能登半島地震 企業の支援広がる 中小企業の資金繰りも

能登半島地震を受けて、企業による被災地支援の動きが広がっています。

被害を受けた地域の中小企業に対し政府系金融機関や信用保証協会では、資金繰りの支援を行います。

大手コンビニ 被災地に食料などの救援物資

大手商社の伊藤忠商事の岡藤正広会長は、報道陣の取材に対し、能登半島地震の被災地に食料などの救援物資を迅速に届けたいという考えを示しました。

伊藤忠商事の岡藤会長は、4日午前、東京 港区の本社で行われた社内の新年行事のあと、報道陣の取材に応じました。

会社によりますと、傘下の大手コンビニ、ファミリーマートは石川県内に246店舗あり、地震の影響で臨時休業を余儀なくされる店舗が相次いでいます。

復旧が進んで営業再開の店舗は増えていますが、4日午前8時の時点で、県内で休業しているのは33の店舗となっています。

岡藤会長は「北陸の3県ではファミリーマートが一番店舗数が多くなっていて特に被害の大きかった地域では、ほかにコンビニの店舗がないところもある。グループ全体をあげて孤立している方々にとにかく早く支援する態勢で臨んでいる」と述べました。

会社では国などの要請を受けて、3日から石川県内の避難所などに向けた物資の配送を始めています。

5日までに
▽パンを1万782個
▽おにぎりを3万3000個
▽ペットボトルに入った飲料水を5万5296本、
配送する予定だということです。

このほかのコンビニ大手も、国などの要請を受けて物資を順次配送しています。

このうち
▼セブン-イレブンは3日、石川県七尾市や富山県氷見市に飲料水を届けたということです。

▼ローソンは石川県内の被災地に食料のほか、生理用品やカイロなども送る予定だということです。

大手コンビニ 営業再開増えるも 一部で休業や配送の遅れ

大手コンビニエンスストアは、営業を再開する店舗が増えていますが、一部では休業や配送の遅れなどの影響が続いています。

▼コンビニ大手3社のなかで石川県内の店舗数が最も多いファミリーマートは、きょう夕方時点で石川県と富山県のあわせて35店舗で臨時休業が続いています。

道路の通行止めなどの影響で商品の配送にも一部、遅れが続いているということです。

▼セブン‐イレブンは、3日夕方の時点で石川県内の10店舗が臨時休業していましたが、4日夕方時点で七尾市の2店舗以外は営業を再開しています。

商品の配送については、高速道路の通行止めの解除などに伴って、通常の状態にほぼ回復したとしています。

▼ローソンは、臨時休業していた店舗で営業時間を短縮するなどして再開を進めています。

このうち、富山県内の小矢部桜町店の営業をけさ再開し、県内で臨時休業する店舗がなくなったほか、石川県内では、七尾光陽台店と七尾小島町店、恵寿病院店、それに羽咋中央町店で4日午後5時半までに新たに営業を再開しました。

一方、石川県では七尾市の2店舗のほか、志賀町と中能登町のそれぞれ1店舗が、断水などの影響で臨時休業を続けているということです。

大手パンメーカー 菓子パンなど現地へ

大手パンメーカー各社は、国などからの要請を受けて菓子パンなどを現地に送る支援を続けています。

▼名古屋市に本社がある「フジパン」は、3日までに3万8000個の菓子パンを現地に配送し、5日の午前中にも2万個の追加の配送を行う予定です。

フジパングループ本社の浮須裕専務取締役は、「日本の食を担う企業として、非常時に困っている方にパンを支援するのは当然という考えでやっている。20%ほど人手を増員して生産体制を整え、今後も1週間ほどは追加で提供できるよう準備をしている」と話しています。

▼山崎製パンは、3日までの分として菓子パンなど4万7700個を現地に配送しましたが、5日も追加で4万個、10トントラックで2台分を配送する準備を進めているということです。

通常は、名古屋市内にある工場から富山県にある北陸地方の配送拠点を経由していますが、今回は、直接、石川県に配送する対応をとっています。

▼名古屋市に本社がある「敷島製パン」は、これまでに3万2500個のパンを現地に配送しました。

5日にも追加で2万個を配送できるよう生産体制を整えているということです。

各社が配送したパンは、いずれも金沢市内の拠点に集められたあと、それぞれの避難所などに届けられるということです。

電気自動車を電源用に貸し出し 自動車メーカー

避難所などの電源用として、EV=電気自動車を自動車メーカーが自治体に貸し出す支援が行われています。

日産自動車は、石川県からの要請を受けて地元の販売店を通じて穴水町にEV1台を貸し出しました。

具体的な設置場所は自治体が決めるということです。

会社によりますと、EV1台のバッテリーで一般家庭で数日分の電気を賄うことができるということです。

会社では、ほかの自治体からも要請があれば今後、貸し出しを検討することにしています。

資金繰り支援 政府系金融機関・信用保証協会

能登半島地震で被害を受けた地域の中小企業に対し、政府系金融機関や信用保証協会では、資金繰りの支援を行います。

▼日本政策金融公庫 ▼商工中金=商工組合中央金庫
「災害復旧貸付」として復旧に必要な資金を通常の融資とは別枠で1億5000万円を上限に貸し付けます。

▼信用保証協会
中小企業が金融機関から復旧資金の融資を受ける際に2億8000万円を限度に返済を100%保証する、「セーフティネット保証4号」と呼ばれる特別措置を実施します。

また、これらの金融機関では、特別相談窓口を設置して被災した中小企業を対象に、新たな融資や返済の延期などに関する相談を受け付けます。

対象となるのは、災害救助法が適用された新潟県、富山県、石川県、福井県の各市町村の中小企業や小規模事業者です。

商工会議所 中小企業の資金繰りなどの相談に応じる窓口設置

今回の地震を受けて日本商工会議所は、石川県、富山県、新潟県、福井県の4つの県内にあるすべての商工会議所で中小企業の資金繰りなどの相談に応じる窓口を4日設置しました。

「特別相談窓口」は中小企業庁の要請を受けたもので、石川県、富山県、新潟県、福井県の4つの県内にある合わせて38か所のすべての商工会議所に窓口が設置されます。

ただ、珠洲、輪島、七尾、氷見など大きな被害が出ている地域の商工会議所については復旧の状況に応じて設置するとしています。

窓口では、中小企業や小規模事業者の資金繰りなどについて相談に応じ、政府の支援策や商工会議所が行う融資などについて紹介します。

日本商工会議所では4県の商工会議所への経営指導員の派遣について調整を行うほか、現場の声を踏まえて国に要望するなどの対応を行うということです。

ゆうちょ銀行・かんぽ生命の対応

▼「ゆうちょ銀行」は今回の地震で被害を受けた人に対し、通帳や印鑑、キャッシュカードがない場合でも本人確認ができれば窓口で貯金などの払い戻しに応じます。

4日から2月5日までの期間、窓口業務を行っている全国の郵便局とゆうちょ銀行の店舗で、1人当たり20万円まで払い戻しに応じます。

▼「かんぽ生命」は、保険証券などの必要な書類がなくても保険金の支払いに応じるほか、保険料の支払いについても最長で6か月間猶予するとしています。

ただ、日本郵便では現在、石川県の
▽七尾市
▽輪島市
▽珠洲市
▽志賀町
▽中能登町
▽穴水町
▽能登町にある107すべての郵便局を含む
新潟市と石川県のあわせて115の郵便局で窓口業務を停止していて、この郵便局ではゆうちょ銀行とかんぽ生命の窓口業務も停止しています。

ゆうちょ銀行とかんぽ生命の今回の取り扱いの対象となるのは、現在、災害救助法が適用されている
▽新潟県
▽富山県
▽石川県
▽福井県の一部の自治体で、今後、適用地域が広がった場合にも同じ対応を行うということです。

生命保険各社 保険料の支払い猶予へ

生命保険各社は、災害救助法の適用が決まった石川県、新潟県、富山県、福井県の自治体の被災者を対象に、保険料の支払いを最長で6か月、猶予することになりました。

また、保険金などの速やかな支払いに向け、必要な書類を一部省略するとしています。

このほか、生命保険協会として「契約していた生命保険会社が分からない」などといった相談にも、フリーダイヤルで応じることにしています。

電話番号は、0120-001731で、平日の午前9時から午後5時まで受け付けるということです。

ふるさと納税で支援も

ふるさと納税の仲介サイトでは今回の地震で大きな被害を受けている自治体を支援しようと特設ページを設けています。

「さとふる」「ふるさとチョイス」「楽天ふるさと納税」「ふるなび」の4つの仲介サイトは特設ページを設け、自治体から返礼品を受け取らないかたちでの寄付もできることを紹介し、ふるさと納税を通じた自治体への支援を呼びかけています。

このうち「さとふる」は、2日特設ページを設けて以降、4日午後7時の時点で、寄付総額は合わせて1億700万円余りになっているということです。

このほか、通信大手やコンビニ大手など企業の間では、義援金の受け付けを始める支援も広がっています。