ことし最大のリスクは「アメリカの分断」 米調査会社

国際情勢を分析しているアメリカの調査会社は「ことしの10大リスク」を発表し、最大のリスクとして「アメリカの分断」を挙げ、11月の大統領選挙に向けて政治的な分断がさらに深まり、地政学的な不安定さを世界にもたらす可能性があると危機感を示しました。

アメリカの調査会社「ユーラシア・グループ」は、恒例となっている「ことしの10大リスク」を8日発表し、最大のリスクとして「アメリカの分断」を挙げました。

この中で、アメリカの政治システムの機能不全は先進的な民主主義国の中で最もひどく、11月の大統領選挙に向けて政治的な分断がさらに深まるという見方を示した上で、前回の選挙結果を覆そうとしたなどとして複数の罪で起訴されたトランプ前大統領と現在81歳という高齢のバイデン大統領はいずれも「大統領にふさわしくない」と指摘しました。

グループを率いる国際政治学者のイアン・ブレマー氏はオンラインでの記者会見で、世界で最も強力な民主主義国家が政治的危機に直面すれば地政学的な不安定さを世界にもたらす可能性があると危機感を示しました。

一方、2番目のリスクにはイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続く中東情勢を挙げたほか、3番目のリスクとしたウクライナ情勢については、アメリカの支援などが滞る中、ウクライナの領土が事実上ロシアに割譲される可能性があるとしています。

ことしの10大リスク

アメリカの調査会社「ユーラシア・グループ」が8日に発表した「ことしの10大リスク」は、以下のとおりです。

1「アメリカの分断」
11月の大統領選挙に向けてさらに政治的分断が深まり、地政学的な不安定さを世界にもたらす可能性がある。

2「瀬戸際に立つ中東」
イスラエルとハマスの戦闘を終わらせる明確な方法はなく、この戦闘をめぐる政治的分断が世界に影響を与える。
イエメンの反政府勢力フーシ派による船舶への攻撃で物流網への影響なども懸念される。

3「ウクライナの事実上の割譲」
ロシアは現在、戦場での主導権を握っており、アメリカの支援などが滞る中、ウクライナの領土が事実上、ロシアに割譲される可能性がある。

4「AIのガバナンス欠如」
企業がほぼ制約を受けないままさらに強力なAIモデルなどが開発され、政府のコントロールを超えて普及する可能性がある。

5「ならず者国家の枢軸」
ロシア、北朝鮮、イランというならず者国家が、ロシアによるウクライナへの侵攻以降、協力関係を深め、既存の制度や原則を弱体化させようとしている。

6「回復しない中国」
すでに外国人投資家の撤退など不調の兆候があったが、中国政府が金融のぜい弱性や需要不足に対応できず、中国経済の回復は難しいだろう。

7「重要鉱物をめぐる争奪戦」
重要鉱物はイノベーションから国家安全保障まで、事実上、すべての領域で大切だが、その生産地は一部地域に偏り、各国政府は価格変動を増大させるなど保護主義的な措置をとる可能性がある。

8「インフレによる経済的逆風」
しぶといインフレに起因する高金利が、世界中で成長を鈍化させるだろう。

9「エルニーニョ現象の再来」
異常気象によって、食糧難、水不足、物流の混乱、病気の流行、政情不安などをもたらすだろう。

10「分断化が進むアメリカでビジネスを展開する企業のリスク」
大統領選挙が近づくにつれて国内市場が分断され、全米に展開する企業は特定の州の市場からの撤退などを迫られる可能性がある。