【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(12月30日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる30日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシアのウクライナ大規模攻撃 “今後も続く” 米シンクタンク

ウクライナ軍の参謀本部は30日、前日に行われたロシア軍によるウクライナ全土への大規模な攻撃について、発射されたミサイルは150発、空爆は74回に上ったと発表しました。

ウクライナ内務省はこの攻撃で30人が死亡、160人以上がけがをしたとしていて、ウクライナ空軍の司令官は軍事侵攻の開始以降、最大規模の攻撃だったとしています。

これについてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は29日、分析を発表し「ロシア側が数か月かけて、無人機とミサイルによる攻撃を組み合わせてウクライナ側の防空能力を見定めた知見をもとにした攻撃だったとみられる」としています。

そして、ロシアの現時点のミサイルや無人機の備蓄や生産能力ではロシア軍がミサイルによる大規模な攻撃を定期的に行うことはできないだろうとした一方で、無人機による攻撃は頻繁に行われるとして、ウクライナの士気と戦闘を続ける能力を低下させるために、大規模な攻撃を今後も続けるとの分析をしています。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は「テロリストの攻撃には必ず反撃する」としていて、ロシア軍は30日、ウクライナから無人機による攻撃を受け、32機を迎撃したとしています。

ポーランドの領空にロシアのミサイルか 飛しょう体が侵入

ポーランドの軍幹部は、ロシアによる大規模な攻撃が行われた29日、ロシアのミサイルと見られる飛しょう体1発が領空に侵入したと明らかにしました。

それによりますと、飛しょう体は、ポーランド東部の領空をおよそ40キロメートル、3分弱にわたって飛行したあと、ウクライナの領空に入ったと見られ、その間、ポーランド軍はレーダーで追尾するなどして対応し、迎撃はしなかったということです。

事態を受け、ドゥダ大統領は、国防省の高官などを集めて安全保障に関する緊急の会合を開き、対応を協議しました。

ポーランドは、集団防衛の枠組みであるNATOに加盟していて、去年11月には領内にミサイルが着弾して2人が死亡し、NATO加盟国の間で緊張が高まっていました。

アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は29日、ポーランドのシエビエラ国家安全保障局長官と電話で会談し、アメリカ側の発表によりますとこの中でサリバン補佐官はNATO加盟国であるポーランドとの連帯を表明するとともにバイデン大統領も事態を注視していると伝えたということです。

またNATOのストルテンベルグ事務総長はSNSで、ドゥダ大統領と話したことを明らかにした上で「NATOは大切な同盟国と連帯し、状況を注視するとともに、緊密に連絡を取り合う。今後も警戒態勢をとり続ける」と書き込み、NATOとして一致して対応する構えを強調しました。

国連安保理で緊急会合 ロシア軍による大規模攻撃で

国連安保理の緊急会合は29日、日本時間の30日朝、ウクライナやアメリカなどの要請で開かれました。

各国からは、住宅や病院、それに学校など民間施設を狙った攻撃だとしてロシアを非難する意見が相次ぎ、このうちイギリスのウッドワード国連大使は「ミサイルはウクライナ全土の人口密集地を狙ったものだ」と指摘したほか、アルバニアのホッジャ国連大使は「ロシアのねらいは、ウクライナを破壊し、国民を恐怖に陥れ、服従させることだ」と強く非難しました。

また、日本の山崎国連大使は「残虐行為の責任は問われなければならない。ロシアには、侵略をやめ、完全かつ無条件に軍を撤収させることを改めて求める」と迫りました。

これに対してロシアのネベンジャ国連大使は、ロシア軍が攻撃したのはウクライナの軍事施設で、民間施設に命中したのは、コースをはずれたウクライナ側の対空ミサイルだなどと主張した上で、「ウクライナの軍事的勝利は絶対に実現不可能だ」と述べて軍事作戦を改めて正当化しました。

ポーランド 国連大使「挑発行為 直ちにやめるよう求める」

一方、安保理の緊急会合に出席したポーランドのシュチェルスキ国連大使は、「ロシアのミサイルがポーランドの領空を侵犯するという重大な事件があった」と述べました。その上で「われわれはこの事件について同盟国と協議を行っている。ロシアに対し、領空侵犯について説明するよう求めるとともに、こうした挑発行為を直ちにやめるよう求める」と述べました。

“最大規模の攻撃”に非難相次ぐ

ロシア軍がウクライナに軍事侵攻の開始以降、最大規模とされる攻撃を行ったことをうけてEU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表は29日、SNSに「学校や地下鉄の駅、病院をねらった卑劣で無差別な攻撃だった。EUは必要なかぎりウクライナと共にある」と投稿し、ロシアを強く非難しました。

また、国連人権高等弁務官事務所のトップ、ターク人権高等弁務官もコメントを発表し「国際人道法は、いかなる状況においても、無差別攻撃や民間施設を意図的にねらった攻撃を明確に禁止している」として、ロシアに対し、国際法を順守し攻撃を直ちにやめるよう求めました。

さらに、イギリスのスナク首相は、SNSに「私たちはロシアのプーチン大統領を勝たせない。必要なかぎり、ウクライナを支え続けなければならない」と投稿したほか、ウクライナの隣国、モルドバのサンドゥ大統領も「きょうの攻撃はウクライナの防空能力を直ちに強化する必要があることを強く示している」と書き込み、ウクライナへの一層の支援の必要性を訴えました。

米バイデン大統領「プーチン大統領を止めなければならない」

アメリカのバイデン大統領は29日声明を発表し「2年近くにわたる侵攻を経てもプーチン大統領の目標が変わっていないことを世界に知らしめるものだ。彼はウクライナを破壊し、その国民を服従させようとしている。彼を止めなければならない」と強く非難しました。

そのうえで「同盟国や友好国、ウクライナを失望させることはできない」として、ウクライナへの軍事支援の必要性を強調し、アメリカ国内で与野党の対立から軍事支援の継続に必要な予算が承認されるめどがたたない中、議会に対応を急ぐよう改めて求めました。

国連事務総長「最も強い言葉で非難する」

国連のグテーレス事務総長は29日声明を出し「ロシアがウクライナ全土の都市の民間インフラなどに対して、一夜にして大規模な攻撃を行ったことを最も強い言葉で非難する」として、ロシアを強く非難しました。そのうえで「民間人や民間インフラに対する攻撃は、国際人道法違反であり容認できず、直ちにやめなければならない」と強調しました。

ウクライナ外相「爆発音が世界中に伝わってほしい」

ロシアによる29日の大規模な攻撃について、ウクライナのクレバ外相はSNSに「きょうは何百万人ものウクライナ人が大きな爆発音で目を覚ました。この爆発音が世界中の人たちにも伝わってほしい」と投稿しました。

クレバ外相は、爆発音が、ウクライナへの追加支援を議論している各国の政府や議会、それにメディアなどにも伝わってほしいとしたうえで「ロシアのテロを黙らせることができるのはより大きな火力だけだ」として軍事支援の継続を求めました。

ロシア軍が各都市に攻撃 ウクライナ“軍事侵攻以降で最大規模”

ウクライナ空軍は29日、ロシア軍が、36機の無人機と、少なくともあわせて120発以上のミサイルで各地に攻撃を仕掛け、このうち無人機27機とミサイル87発を迎撃したと発表しました。

しかし、首都キーウをはじめ、東部の都市ドニプロやハルキウ、西部のリビウや南部のオデーサなど各地で、住宅や病院、商業施設などへの被害が報告され、ウクライナのクリメンコ内相によりますと、これまでに30人が死亡、160人以上がけがをしたということです。

首都キーウでは、少なくとも4つの地域で建物が被害を受け、中心部にあるオフィスなどが入ったビルでは、ガラス張りの壁面などが激しく壊れ、ガラスの破片やがれきが散乱していました。

ウクライナ空軍の司令官は「過去最大規模の空からの攻撃だ」とSNSに投稿し、ゼレンスキー大統領は「必ず反撃する」と強調しました。

一方、ロシア国防省は、大規模な攻撃を行い、すべての標的に損害を与えたと主張し、ロシアが一方的に併合した南部クリミアで今月26日にロシア軍の大型揚陸艦がウクライナによるミサイル攻撃で破壊されたことへの報復だとする見方も出ています。