【27日詳細】“ハンユニスで空爆 20人死亡” ガザ地区保健当局

ガザ地区への地上侵攻を続けるイスラエル軍は、一日でイスラム組織ハマスの100以上の標的に空爆を行ったと発表するなど攻勢を強めています。ガザ地区の保健当局の報道官は27日、南部ハンユニスの住宅が空爆され、これまでに20人の死亡が確認されたと発表しました。犠牲者は増えるおそれがあるとしています。

イスラエルやパレスチナに関する日本時間12月27日の動きを、随時更新してお伝えします。

“ハンユニスの住宅が空爆 20人死亡” ガザ地区保健当局発表

ガザ地区の保健当局の報道官は27日、南部ハンユニスの住宅が空爆され、これまでに20人の死亡が確認されたと発表しました。

犠牲者は増えるおそれがあるとしています。

イスラエル軍はハンユニスにハマスの指導部が潜伏しているとみて攻勢を強めていて、SNSでは27日も朝から激しい空爆が行われていると伝えられています。

空爆を受けた建物は病院のすぐ近くにあるということです。

イスラエル軍 地上侵攻 ガザ地区中部にも拡大

イスラエル軍は、ガザ地区中部にある難民キャンプ内に、イスラム組織ハマスの施設があるとして攻撃を始めました。

地上侵攻を中部にも拡大したことで今後、犠牲者がさらに増えることが懸念されます。

イスラエル軍のハガリ報道官は26日、軍の部隊が地上侵攻をガザ地区中部に新たに拡大したと発表しました。

軍はホームページで現地にあるブレイジ難民キャンプ内のハマスの施設に対して攻撃を始めたと明らかにし、攻撃に先立ち、この難民キャンプを含むガザ地区中部の住民に対し、退避するよう通告を出しました。

ロイター通信が配信した映像では荷物を抱えた住民たちが道を歩いている様子が写っていて、「私たちは追い出された」と話す人もいました。

イスラエル軍はガザ地区北部をほぼ制圧し、ハマスの指導部が潜伏しているとみて南部ハンユニスなどで攻勢を強めていました。

ガザ地区中部では、24日、別の難民キャンプでイスラエル軍の空爆があり、ガザ地区の保健当局はこれまでに68人が死亡したと発表していて、中部にも地上侵攻が拡大されたことで今後、犠牲者がさらに増えることが懸念されます。

こうしたなか、国連の国内避難民担当の特別報告者は今月22日に発表した声明の中で、「退避命令と軍事作戦が拡大し続け、市民が日常的に容赦ない攻撃にさらされている。

イスラエルの軍事作戦は、大多数の市民を一斉に追放することを目的としているとしか考えられない」と指摘するなど国際社会の批判はいっそう強まっています。

“デルメル戦略問題相 ブリンケン国務長官らと会談” 米メディア

アメリカのCNNテレビは、イスラエルのネタニヤフ首相の側近の1人とされる、デルメル戦略問題相がアメリカを訪れ、26日、ブリンケン国務長官やホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官と会談したと伝えました。

会談の具体的な内容は明らかになっていませんが、アメリカ政府当局者の話として、イスラエル軍の大規模な軍事作戦を、より標的を絞ったものに移行することや人質の解放に加えて、戦闘終結後のガザ地区の統治についても協議が行われたとしています。

イスラエル軍 ハレビ参謀総長「戦争は何か月も続く」

イスラエル軍のトップのハレビ参謀総長は26日、声明を発表し「この戦争の目的を達成するのは簡単ではない。戦いは複雑な地域で起こっている。戦争は何か月も続くだろう。われわれは戦果を維持するために、さまざまな方法で作戦を展開する」と述べ、戦闘の長期化も辞さない構えを示しました。

その上で「テロ組織の根本的な解体のためには、魔法のような解決策や近道はなく、断固とした粘り強い戦いしかない。1週間かかろうが数か月かかろうが、われわれはハマス指導部にも到達する」と述べ、イスラム組織ハマスの壊滅に向け戦闘を継続する考えを改めて強調しました。

フーシ派 コンテナ船にミサイル攻撃

イエメンの反政府勢力フーシ派は紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返していて、26日もコンテナ船に対してミサイル攻撃を行ったと発表しました。

海運大手各社は紅海のう回を余儀なくされていて、これまでに185隻がルート変更などの影響を受けたとの調査もあり、物流の混乱なども懸念されています。

イエメンの反政府勢力フーシ派はガザ地区のイスラム組織ハマスとの連帯を掲げ、ガザ地区に十分な支援物資が行き届かないかぎり、イスラエル本土への攻撃や、紅海を航行するイスラエルに関係する船舶への攻撃を続けると主張しています。

スイスの海運大手MSCは、26日、サウジアラビアからパキスタンに向かっていたコンテナ船が、紅海を航行中に攻撃を受けたと発表し、フーシ派の報道官も巡航ミサイルでこの商船に攻撃を行ったことを認めました。

海運大手各社は紅海やスエズ運河を経由した輸送を避けてう回する対応を余儀なくされていて、アメリカの物流調査会社プロジェクト44によりますと、26日時点で、影響を受けた船の数は推計で185隻に上るということです。

このうち157隻がアフリカの喜望峰を回るルートに変更し、大多数の船は輸送の日数が7日から20日ほど追加でかかるとしています。また、速度を上げるため燃料の消費が増え、輸送コストも上昇していると分析しています。

船舶の移動がスムーズにいかなくなると物流の混乱なども懸念されています。

こうした中、アメリカ中央軍は、紅海の南部で、26日早朝からの10時間にフーシ派によって発射された無人機12機、弾道ミサイル3発、それに巡航ミサイル2発を撃墜したと発表しました。付近を航行中の船舶への被害はなく、けが人も報告されていないとしています。

アメリカは有志連合を創設し、各国の海軍とともにこの海域の航行の安全を守ろうと対策を急いでいます。

フーシ派による相次ぐ攻撃でコンテナ船の運賃上昇

紅海でイエメンの反政府勢力フーシ派による攻撃が相次ぐなか、海運大手各社のコンテナ船の運賃は上昇しています。

イギリスの物流調査会社、「ドリューリー」によりますと、40フィートのコンテナ1個あたりの運賃は、12月21日の時点で1661ドルで、前の週と比べて9%上昇したということです。

航路別に見ますと
▽中国の上海とオランダのロッテルダムを結ぶ航路では前の週と比べて16%上昇、
▽上海とイタリアのジェノバを結ぶ航路では15%の上昇となっています。

コンテナ船の運賃はコロナ禍から経済が正常化する過程では世界的に物流が混乱し、高騰していましたが、2023年に入ってからは落ち着きを取り戻しつつありました。

しかし、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が始まった10月以降は運賃は再び値上がり傾向となっていました。

衝突が始まる直前の10月5日時点と12月21日時点を比べた運賃の上昇率は
▽上海とロッテルダムを結ぶ航路で62%、また、スエズ運河を通らない
▽上海とニューヨークを結ぶ航路でも14%となります。

情報会社は、紅海やスエズ運河周辺の情勢次第では今後、数週間は、さらなる運賃の上昇も予想されるとしています。

イスラエル軍 ヒズボラとの戦闘など多方面に対応し続ける

イスラエル軍は26日、ガザ地区全体で前日からの一日でハマスの部隊や拠点など100以上の標的に空爆を行い、地区の北部でも多数のハマスの戦闘員を殺害したとしています。

これに対して、ハマスもガザ地区の中部や北部でイスラエル軍の部隊を攻撃したとする動画を公開し徹底抗戦の構えを崩していません。

ガザ地区の保健当局は26日過去24時間に241人が死亡し、これまでの死者は2万915人にのぼったとしています。

一方、イスラエル軍は、イスラエル北部でもレバノンのシーア派組織ヒズボラとの戦闘を続けていて、26日にはヒズボラからの攻撃があり、国境沿いの村で兵士9人が負傷したと発表しました。

これに対してイスラエル軍もレバノンにあるヒズボラの拠点を空爆するなどイスラエル北部でも緊張状態が続いています。

さらにイエメンの反政府勢力フーシ派がイスラエルに関係するとして紅海を航行する船舶への攻撃などを続けていて、イスラエルは多方面での対応を余儀なくされています。

こうした中イスラエルのガラント国防相は26日、議会の外交・防衛委員会で「イスラエルは多方面で戦争を続けていて、われわれに対して敵対行為をする者は標的になり得るだろう。強い者が生き残る戦いだ」と述べ、多方面に対応し続ける考えを強調しました。

国連事務総長 ガザ地区の人道復興上級調整官を任命

国連のグテーレス事務総長は26日、人道状況が悪化するパレスチナのガザ地区で支援物資の監視や調整などにあたる国連の人道復興上級調整官に、国連機関の高官や、オランダで閣僚の経験のあるシグリット・カーフ氏を任命したと発表しました。

今回の任命は、今月22日に採択された国連安全保障理事会の決議に基づくものです。

オランダなどのメディアによりますと、カーフ氏は、オランダの副首相兼財務相を辞任して来月8日から国連の上級調整官の任務を始める予定だということです。

国連の上級調整官が、ガザ地区への支援物資の搬入を増やすために活動することで、現地の人道状況の改善につながることが期待されています。

バイデン大統領の対応 若い世代7割が「支持しない」

パレスチナのガザ地区でイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続く中、アメリカの世論調査でバイデン大統領の対応について尋ねたところ、若い世代では「支持しない」と答えた人が7割にのぼりました。

有力紙「ニューヨーク・タイムズ」はシエナ大学とともに、今月10日から14日にかけて、およそ1000人の有権者を対象に世論調査を行いました。

それによりますと、イスラエルとパレスチナの対立について「バイデン大統領の対応を支持するか」という質問に対し、「支持しない」が57%で「支持する」の33%を上回りました。

年齢別に見ると
▽65歳以上では「支持する」が52%「支持しない」が41%だった一方、▽18歳から29歳までの若い世代では「支持する」が20%「支持しない」が72%と、「支持しない」が大きく上回りました。

また、イスラエルとパレスチナのどちらに共感するかという質問では
▽65歳以上では「イスラエル」が63%「パレスチナ」が11%だったのに対し
▽18歳から29歳までの若い世代では「イスラエル」が27%「パレスチナ」が46%となりました。

ニューヨーク・タイムズは「イスラエルとパレスチナの75年間にわたる対立について、さまざまな年齢層が経験してきたことや、若者がSNSで、殺害されたパレスチナ人の残酷な画像などを目にしていることが、世代間の差としてあらわれている」と分析しています。