【被災者支援情報 8日】「みなし仮設住宅」受け付け順次始まる

地震発生から8日で1週間となりますが、石川県では7日午後2時時点で2万8000人あまりが避難生活を余儀なくされています。避難生活の長期化による健康への影響が懸念されていて、避難者からは不安の声が上がっています。

被災した人たちに向けた支援の動きをまとめました。

《避難・住まいの支援》

能登町と穴水町でも仮設住宅建設へ 石川県

今回の地震を受けて石川県は、被害の大きかった輪島市や珠洲市に加えて能登町と穴水町でも仮設住宅を建設することになりました。

これは8日、開かれた県の災害対策本部会議で示され、県は1月15日から能登町と穴水町であわせて60戸の仮設住宅の建設にとりかかる計画です。

仮設住宅について、県はこれまでに輪島市と珠洲市であわせて115戸を今月12日から建設する計画を示しています。

いずれも完成時期は未定だとしていますが、県はなるべく早く完成させたい考えです。

「みなし仮設住宅」の受け付け順次始まる

能登半島地震で自宅が大きな被害を受けた人を対象に、条件を満たせば民間の賃貸住宅に2年間、無料で入居できる「みなし仮設住宅」の受け付けが石川県内の自治体で順次、始まっています。

石川県などは、災害救助法の適用を受けた輪島市や珠洲市などあわせて17の市と町の住民で住宅が全壊した人や半壊であっても今後住むことができず解体する人などを対象に「みなし仮設住宅」を提供します。

家賃の上限や耐震性などの条件を満たせば、県内の希望する民間の賃貸住宅に、最長2年間、家賃などが無料で入居できます。一方、光熱費や水道代は自己負担となります。

申し込みには、原則として自治体が発行した「り災証明書」が必要で、各自治体で順次、申し込みの受け付けが始まっています。

石川県建築住宅課は、詳しい手続きや自治体ごとの申し込み受け付けの最新状況は県のホームページで確認するよう呼びかけるとともに「一度、みなし仮設住宅に入居すると、後日、建設される仮設住宅には原則入居できなくなるためその点を踏まえて申し込むか検討してほしい」としています。

石川県と富山県の「みなし仮設」受付状況

能登半島地震を受けて、民間の賃貸住宅を活用した「みなし仮設」の受け付けが石川県と富山県のあわせて22の市町村で始まっています。

国土交通省の8日午前11時半現在のまとめによりますと、自治体が民間の賃貸住宅を借り上げて提供する「みなし仮設」について、
石川県内では
▼七尾市、
▼羽咋市、
▼かほく市、
▼白山市、
▼能美市、
▼津幡町、
▼小松市、
▼志賀町、
▼中能登町のあわせて9つの市と町で受け付けが始まっています。

また、富山県内では
▼富山市、
▼高岡市、
▼氷見市、
▼滑川市、
▼黒部市、
▼砺波市、
▼小矢部市、
▼南砺市、
▼射水市、
▼舟橋村、
▼上市町、
▼立山町、
▼朝日町の13の市町村で受け付けが行われています。

このほか全国30の自治体で空きのある公営住宅およそ630戸が提供可能になっているということです。

提供可能な住宅がある自治体は、▼千葉県、▼千葉市、▼東京都、▼富山県、▼富山市、▼富山県砺波市、▼石川県、▼石川県七尾市、▼石川県小松市、▼石川県かほく市、▼石川県川北町、▼石川県中能登町、▼岐阜県、▼岐阜市、▼岐阜県高山市、▼岐阜県関市、▼岐阜県大垣市、▼岐阜県飛騨市、▼三重県、▼愛知県、▼名古屋市、▼愛知県岡崎市、▼京都府、▼京都市、▼奈良市、▼和歌山県橋本市、▼福岡県、▼福岡市、▼北九州市▼鹿児島県鹿屋市です。

「みなし仮設」の利用や自治体が提供する公営住宅への入居の手続きは、各自治体の窓口で受け付けています。

石川 金沢市内の宿泊施設が空き部屋を被災者に提供

今回の地震で住宅が被害を受けるなどして避難生活を送っている人を支援しようと、金沢市内の宿泊施設が空いている部屋を被災者に提供する取り組みを行っています。

今回の地震により石川県内では多くの住宅が被害を受けていて、輪島市や珠洲市など特に被害が大きかった地域では今も被害の実態が把握できていません。

このため金沢市内にあるおよそ20のホテルや民宿が、自宅が地震で全壊するなどして住み続けることができなくなった人たちを対象に空いている部屋を無料や低料金で提供する取り組みを今月3日から行っています。

このうちの1つ、金沢市森山の簡易宿泊所では、避難してきた人たちを無料で受け入れていて、今月8日時点で珠洲市と七尾市から避難してきたあわせて3組が利用しているということです。

珠洲市から一家6人で避難している畑優子さん(65)は自宅が全壊したということで「車中泊では余震も怖く、1時間ごとに目が覚めてしまうので、畳の上で布団で寝られるのはありがたいです」と話していました。

簡易宿泊施設「旅篭屋ゆいまーるEAST」の山口真吾さんは「無料で受け入れることには二の足を踏んでいる宿泊施設もあると思うので、行政からの補助があればもっと多くの施設が取り組み、支援の輪が広がるのではないか」と話していました。

観光庁「みなし避難所」4県の73施設2552人分の受け入れへ

観光庁は、被災者の生活環境を改善するため、周辺のホテルなどの宿泊施設を自治体が借り上げる「みなし避難所」について、石川県、福井県、富山県、新潟県の4県の73施設で2552人分の受け入れの調整がついたことを明らかにしました。

内訳は▼石川県で42施設1605人分、▼福井県で16施設529人分、▼富山県で12施設285人分、▼新潟県で3施設133人分となっていて、観光庁は73施設のリストを石川県に提供したということです。石川県は今後、被災者の受け入れの調整を進めることにしています。

一方、観光庁は石川県とも連携しながら受け入れ可能な宿泊施設をさらに拡大していくとともに、必要に応じて石川県以外にも宿泊施設のリストを提供することにしています。

「みなし避難所」施設側に支払う利用額基準を引き上げへ

自治体がホテルや旅館などの施設の空室を借り上げる「みなし避難所」について、松村防災担当大臣は総理大臣官邸で記者団に対し、行政が施設側に支払う利用額の基準を1泊1人あたり7000円から特例的に1万円に引き上げることを明らかにしました。

より多くの空室が利用できるようになることが見込まれます。

その上で「被災者が安心して避難生活を送れるよう、環境が整った避難先の確保は喫緊の課題だ。災害関連死を防ぐためにも、いったん地域外に避難して人命を守っていくための対応をしっかりと応援していく」と述べました。

石川県内 391か所の避難所に2万8000人あまり避難

石川県によりますと、8日午後2時時点で県内の391か所で避難所が開設され、2万8000人あまりが避難しているということです。

自治体別では、
▼金沢市が2か所で39人、
▼七尾市が33か所で2073人、
▼小松市が1か所で0人、
▼輪島市が160か所で1万2428人、
▼珠洲市が63か所で6617人、
▼加賀市が1か所で4人、
▼羽咋市が1か所で106人、
▼かほく市が2か所で49人、
▼津幡町が1か所で35人、
▼内灘町が4か所で138人、
▼志賀町が14か所で853人、
▼宝達志水町が2か所で48人、
▼中能登町が4か所で109人、
▼穴水町が43か所で2646人、
▼能登町が60か所で3015人となっています。

《医療の支援》

日赤 富山県支部の救護班 石川県に向け出発

日本赤十字社富山県支部の医師や看護師など7人からなる救護班の第2班が8日、石川県の被災地に向け富山市を出発しました。

日本赤十字社富山県支部は今月2日から4日まで救護班第1班の医師ら6人を派遣したのに続き、8日から11日まで第2班となる医師や看護師など7人を派遣することになりました。

8日朝、富山市にある支部に集まった救護班のメンバーは、被災地で使う医薬品や診療器具などを確認して救急車に積み込んでいました。

富山赤十字病院の平岩善雄病院長から「現地は余震も続き雪も降っているので気をつけてミッションを成し遂げてほしい」と激励を受けたあと、救急車などに乗り込み出発しました。

救護班は石川県に到着した後、現地で指示を受けて各地の避難所や病院で診療活動にあたることにしています。

救護班のメンバーの若林祐介医師は「被災された方は非常に精神的につらいと思いますし、感染症も流行傾向ということで心に寄り添って診療したい」と話していました。

第1班のメンバーとして石川県輪島市などで活動した上田永子さんは被災地の状況について「道路の陥没や亀裂が激しく患者の搬送に時間がかかった。病院にはたくさんの患者が集まり野戦病院のようになっていて、医療体制が不十分な中で現地の医師なども車の中で仮眠を取りながら働いている」と話していました。

《国・自治体・警察の動き》

能登半島 6つすべての港 利用可能に

国土交通省は被災地の物資の支援をする上で重要な能登半島の6つの港について調査を進め、8日、新たに2つの港で船が着岸できることが確認できたと発表しました。

これで6つすべての港で利用が可能になり、生活に必要な物資を積み降ろしできるようになりました。

ただ、港の一部の岸壁は地震による破損などで利用できないところもあり、復旧作業が必要な状態だとしています。

国道249号線「くしの歯状」に復旧も 6か所で通行ルート確保

国土交通省によりますと能登半島の北側沿岸を通る国道249号線は地震による斜面の崩壊などにより多くの地域で被害が出ていて、国や県が復旧作業を行っています。

道路が寸断されたことで沿岸部を行き来できず、孤立集落が多くなっていることから、国土交通省と自衛隊では内陸から沿岸部に向かって「くしの歯状」に道路の復旧も進めています。

その結果、8日午前7時時点で、
▽輪島市の鳳至小学校付近、
▽輪島市名舟町付近、
▽輪島市町野町付近、
▽珠洲市笹波町付近、
▽珠洲市三崎町粟津付近、
▽珠洲市大谷町付近の6か所で内陸からの車の通行ルートを確保したということです。

一方、国道249号そのものの復旧には時間がかかっていて、輪島市から珠洲市にかけての区間の復旧は4割ほどにとどまっています。

松本総務相「応援職員 石川と富山の16市町で活動開始」

松本総務大臣は記者会見で、被災自治体への応援職員について、これまでに全国41の自治体から派遣され、石川県と富山県の16の市と町で活動を始めていることを明らかにしました。

その上で松本大臣は「現在は、避難所などで活動してもらっているが、り災証明書の交付もスタートしており、被災者を支援するためには自治体機能をできるだけ拡充することが重要だ。被災者をしっかりと支えられるよう、応援職員の働く環境についても、送り出している総務省としては留意しなければならない」と述べました。

被害の道路状況把握へ「TECーFORCE」派遣

能登半島地震で被害を受けた道路の状況を把握するため、国土交通省関東地方整備局は第2陣となる緊急災害対策派遣隊=「TECーFORCE」の職員を8日、被災地に派遣しました。

このうち千葉県松戸市にある国土交通省関東地方整備局首都国道事務所からは職員4人が派遣されました。

出発式で田中満所長は「被災地のみなさんが一日でも早く日常を取り戻せるように支援をお願いしたい。令和元年の台風では全国から関東地方に支援をいただいたのでその恩返しとなる活躍を期待したい」と激励しました。

関東地方整備局は、地震発生の翌日には第1陣を派遣していて、これまでに石川県七尾市や志賀町などの被災地で道路に入った亀裂の幅を調べたり斜面の地滑りの状況を確認したりして、被害状況の調査を行っています。

今回派遣される職員は石川県中能登町で1週間ほど活動して道路の被害調査などにあたる予定で、早期の復旧に向けて自治体側と情報を共有することにしています。

隊長を務める三屋竜一さんは「中能登町では道路の地割れなどが起きている。一刻も早く復旧できるように調査をしていきたい」と話していました。

“個人で支援物資を送付 控えて” 石川 七尾市

今回の地震で被災した人への支援物資について、石川県七尾市は受け入れ体制が十分でないことなどから受け入れが困難だとして、個人で支援物資を送ることは控えてほしいと呼びかけています。

七尾市によりますと、個人からの支援物資は少ない量を避難者に振り分ける必要があるため、作業効率や人手の確保の観点から現在のところ受け入れが難しいとしていて、個人で支援物資を送ったり持ち込んだりすることは控えてほしいと呼びかけています。

一方、石川県も個人からの支援物資は仕分けに人手がかかるなどとして直接持ち込むことは控えてほしいと呼びかけています。

農家や漁業者対象の特別相談窓口 9日開設 石川県

能登半島地震で大きな被害を受けた農林水産業を支援しようと、石川県は農家や漁業者を対象に復旧や事業の継続を進めるための特別相談窓口を9日から開設することにしました。

石川県によりますと、8日午後2時の時点で、畜産関係では牛舎などの施設が壊れる被害が40件に上ったほか、水産関係でも120隻以上の漁船が転覆や沈没するなど、県内で多くの被害が出ています。

こうした事態を受け県は、被災した農家や漁業者を支援するための特別相談窓口を9日から開設することにしました。

窓口は県内に5か所ある県の農林総合事務所や、金沢市にある県の漁業協同組合の本所に設けられ、被災した農地や施設の復旧のほか事業の継続に向けた補助金の申請などに関する相談に電話や対面で応じることにしています。

相談の受け付け時間は土曜日や日曜日、祝日を含む毎日、午前9時から午後6時までで、県農林水産部は「今後の事業に不安を抱えている事業者もいると思うので、県としてもそういった方に寄り添っていきたい」としています。