【被災者支援情報 7日】「みなし仮設」一部で受け付け始まる

1日に石川県能登地方で震度7の揺れを観測した地震で、7日時点の被災した人たちに向けた支援の動きをまとめました。

《避難・住まいの支援》

石川 七尾 和倉温泉 一部宿泊施設で客室に被災者を受け入れ

今回の地震ですべてのホテルや旅館が休業を余儀なくされている石川県七尾市の和倉温泉では、一部の宿泊施設で被害のなかった客室に被災者を受け入れています。

和倉温泉にある旅館「はまづる」は、今回の地震で住宅が倒壊した七尾市の夫婦に被害の少なかった客室を貸しています。修繕すればほかにも10室ほどが使えるということで、別の被災者からも問い合わせが来ているということです。

部屋を借りることになった男性は「助けてもらって生活するしかないので助かります。倒壊した家は建て直すつもりです」と話していました。

今回の地震で、石川県を代表する観光地のひとつして知られる七尾市の和倉温泉では、20あまりある旅館やホテルなどが大きな被害を受け、すべて休業しています。再開のめどは立っていないということです。

民間賃貸住宅活用の「みなし仮設」 受け付け始まる

能登半島地震を受けて、民間の賃貸住宅を活用した「みなし仮設」の受け付けが石川県と富山県のあわせて21の市町村で始まるなど、住まいの確保に向けた取り組みが行われています。

国土交通省の7日午前11時半現在のまとめによりますと、自治体が民間の賃貸住宅を借り上げて提供する「みなし仮設」について、石川県内では▽七尾市、▽羽咋市、▽かほく市、▽白山市、▽能美市、▽津幡町、▽小松市▽志賀町のあわせて8つの市と町で受け付けが始まっています。

また、富山県内では▽富山市、▽高岡市、▽氷見市、▽滑川市▽黒部市、▽砺波市、▽小矢部市、▽南砺市、▽射水市、▽舟橋村、▽上市町、▽立山町、▽朝日町の13の市町村で受け付けが行われています。

このほか全国19の自治体で空きのある公営住宅およそ600戸が提供可能になっているということです。

7日時点で提供可能な住宅がある自治体は、▽千葉県、▽千葉市、▽東京都、▽岐阜県、▽岐阜県高山市、▽岐阜県関市、▽岐阜県大垣市、▽岐阜県飛騨市、▽三重県、▽愛知県、▽愛知県岡崎市、▽名古屋市、▽京都府、▽京都市、▽奈良市、▽和歌山県橋本市、▽福岡県、▽福岡市、▽北九州市です。

「みなし仮設」の利用や自治体が提供する公営住宅への入居の手続きは、各自治体の窓口で受け付けています。

7日開かれた国土交通省の災害対策本部で斉藤国土交通大臣は「住まいの早期確保は、重要な課題だ。業界団体や全国の自治体とも協力し、取り組みをさらに進めてもらいたい」と指示しました。

配慮必要な被災者 いしかわ総合スポーツセンターで受け入れへ

石川県は被災地にある避難所から、被災地の外にあるホテルや旅館などの「二次避難所」への移動を進めるため、8日から金沢市にある「いしかわ総合スポーツセンター」で高齢者や妊婦など配慮が必要な被災者とその家族を優先して受け入れることにしています。

これは7日午後、県が災害対策本部会議で示したもので、受け入れの対象となるのは、高齢者や妊婦、それに持病がある人など配慮が必要な被災者とその家族です。

被災地の避難所からホテルや旅館などの二次避難所への避難が決まるまで水道や電力などライフラインの環境が整った場所で、一時的に避難してもらうのが目的で、スポーツセンターのメインアリーナにおよそ250のテントを設置して500人程度を受け入れる方針です。

県は8日から受け入れを開始し、避難した人から体調やニーズを聞き取ったうえで、県内外のホテルや旅館、それに介護施設など二次避難所に受け入れてもらえるよう調整するということです。

《医療の支援》

石川 珠洲 薬局機能備えた特殊な車両派遣

今回の地震で被災した人たちに薬を提供できる体制を整えようと日本薬剤師会は薬局の機能を備えた特殊な車両を石川県内で初めて珠洲市に向けて派遣しました。

日本薬剤師会が珠洲市に派遣するのは、店舗の薬局のように▽錠剤を入れる棚や▽薬を小分けにする機械など、薬の処方に必要な機材が備えられた「モバイルファーマシー」と呼ばれる特殊な車両です。

石川県薬剤師会によりますと、こうした車両が県内の被災地に派遣されるのは今回が初めてで、現地では災害医療チームの医師が出した処方箋に基づいて、被災した人たちに薬を提供する予定だということです。

日本薬剤師会は今後、県薬剤師会と調整し、輪島市や穴水町にも同様の車両を派遣することを検討しています。

処方箋持っていなくても薬受け取れるように

厚生労働省は今回の地震で被災した人たちが、医師が出した処方箋を持っていなくても条件を満たせば薬を受け取れるよう都道府県などに通知を出しています。

薬を受け取れるのは、地震の影響で交通手段がなくなったり、医療機関が被災したりして医師の診察を受けることが難しい場合で、薬剤師などが医師と連絡をとり、処方の内容を確認できることとしています。

これについて厚生労働省では医師と連絡がつかないなどやむをえない場合、例えば「お薬手帳」や薬の包装などから処方内容が安定した慢性疾患によるものであることなどが明らかであれば、医師への確認を事後的に行うことを条件に認めることも想定されるとしています。

厚生労働省は「災害時でもふだんの治療を続けることは重要なので、我慢せず現地の医療関係者に相談してもらいたい」としています。

災害医療チームを派遣 巡回しながら治療

7日金沢市で会見を開いた石川県医師会の安田健二 会長は今月3日から、石川県と福岡県などの災害医療チーム=JMAT、7チームおよそ30人が穴水町の避難所などを、巡回しながら現地で治療にあたっていると発表しました。

JMATは、日本医師会が大規模な災害時に被災地の医療を中長期的に支えるため、医師や看護師などのチームを各都道府県ごとに編成して派遣するものです。

日本医師会などによりますと今後、派遣するJMATの規模を30から40チームまで増やし、被害の大きい輪島市や珠洲市などでも活動する方針だということです。

《運輸》

宅配便や郵便物 一部地域で配送再開

今回の地震で宅配便や郵便物の集配への影響が続いていますが、一部の地域では集配が再開されたほか、営業所までのかたちで全国から荷物を届けることができる対応も始まっています。

ただ、各社は被災地の道路状況が厳しく全面的な再開には時間がかかるとしています。

【ヤマト運輸】
7日から石川県の▽羽咋市と▽宝達志水町の全域、それに、▽志賀町の一部地域で配送を再開しました。

また、営業所で荷物の発送を受け付けているほか、自宅など指定された場所に出向いて荷物を預かる集荷も再開しました。

一方、▽七尾市と▽中能登町でも7日から荷物の配送を再開しました。

▽七尾市と▽中能登町では営業所で荷物の発送も受け付けていますが、自宅などでの集荷はできないということです。

いずれの地域も、荷物の配送は大幅に遅れる可能性があるとしています。

一方で、ヤマト運輸は、◇石川県の▽珠洲市▽輪島市▽穴水町▽能登町のそれぞれ全域と、▽志賀町▽内灘町の一部の地域で荷物の集配を見合わせています。

【佐川急便は】
▽石川県の七尾市、輪島市、羽咋市、珠洲市、中能登町、志賀町、穴水町、能登町で荷物の集配を見合わせています。

一方、▽七尾市にある営業所では、建物の復旧作業などを終え、営業が再開されています。

◇これまで営業所にとどまっていた荷物を引き取ることが可能になったほか、◇営業所までのかたちで全国から荷物を届けることができる対応も始まりました。

荷物を営業所で受け取ることを前提に、「佐川急便能登営業所」宛に荷物を送ることができます。

荷物を受け取る場合には、荷物の「問い合わせ番号」を控えておくと、よりスムーズに荷物を受け取れるということです。

営業所での受け取りの受付時間は、平日、土日祝日ともに午前7時から午後7時までとなっています。

【日本郵便】
▽石川県の七尾市、珠洲市、輪島市、志賀町、穴水町、能登町、中能登町のいずれも全域と、▽新潟市西区の一部地域での荷物の集配の受け付けを停止しています。

郵便物や荷物の配達については、これらの地域と富山県の一部で遅れが出ているということです。

各社によりますと、被災地では、道路の寸断や、それに伴う渋滞などでトラックなどの車両の走行が難しい状況で、配達に時間がかかる影響が続くほか、全面的な再開にはさらに時間がかかるとしています。

《国・自治体・警察の動き》

「特定非常災害」に指定へ 運転免許証の有効期間延長など可能に

能登半島地震を受けた政府の対策本部で、岸田総理大臣は今回の地震を運転免許証や飲食店営業許可の有効期間の延長など、被災者に行政上の特例措置が適用される「特定非常災害」に指定する考えを明らかにしました。

国交省 道路調査や復旧作業にあたる職員を石川に派遣

大阪・中央区にある国土交通省近畿地方整備局は、緊急災害対策派遣隊=「TECーFORCE」として44人の職員を能登半島地震の被災地に派遣することになり、7日出発式が行われました。

派遣隊の高松弘泰さんは「孤立集落の一刻も早い解消と被災地の復興につなげられるよう、県や市町に寄り添いながら的確な調査に全力をあげてまいります」と決意を述べました。このあと、派遣隊のメンバーは車に乗り込み、石川県の奥能登の被災地に向けて出発しました。

派遣隊はおよそ1週間にわたって▽道路の破損状況の調査や復旧作業のほか、▽土砂崩れの現場の調査などにあたるということです。

茨城県内の自治体職員 石川 能登町に派遣

能登半島地震で大きな被害を受けた石川県能登町で避難所の運営や町の業務を支援するため、茨城県内の自治体の職員が7日朝、現地に出発しました。

石川県能登町に派遣されるのは、茨城県と、水戸市、北茨城市、笠間市など市町村の職員合わせて18人で、7日午前、県庁の駐車場で出発式が行われました。

この中で県防災・危機管理部の山崎剛部長は「被災地では多くの方が大変な生活を強いられている。被災者に寄り添った支援をお願いしたい。安全第一で向かってほしい」とあいさつしました。

今回派遣される職員は、8日から能登町で、すでに現地にいる県の職員と合流して、▽避難所の運営や▽り災証明書の発行など町の窓口業務の支援にあたるということです。

茨城県内からの職員の派遣は今後も続けるということで、今回派遣された県営業戦略部の渡辺達彦チームリーダーは出発を前に「被害の全容がまだ把握できず、被災者は心を痛めていると思うので、寄り添いながら支援をしていきたい」と話していました。

富山県警 広域緊急援助隊を石川に派遣

能登半島地震の被災地で人命救助や捜索活動にあたるため、富山県警察本部の広域緊急援助隊などが7日朝、石川県に向けて出発しました。

石川県に向かったのは富山県警広域緊急援助隊の隊員など28人で、7日朝、富山市にある機動隊の庁舎で出発を前にそれぞれの荷物や毛布などをバスに積み込みました。

現地に向かう車両は、隊員の移動用のバスや乗用車、がれきの撤去に使う重機、それにスコップをはじめとした道具を積んだトラックなどあわせて6台です。

部隊は7日午後、金沢市を経由して輪島市内で人命救助や捜索活動にあたる予定で、現地には5日ほど滞在するということです。

《そのほかの支援の動き》

通信各社 衛星通信サービスのアンテナの提供開始

石川県の一部の地域では携帯電話がつながらず、避難生活を余儀なくされている人などが必要な情報を得られないといった状況が続いてます。

こうしたなか、通信各社は、被災地に短時間でWi-Fi環境が構築できる衛星通信サービスのアンテナの提供を始めています。

このうちKDDIは、7日石川県と総務省の要請に応じる形で、避難所などに設置する衛星通信サービス「スターリンク」のアンテナ、350台を石川県に提供しました。

このアンテナは小型で軽量なため短時間でWi-Fi環境が構築できるほか、高速の衛星通信が可能で1つのアンテナで携帯やパソコンなど同時に120台あまりの端末を接続できるということです。

通信各社では、NTTドコモやソフトバンクも「スターリンク」のアンテナを石川県内の自治体や避難所などに提供を進めています。

AIに相談できるサービス無料公開

国が用意しているさまざまな被災者支援についてAI=人工知能に相談できるサービスを東京のIT関連会社が開発し無料で公開しています。

東京に本社があるIT関連会社「Nan Naru」の社長、坪坂有純さんは今月1日、富山市の実家に帰省中に地震の被害にあいました。

坪坂さんは社員たちと協力して被災した人たちが、国が用意しているさまざまな被災者支援についてAIに相談できるサービスを開発し地震の翌日から無料で公開しています。

AIとのチャットに困りごとを相談すると、AIが国が用意しているおよそ100の被災者支援のデータベースの中から最適な支援策を探し出して答えてくれます。サービスは会社のホームページから利用できます。