インフルエンザ 患者数減少も再増加の懸念 被災地では対策注意

全国の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、12月24日までの1週間で1医療機関当たり23.13人となり、減少傾向が続いています。専門家は年末年始に人の移動が活発になったことで、再び増加に転じる可能性があるとして、注意を呼びかけています。

また能登半島地震で大きな揺れを観測した各県ではインフルエンザの患者が多く報告されている地域があり、専門家は、避難所での感染症対策に注意してほしいと呼びかけています。

1医療機関当たり23.13人 前週から減少

厚生労働省のまとめによりますと、12月24日までの1週間に全国およそ5000か所の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は11万4126人で、1医療機関あたりでは前の週から6.81人少ない23.13人となりました。

データをもとに推計されるこの一週間の全国の患者数はおよそ79万6000人となり、去年9月4日以降の今シーズンの累積の患者数はおよそ981万8000人と推計されています。

6道県で警報レベル超 ほか全都府県で注意報レベル超

都道府県別に見ますと、
▽宮崎県が44.43人
▽宮城県が39.05人
▽大分県が37.67人
▽北海道が36.66人
▽青森県が31.05人
▽山形県が30.51人
と、6つの道県で「警報レベル」とされる30人を超えているほか、
▼愛知県が25.48人
▼東京都が18.08人
▼大阪府が15.77人
などと、そのほかすべての都府県で「注意報レベル」の10人を超えています。

前の週と比べると、沖縄県と青森県を除く45の都道府県で減少し、全国的に減少傾向となっていますが、感染症に詳しい東邦大学の舘田一博教授は、年末年始に帰省や旅行で人の移動が活発になったことで、再び感染が広がる可能性があると指摘しています。

その上で「年末の時期に定点あたりの患者数が20人以上の高い水準になるのはこれまでになかった傾向だ。例年ならばピークとなる1月下旬に向けて、どの程度増加するのか、動向に注意する必要がある」と話しています。

専門家「新型コロナとインフルエンザの同時流行のおそれも」

感染症に詳しい東邦大学の舘田一博教授は「新型コロナウイルスの患者に増加傾向が見られ、1月から2月にかけて、再度、増加するのではないかと懸念されている。新型コロナの再増加とインフルエンザのピークが重なる可能性もあり、これからの数週間、どのように推移するのか、注意する必要がある」と述べました。

さらに「新型コロナでは入院患者が12月の時点で4500人を超えていて、特に80歳以上の高齢者が2000人を超えている。高齢者が感染すると重症化しやすいので、そうした人たちが、この流行の波を乗り越えられるよう注意していくことが大事だ」と述べました。

《被災4県は注意報レベル超える 警報レベル超える地域も》

能登半島地震で大きな揺れを観測した各県では、インフルエンザの患者が多く報告されている地域があり、専門家は避難所での感染症対策に注意してほしいと呼びかけています。

石川県、福井県、富山県、それに新潟県で12月24日までの1週間に報告されたインフルエンザの患者数です。

【石川県】

石川県では1医療機関あたりの患者数は県全体で22.69人でした。

保健所の管轄する地域ごとでは、
▽震度7を観測した志賀町、震度6強を観測した七尾市、震度6弱を観測した中能登町などを含む能登中部が30.5人
▽石川中央が26人
▽金沢市が25.71人
▽南加賀が16.1人
▽震度6強を観測した輪島市、珠洲市、穴水町、震度6弱を観測した能登町を含む能登北部が5.5でした。

【富山県】

富山県では、1医療機関あたりの患者数は、県全体で28.13人でした。

保健所の管轄する地域ごとでは、
▽砺波が34人
▽富山市が31.94人
▽高岡が25.69人
▽中部が25.6人
▽新川が19.86人でした。

【福井県】

福井県では、1医療機関あたりの患者数は、県全体で18.64人でした。

保健所の管轄する地域ごとでは、
▽丹南が30.38人
▽坂井が22人
▽福井市が18.58人
▽奥越が14.25人
▽若狭が11人
▽二州が10.6人
▽永平寺町を管轄する福井が4人でした。

【新潟県】

新潟県では、1医療機関あたりの患者数は、県全体で25.74人でした。

保健所の管轄する地域ごとでは、
▽佐渡が61.33人
▽柏崎が37.60人
▽南魚沼が35.33人
▽村上が30人
▽上越が27.25人
▽震度6弱を観測した長岡市などを含む長岡が25.85人
▽新発田が24.71人
▽十日町が23.67人
▽新潟市が23.54人
▽三条が21.5人
▽糸魚川が20人
▽魚沼が8.67人
▽新津が8.33人でした。

4県とも県全体の定点あたりの患者数は前の週から減っていましたが、いずれも「注意報レベル」の10人を超えていて、地域ごとに見ますと「警報レベル」の30人を超えているところも多くあります。

専門家「まずは避難所へ そのうえで感染対策を」

感染症に詳しい東邦大学の舘田一博教授は「避難所は人と人との距離が近く、『密』な環境になり、換気も難しいが、地震や寒さから命を守るためにも、まずは避難所に避難することが重要だ。その上で、マスクの着用や、空気の流れを少しでもよくすること、それに、可能な限り人との距離をあけて過ごすといった、できる範囲での感染対策を取って欲しい」と呼びかけています。

そして、鼻水やせき、のどの痛みといった症状が出た場合について「かかりつけの医療機関を受診できない人も多いと思うが、避難所に医療従事者がいれば早めに相談をして欲しい。また、医療支援も被災地に入り始めているので、こうしたチームの医師や看護師に相談することもできる」と話しています。