電によりますと、9日午後5時時点、珠洲市ではおよそ6100戸が停電しています。

ガソリンスタンド 海沿いの地域で営業停止続く

地震の影響で石川県の能登地方ではガソリンや灯油の供給不足が続いています。
営業が停止しているガソリンスタンドの店舗は、輪島市や珠洲市を中心とする海沿いの地域で、地震や津波で設備が壊れ、従業員も被災するなどして再開が見通せないところがあるということです。

入浴支援の情報(9日)

9日に予定されている自衛隊の入浴支援の情報です。
珠洲市では
▽上戸小学校で午後6時から午後10時まで、
▽宝立小中学校と▽飯田小学校でいずれも午後3時から午後10時まで行う予定です。

携帯電話 充電サービス・Wi-Fiスポット無料開放(9日午後2時)

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手各社は、避難所を中心に携帯電話の充電サービスや、Wi-Fiスポットの無料開放を行っています。

<充電サービスとWi-Fiスポットの両方のサービスを提供>
珠洲市では、▽直小学校、▽飯田小学校、▽飯田高校の3か所です。

<携帯電話の充電サービスのみを提供>
珠洲市の▽宝立小中学校、▽若山小学校避難所、▽蛸島保育学校の3か所です。

<Wi-Fiスポットのみを提供>
珠洲市では▽緑丘中学校の1か所です。

一方、各社が提供するWi-Fiスポットでは、公衆無線LANサービス「00000JAPAN」を利用することができます。

利用する際には、Wi-Fiのネットワーク名が0が5つ並んだあとに、大文字のアルファベットでJAPANと表示されているものを選択します。

ただ、各社は通信の暗号化などのセキュリティー対策はとられていないとして、クレジットカード情報やパスワードなどの入力は極力、避けるよう呼びかけています。

携帯電話などの通信状況(9日午後2時)

石川県の一部の地域では依然として携帯電話がつながらない状態が続き、影響が長期化しています。

携帯電話の音声通話とデータ通信が利用できないなどの影響が続いているのは、9日午後2時時点の状況です。

【NTTドコモ】
石川県の▽七尾市、▽珠洲市、▽輪島市、▽穴水町、▽能登町のそれぞれ一部の地域です。

【KDDIとソフトバンク】
▽珠洲市、▽輪島市、▽能登町のそれぞれ一部の地域です。

【楽天モバイル】
▽七尾市、▽珠洲市、▽輪島市、▽能登町の一部の地域では、携帯電話が利用できない状態が続いています。

市役所や町役場の周辺などでは移動基地局や発電機などを活用して仮復旧を進めているとしています。

【NTT西日本】
▽輪島市でフレッツ光ネクストやフレッツ光ライト、ひかり電話などのインターネットサービスがおよそ660回線で利用できないほか、
▽輪島市と珠洲市で、固定電話のあわせておよそ1660回線が利用できず、110番や119番などの緊急通報もできない状況だということです。

各社は、応急復旧を急いでいますが、道路の寸断などで車両がたどりつけない基地局もあることから、復旧のめどが立っていない地域があるとしていて影響は長期化しています。

また、一部の地域では応急復旧が進んでいますが、通信エリアに限りがあるため、不要不急の通信は控え、必要に応じて災害伝言板等も活用するよう呼びかけています。