連合会長 春闘 賃上げ広げるため価格転嫁の必要性訴える考え

物価高騰が続く中、ことしの春闘では持続的な賃上げの流れを作れるかが焦点です。連合の芳野会長がNHKのインタビューに応じ、地方や中小企業まで賃上げを広げるため、価格転嫁の必要性を訴えていく考えを示しました。

ことしの春闘で連合はベースアップ相当分として3%以上、定期昇給分をあわせて5%以上と、およそ30年ぶりの高い水準となった去年を上回る賃上げを求める方針を決めています。

芳野会長はNHKのインタビューで、「ことしの春闘は物価上昇に負けない賃上げを実現していくことが鍵になる。海外のほうが賃金が高いことで若い人たちが流出したり、日本で働く外国人が少なくなっていたりすることに非常に危機感を感じる。社会で問題意識を共有し、単年度にとどまらない持続的な賃上げが必要で、経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会への転換の正念場だ」と述べ、ことしの春闘の重要性を強調しました。

そして、中小企業の賃上げができるかがポイントになるとしたうえで、「原資がなければ賃上げは難しく、人件費などを含む価格転嫁ができるかが鍵になる。ただ、現場からは取引先がなかなか価格交渉に応じてくれないといった声も寄せられている。大企業に対してはトップだけでなく調達部門まで価格転嫁の取り組みを落とし込み、中小企業に対しては正々堂々と交渉するよう強く訴えていきたい」と述べました。

また、ことしは都道府県ごとに開かれる政労使会議で地域の実情に合わせた議論を行うことで、賃上げの機運を地方や中小企業まで広げていく考えを示しました。

春闘は今月下旬に事実上スタートし、3月にかけて交渉が本格化します。

《Q&A》賃上げの要求方針のねらいや交渉で重視すること

連合の芳野会長に賃上げの要求方針のねらいや交渉で重視することを聞きました。

【春闘控え 今の状況は】
Q.春闘を前に今、働く人たちが置かれている状況をどのように捉えているか。
A.物価の上昇で食事の品数を減らしたり、子どもの教育費を見直したりしているなど生活が苦しくなってきているという声を多く聞く。ことしの春闘では物価上昇に負けない賃上げを実現していくことが鍵になる。

【海外と比較して日本の賃金水準は】
Q.海外と比較して、日本の賃金水準をどう見るか。
A.国際的に見ても、日本の賃金水準が見劣りしていることが課題だ。海外のほうが賃金が高いため、若い人たちが流出したり日本で働く外国人が少なくなったりしていることに非常に危機感を抱いている。

【“5%以上”賃上げ要求のねらいは】
Q.ことしの春闘では定期昇給分をあわせて5%以上の賃上げを求める方針を決めたが、そのねらいは。
A.去年の春闘では高い水準の賃上げの結果を出せたが、物価上昇の影響で結果的に実質賃金はマイナスが続いている。そのため、今回は賃上げの最低ラインを5%に設定した。ことしは「経済」も「賃金」も「物価」も安定的に上昇する経済社会への転換の正念場で、社会全体で問題意識を共有し、単年度の賃上げにとどまらず、持続的な賃上げが必要だと訴えていきたい。

【中小企業含めてどう賃上げ実現する】
Q.中小企業まで賃上げの流れをどうやって波及させようと考えているか。
A.賃上げは原資がなければ行うのは難しく、労務費(人件費)を含めた価格転嫁を行うことが求められている。ただ、現状では、現場の中小企業からは取引先になかなか価格交渉に応じてもらえないなどの声も寄せられている。大企業に対してはトップだけでなく調達部門の担当者まで価格転嫁の取り組みを落とし込み、そして、中小企業や小規模事業者に対しては価格交渉を正々堂々行ってほしいと強く訴えていきたい。

【地方を含めて機運醸成にどう取り組むか】
Q.地方を含めて賃上げの実現に向けてどう機運醸成に取り組むか。
A.去年と同じことをやっていては先に進めないと思っている。ことしは地方や中小企業がどれだけ賃上げをできるかがポイントで、政府に対して、全国で都道府県単位の地方版の政労使会議を開くよう要請してきた。その会議が開催されることが決まったので、その場でそれぞれの地域の実情に合わせた意見交換を行いたい。また、全国津々浦々で決起集会や街頭宣伝行動を行い、地方で賃上げの機運醸成に向けての取り組みを強化していきたい。

【手応えと今後は】
Q.今の手応えと今後については。
A.ことしは労務費を含めた価格転嫁が重要だということなどを訴えているが、街頭宣伝行動などに加盟組合の人たちがたくさん来ていて、非常に注目されていて、去年以上にすごくやる気がみなぎっているように見える。去年を上回る賃上げを実現できるよう力を入れて取り組んでいきたい。