「XRISM」超新星の残骸の詳細データなど初観測に成功

去年9月に打ち上げられた天文観測衛星「XRISM」が、超新星の残骸を観測した詳細なデータなどの初めての観測に成功し、JAXA=宇宙航空研究開発機構はブラックホールなど宇宙の謎の解明につながる可能性があると期待しています。

JAXAやNASA=アメリカ航空宇宙局などが共同で開発した天文観測衛星「XRISM」は、これまでにない高い精度でX線を検出することができ、データから天体の温度や速度などの状態を分析することで、ブラックホールや暗黒物質=ダークマターなど宇宙の謎の解明につながる可能性があると期待されています。

去年9月に打ち上げられた「XRISM」は宇宙空間での初めての観測に成功したとして、JAXAが5日、会見を開き、画像やデータを公開しました。

およそ7.7億光年離れた銀河団をこれまでのおよそ4倍の範囲で捉えた画像のほか、超新星の残骸を観測したデータからは、含まれる元素の種類や量が詳しくわかったということです。

「XRISM」は早くて来月にも本格的な運用を開始するということで、JAXA宇宙科学研究所「XRISM」プロジェクトチームの田代信研究主宰者は「データを見た時は鳥肌が立つ思いで、宇宙の謎の解明に取り組める能力を示せたと感じた。世界中の研究者にXRISMのデータを使って科学成果を出してほしい」話していました。

研究者「予想外のものが出てくるのでは 今後が楽しみ」

理論宇宙物理学が専門で、「XRISM」のプロジェクトにも参加している東京都立大学の藤田裕教授は「銀河団や超新星の残骸にはガスが多く存在しており、宇宙でガスを調べることは大切なのですが、多くがX線でないと見ることができません。X線は地球の大気で吸収され、地表には届かないため、観測するには宇宙に人工衛星を打ち上げる必要がありますが、それだけの価値がある研究だと考えています」としたうえで、「X線天文学は比較的新しい分野ですが、XRISMという新たな装置を手に入れたので、ブレークスルーにつながるのではと期待しています。今までにないものが見えてくるはずなので、予想外のものが出てくるのではと今後が楽しみです」と期待を寄せていました。

「XRISM」本格運用に向け管制室では

「XRISM」を本格的に運用するためには、打ち上げ後、地球を周回する「XRISM」と通信し、搭載されている機器の調整が必要となります。

先月、神奈川県のJAXA宇宙科学研究所にある「XRISM」の“司令塔”ともいえる管制室を特別な許可を得て取材しました。

ここでは「XRISM」のシステムが正常に動いているかや、衛星の姿勢など“健康状態”を確認するため、世界中のアンテナで24時間態勢で監視しています。

衛星が地平線から出てきたあとの1回およそ10分ほどの通信で、必要なデータを受け取るほか、実際に撮影された画像などから衛星の向きなどのずれを修正していきます。

「XRISM」プロジェクトチームの田代信研究主宰者は衛星との通信を終えるとほっとした表情を浮かべ、「(衛星の軌道を)予想し、アンテナを向けて信号が入ってくると安心する。リアルな画像やスペクトルがでてきているため、まだ調整が残っているが、大変期待しています」と期待を寄せていました。

衛星から送られたデータは科学者たちが分析します。

この日は共同で開発しているNASAをはじめ、海外からも研究者が集まり、データの基準となる時刻を表すデータについて議論を交わしていました。

時刻をより正確に特定することで、観測された現象がいつ発生したかを詳しく把握でき、他のデータと重ねて分析する際にも重要な情報になります。

研究者たちは「XRISM」の時間を割り出すシステムと、時間の基準として用いられる天体を観測した結果を照合し、精度を確認していました。

担当する寺田幸功科学運用チームリーダーは「誰も見たことないような世界が見られる性能が実現できているのかを議論しました。設計通り動いているのがきちんと確認され、よい性能が見えてきていて、今後が楽しみです」と話していました。