能登半島地震の被災地 平地でも大雪見込み 建物倒壊に十分注意

最大震度7を観測した能登半島地震の被災地は、上空の強い寒気の影響で局地的に雪が強まり、積雪が増えています。
8日昼前にかけて、平地でも大雪となるところがある見込みで、相次ぐ地震で損傷を受けた建物では積雪の重みによる倒壊などに十分注意が必要です。
また、冷え込みも厳しくなるため、低体温症への対策もできるかぎり取るようにしてください。

1月1日に発生した能登半島地震では、
▽石川県の志賀町で震度7の激しい揺れを観測したほか
▽震度6強を七尾市と輪島市、珠洲市、穴水町で
▽震度6弱を新潟県長岡市で観測しました。

8日昼前にかけ大雪のおそれ

能登半島地震で激しい揺れを観測した石川県をはじめ、北陸や新潟県では上空の寒気の影響で雪が降り、局地的に強まっています。

午前2時までの3時間には、
▽新潟県長岡市で17センチ
▽新潟県上越市安塚で12センチ
▽石川県七尾市で10センチの雪が降りました。

石川県内の午前2時現在の積雪は
▽珠洲市で13センチ、
▽七尾市で10センチ、
▽輪島市で9センチと積雪が増えています。

8日昼前にかけて、北陸や新潟県では山沿いを中心に大雪となるほか、平地でも大雪となるおそれがあります。

また、海上を中心に風が強く、石川県の沿岸ではしけが続く見込みです。

気象庁は、大雪による交通への影響や農業施設への被害、電線や樹木への着雪、路面の凍結などにも注意を呼びかけています。

相次ぐ地震で損傷を受けた建物は積雪の重みで倒壊するおそれもあり、十分注意してください。

低体温症など十分注意を

また、避難生活の長期化や環境の悪化で健康への影響が懸念されている石川県では気温が0度前後の厳しい冷え込みになっています。

過去の地震では、避難生活の中で命を落とす災害関連死が多く発生しています。

石川県輪島市は氷点下の厳しい冷え込みが予想されています。

低体温症に十分注意し、家族や周りに体調を崩している人がいないか声をかけあい、できるかぎり暖を取って定期的に体を動かすなど対策を心がけてください。

今後の地震活動に注意

能登地方やその周辺を震源とする地震活動は活発な状態が続き、震度1以上の揺れを観測した地震は、7日午後4時までに1158回にのぼっています。

気象庁は、1日の地震から1週間ほどは最大震度7程度の揺れに注意するよう呼びかけています。

専門家 “倒壊や倒木 道路の寸断など発生のおそれ”

専門家は今回の雪は湿っていて重たく、相次ぐ地震で損傷を受けている建物の倒壊や倒木による道路の寸断などが発生するおそれがあると指摘しています。

雪のメカニズムに詳しい防災科学技術研究所雪氷防災研究センターの上石勲特別研究員によりますと、石川県などの被災地では、8日にかけて大雪となり、朝の最低気温が0度前後と予想されていて、地上では湿った雪になる見込みです。

湿った雪は屋根や木の枝、電線などに付着しやすく、積もると重くなるため
▽これまでの地震の揺れで損傷を受けている建物では倒壊につながったり
▽倒木による道路の寸断のおそれがあるほか
▽停電などが起きる可能性もあるということです。

また、屋根に積もった雪で建物の上部が重たくなるため、地震の際に揺れが大きくなって倒壊する危険性が高まると指摘しています。

さらに、能登半島の道路では、地震の影響でひびが入ったり段差が生じたりしているほか、液状化が起きている地域も多いため、除雪車による作業ができず、緊急車両の走行や支援物資の輸送などに支障が出るおそれもあるとしています。

能登地方では、9日には再び雨が予想されています。

雪はスポンジのように雨を吸い込んでさらに重くなるほか、雪どけが進んで土砂災害も起こりやすくなるため、さらに警戒が必要だと呼びかけています。

上石特別研究員は「難しいかもしれないが、大雪が予想されている間は避難所や親戚の家など、できるだけ頑丈な建物に身を寄せてほしい。全国から支援に入っている人の中には雪に慣れていない人もいると思うので、雪による視界不良や落石にも十分注意してほしい」と話しています。

専門家「寒さで亡くなる人が出かねない」

1月1日の能登半島地震を受けて被災地に入り、避難の状況を調査した専門家は「車中泊をしている人が多い中、雪も降ってきていて、今後、寒さで亡くなる人が出かねない」と危機感を示しました。

被災者の避難生活に詳しい兵庫県立大学大学院の阪本真由美教授は、1月2日から石川県に支援に入り、輪島市や珠洲市などで避難所の環境を調査しました。

このうち珠洲市は、多くの建物が被災し避難できる場所が限られていて、1000人以上が集まって過密な状態になっている避難所もあり、感染症の流行が心配されるということです。

避難の状況について、阪本教授は「感染症の対策には定期的な換気や清掃などが大切だが、行政職員も被災しているため、地域の人たちの負担が重くなっている。疲れがたまっている様子だった。珠洲市は車中泊をしている人が非常に多いが、燃料の補給ができないためエンジンを切り、暖房を使わずに過ごさざるをえない人も多い。雪も降ってきていて、今後、寒さで亡くなる人が出かねない」と危機感を示しました。

また、必要な対策については「現状では車中泊よりも避難所にいたほうが支援の手が届きやすいが、今後は車中泊をしている人たちに物資を配るための拠点を増やし、防寒着や湯たんぽ、カイロなどを届ける仕組みも必要だ。避難生活は長期化する可能性がある。場合によっては、ほかの自治体に避難する広域避難の検討も必要だ」と話していました。

石川県内 7区間の道路通行止め 除雪作業など

石川県は、大雪の影響で集中的に除雪作業などを行うため、7日午後9時から県内の7区間の道路の通行止めを行うと発表しました。

石川県によりますと、通行止めを行うのは、
【のと里山海道】
▽県立看護大IC~徳田大津ICの間

【国道249号】
▽七尾市深見町~穴水町川島の間

【県道1号「七尾輪島線」】
▽穴水町川島~輪島市河井町の間

【県道271号「漆原下出線」】
▽輪島市三井町漆原~輪島市三井町洲衛の間

【県道7号「穴水門前線」】
▽穴水町小又~輪島市門前町本市の間

【珠洲道路】
▽穴水町此木~珠洲市宝立町の間

【県道6号「宇出津町野線」】
▽能登町宇出津~上町の間

県は、能登地域での救命活動や支援物資の輸送、孤立集落の解消に向けての作業などを継続的に実施するため、一時的に全面通行止めを実施して、除雪作業などを行うとしています。

作業が終了し、安全が確認できしだい通行止めを解除する予定だとしています。