輪島市の火災 “大津波警報で初期消火できず拡大か” 専門家

今回の能登半島地震で、大規模な火災が起きた石川県輪島市の現場を専門家が調査したところ、大津波警報の影響で十分な初期消火ができず、火の手が激しくなっていったとみられることがわかりました。専門家は「地震火災の負の部分が強く出てしまった災害だ」と指摘しています。

輪島市中心部にある河井町では1月1日の地震で大規模な火災が発生し、店舗や住宅など200棟以上が焼けるなど、焼失面積はおよそ4万8000平方メートルにのぼるとみられています。

日本火災学会のメンバーで、地震火災に詳しい東京大学の廣井悠教授の研究グループは、6日に現地の状況を詳しく調べました。

現場では焼け焦げたプロパンガスのボンベが複数見つかり、廣井教授はプロパンガスへの引火で爆発的な火災が起こり、観光名所の「朝市通り」として知られる、古い木造の家屋や店舗が密集する地域に一気に火が燃え広がった可能性があると指摘しています。

また、火災を目撃していた住民に聞き取り調査を行った結果、
▽大津波警報が出されたことで、住民が避難を余儀なくされ、十分な初期消火が行えなかったことや、
▽駆けつけた消防も断水の影響で消火栓が使えず、防火水槽や川の水に頼らざるをえなかったこともわかりました。

廣井教授は「今回のいちばんの問題点は大津波警報で住民が十分に対応できなかった可能性があることで、地震火災の負の部分が強く出てしまった災害だ。被害をどう最小限に抑えるかが教訓で、今後の防災対策や地域の復興に生かしていく必要がある」と話していました。

住民「こんなに大きな火災になるとは」

輪島市の火災の状況を住民が撮影していました。映像にはパチパチと激しく音を立てながら、あたり一面に火が燃え広がっている様子が映っています。

撮影した石畑雅英さんによりますと、出火当時はほぼ風のない状態でしたが、しだいに弱い南風に変わり、南から北へ燃え広がっていったということです。

現場では大津波警報が出されていて、住民はその場から避難していたほか、地元の消防団が消火にあたろうとしたものの、断水で消火栓が使えなかったということです。

また、ほかの地域の消防団も道路が土砂崩れでふさがれるなどしたため、駆けつけることができなかったということです。

石畑さんは「火が出たときは、こんなに大きな火災になるとは思いませんでした。自分には何もすることができず、ただ見ているだけでした。災害なので仕方がないと思っています」と話していました。

火災現場を訪れた男性 “ひどい火災だった”

石川県輪島市の中心部で200棟以上が焼けたとみられる火災の現場では、6日も訪れる人の姿が見られました。

実家が火災で焼けたという50代の男性は、警察や消防が活動を行っている傍らで、焼け跡となった実家の跡地をじっと眺め続けていました。

男性によりますと、実家で暮らしていた母親は避難ができたため無事でしたが、近くで暮らす同級生の母親が亡くなったということです。

男性は「友人の母親が壊れた建物の下敷きになり、火災で亡くなったと聞いています。ひどい火災だったと思います」と涙ながらに話していました。