【9日詳細】ガザ地区 犠牲者2万3000人を超える

イスラエルがイスラム組織ハマスへの攻勢を強めるガザ地区では、犠牲者の数が2万3000人を超えました。
事態が悪化の一途をたどる中、イスラエルを訪問しているアメリカのブリンケン国務長官は日本時間の9日夜、ネタニヤフ首相と会談し、戦闘の拡大防止や民間人の保護に向けた取り組みについてさらなる対応を求める方針です。

イスラエル軍は9日、ガザ地区南部のハンユニスで地上作戦を拡大し、ハマスの戦闘員およそ40人を殺害したほか、地下トンネルや大量の武器を発見したと主張しました。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラは9日、ハンユニスに加え大勢の避難者が身を寄せる南部のラファや、中部にある難民キャンプなどでもイスラエル軍による激しい攻撃が続いていると伝えています。

一連の衝突が始まってから3か月余りがたっても犠牲者の数は増え続けていて、地元の保健当局は、これまでに2万3084人が死亡したとしています。

米国務長官 イスラエル大統領と会談 人質の解放など協議

イスラエルを訪れているアメリカのブリンケン国務長官は日本時間の9日夕方、イスラエルのヘルツォグ大統領と会談しました。

この中でブリンケン長官は「アラブ各国などの首脳から聞いた話を共有したい。協議すべきことはたくさんある」と述べ、イスラエル訪問前に行われたヨルダンやカタールなどアラブ各国との協議を踏まえ、議論を進める考えを示しました。

またブリンケン長官は「人質の家族と面会する機会も予定されており、全員を家族のもとに戻すための取り組みについて話し合う」と述べ、イスラム組織ハマスに拘束されている人質の解放についても協議する考えを示しました。

ブリンケン長官は日本時間の9日夜、ネタニヤフ首相と会談し、戦闘の拡大防止や民間人の保護に向けた取り組みについてさらなる対応を求める方針で、何らかの進展がみられるかどうかが焦点です。

ガザ地区の人口85%以上が避難 厳しい人道状況続く

イスラエル軍がガザ地区で行っている激しい攻撃によって人々の暮らしは一段と厳しい状況になっています。

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関によりますと、人口の85%以上にあたる190万人が家を追われ、厳しい人道状況が続いています。

ガザ地区の地元当局はこれまでに、ガザ地区全域でおよそ6万9000戸の住宅が住めない状態になったほか、29万戸が被害を受けたとしています。

さらにOCHA=国連人道問題調整事務所などの発表によりますと、50万人以上が家を失ったと推定され、インフラへの被害や残る不発弾などの状況を踏まえると、家に戻ることができない人の数はさらに増えるとしています。

こうした中、避難先の状況も悪化しています。

このうち、国連機関が運営する避難所には140万人が身を寄せていますが、そのほとんどが集まる南部や中部では、定員の4倍以上の人が集まり、環境の悪化が続いています。

さらに、中部や南部の中心都市ハンユニスで攻撃が激化しているため、エジプトとの境界にある南部のラファを目指す人が増えていますが、ラファの賃貸住宅の家賃は、通常の価格の9倍以上に跳ね上がっているということです。

各地で屋外にテントを張って避難を続ける人も多くいますが、OCHAによりますと1か所に15人以上が身を寄せたり、この時期の寒さや雨をしのぐには適さない材料でテントを作ったりしているケースもあるということです。

米国務長官 イスラエル到着 民間人保護などの対応求める方針

アメリカのブリンケン国務長官は現地時間の8日、日本時間のけさ早くにイスラエルに到着しました。

これに先立ち、ブリンケン長官は8日、サウジアラビアで記者団に対し、イスラエルとヒズボラとの戦闘が続いていることについて「緊張が高まり本格的な戦闘に入ることは誰の利益にもならない」と述べました。

ブリンケン長官は9日、イスラエルのネタニヤフ首相やガラント国防相と会談し、戦闘の拡大防止や民間人の保護に向けた取り組みについてさらなる対応を求める方針です。

イスラエル ハマスの武器庫などを攻撃

イスラエル軍は8日、南部ハンユニスでイスラム組織ハマスの武器庫など30の標的を攻撃したほか、多数の戦闘員を殺害したと発表しました。

また、パレスチナの地元メディアは、ハンユニスのほか、中部にあるマガジ難民キャンプでも激しい攻撃が行われたと伝えていて、ガザ地区の保健当局は8日、過去24時間にイスラエル軍の攻撃で249人が死亡し、これまでの死者は2万3084人に上るとしています。

ヒズボラ “イスラエル軍攻撃で幹部1人殺害された”

イスラエル軍は隣国レバノンへの攻撃も繰り返していて、南部に拠点を置くイスラム教シーア派組織ヒズボラは8日、イスラエル軍の攻撃で幹部1人が殺害されたと発表しました。

イスラエルのネタニヤフ首相は、北部に展開する部隊を視察し「ヒズボラは大きな過ちを犯している。われわれはあらゆる手段で北部での安全を取り戻す」と述べ、ヒズボラに対しても軍事作戦を継続する姿勢を強調しました。

イスラエル軍がガザ地区に加え、レバノンへの攻撃も強めていることで、地域の緊張がさらに高まることが懸念されています。

米国務長官 “イスラエルとヒズボラ戦闘 誰の利益にもならない”

中東を訪問中のアメリカのブリンケン国務長官は8日、サウジアラビアで記者団に対し、イスラエルと、隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦闘が続いていることについて「緊張が高まり本格的な戦闘に入ることは誰の利益にもならない」と述べ、アラブ各国などと協力しながら緊張緩和に向けた外交努力を続ける考えを示しました。

また、ブリンケン長官は、ヨルダンやカタール、サウジアラビアなどアラブ各国の政府要人との会談で、地域の将来について協議したとして「独立したパレスチナ国家の樹立の必要性など、基本的な目標についておおむね合意できた」と述べ、ガザ地区とヨルダン川西岸はパレスチナ暫定自治政府によって統治されるべきだとする考えを強調しました。

こうした関係国との会談を踏まえ、ブリンケン長官はこのあとイスラエルで、戦闘の拡大防止などについて政府要人と意見を交わすことにしています。

韓国情報機関 “ハマスが北朝鮮製の兵器使用”と分析

韓国の情報機関・国家情報院は8日、北朝鮮製のロケット弾を発射する兵器をイスラム組織ハマスが使用しているという分析を明らかにしました。

国家情報院は、ハマスが使用したとするこの兵器の写真を公開し、写真からは確認できませんが、ハングルが書かれた部品もあるとしています。

その上で「北が兵器を提供した規模と時期については、具体的な証拠を収集している」と説明しています。

北朝鮮の兵器をめぐっては、韓国軍が去年10月、ハマスが所持するロケット弾を発射する兵器やハマスが使用したとされる砲弾の一部が北朝鮮製とみられるとして、兵器の取り引きなどで連携しているとの見方を示していました。