珠洲市 医師などNGOが医療支援や捜索活動“環境は非常に劣悪”

能登半島地震を受け、石川県珠洲市には医師や看護師などからなるNGOの災害支援チームが入り、医療支援や捜索活動などを行っています。NGOが派遣した災害支援チームのプロジェクトリーダーを務める医師は「飲む物も食べる物もなく、医療だけでは救えないという状態で、これまで活動してきた避難所や災害現場の中でも非常に劣悪な環境だと言わざるをえない」などと述べ、危機感を示しました。

国内外で災害支援活動を行っている広島の国際NGO「ピースウィンズ・ジャパン」は、地震が発生した今月1日に医師や看護師などおよそ20人からなる災害支援チームを派遣し、翌日には車両とヘリコプターで珠洲市に入りました。

現地では家屋の倒壊や土砂災害、津波の被害があった地域を中心に、自衛隊や消防と連携して捜索活動を行い、災害救助犬を活用して住民の救助にあたっています。

また、珠洲市野々江町の緑丘中学校に臨時の診療所を開設し、避難生活で体調を崩した住民の診療を行っていますが、薬や医療物資の不足に加え、断水が続き、トイレが使用できないなど、衛生環境の悪化が深刻な問題になっているということです。

また、珠洲市の中でも車両が通行できず、支援に入れなかった地域には5日、初めてヘリコプターで医師と看護師を派遣できたということです。

医師らが入った珠洲市の大谷町では、「初めて医療チームが来た」という声が聞かれたということで、今後も活動の範囲を広げていきたいとしています。

ピースウィンズ・ジャパンの國田博史国内事業部長は「珠洲市では今もアクセスできずに孤立化している地域も残っており、必要な物資や水も調達できず、支援活動を行う上で非常に厳しい環境にある。高齢者が多い地域で避難生活の長期化による健康への影響も心配であり、一日でも早く生活環境を整えることが求められている」と話していました。

記録映像には薄暗い部屋で診察する様子も

珠洲市内に支援に入ったNGOの災害支援チームが今月2日に捜索活動を記録した映像には、▽崩れた家屋に閉じ込められた女性を捜索隊のメンバーが救助する様子や、▽余震が続く中で捜索隊が災害救助犬とがれきの中に人がいないか、探して回る姿が撮影されています。

また、3日に臨時の診療所を開設した市内の緑丘中学校での医療支援の様子を記録した映像からは、薄暗い部屋の中で懐中電灯を使うなどして住民の診察を行ったり、▽水が流せなくなったトイレを支援チームのメンバーが清掃したりするなど、停電や断水が支援活動にも影響を及ぼしていることが分かります。

こうした状況は5日も続いているということです。

医師「非常に劣悪な環境 災害関連死が増える懸念」

国際NGO「ピースウィンズ・ジャパン」が派遣した災害支援チームのプロジェクトリーダーを務める稲葉基高医師は「飲む物も食べる物もなく、医療だけでは救えないという状態で、これまで活動してきた避難所や災害現場の中でも非常に劣悪な環境だと言わざるをえない。きょうになってやっと少し物資が入ってきたが、最低限の生活を満たすにはとても足りておらず、解消にはまだまだ時間がかかると思う。避難所には高齢者が多く、今後、感染症などでたくさんの患者が出て救えない状態となり、災害関連死が増えることが懸念される状況だ」と危機感を示しました。

また、珠洲市の中でも車両が通行できず、支援に入れなかった地域に5日、初めてヘリコプターで医師と看護師を派遣できたということで、「これまで誰も医療チームが入っていない地域で非常に喜ばれた。孤立地域はほかにもまだあると考えられ、今後はこうした場所にも支援を広げていきたい。ただ、あす以降は天気が悪く、ヘリコプターを派遣できない可能性もあるので心配だ」と話していました。