ボクシング 井上尚弥 2階級 主要4団体の王座統一 史上2人目

プロボクシングの井上尚弥選手が26日夜、都内で行われたスーパーバンタム級の4団体王座統一戦で10ラウンド、ノックアウト勝ちし、史上2人目となる2階級での主要4団体の王座統一を成し遂げました。

井上尚弥 KO勝ちで史上2人目 2階級4団体王座統一

井上選手は去年、バンタム級で日本選手で初めてとなる4団体王座統一を果たし、ことしはスーパーバンタム級に階級を上げて、WBC=世界ボクシング評議会、WBO=世界ボクシング機構の2団体統一チャンピオンになっていました。

そして、26日夜はWBA=世界ボクシング協会、IBF=国際ボクシング連盟で同じ階級の2団体統一チャンピオンであるフィリピンのマーロン・タパレス選手と、東京の有明アリーナで4団体王座統一をかけて対戦しました。

井上選手は序盤、ガードを固めるタパレス選手に対し攻めあぐねる場面もありましたが第4ラウンドに左のフックで顔面を捉えたあと、ロープ際に追い詰めて連打を浴びせて、この試合初めてのダウンを奪いました。

中盤はアッパーなどを打ち込まれたものの、ワンツーのコンビネーションやボディーへのパンチで主導権を手放さず、第10ラウンドに力のある右のストレートで2回目のダウンを奪いました。

そして井上選手は10ラウンド1分2秒でノックアウト勝ちを収め、史上2人目となる2階級での4団体王座統一を成し遂げました。

井上尚弥「この階級でもっと強い姿を」

史上2人目となる4団体王座統一を果たした井上尚弥選手は「階級を1つ上げてこうして4本のベルトを集めることができたのもみなさんの応援や関係者のおかげだ。今の適正階級はスーパーバンタム級だと思っている。この階級でもっと強い姿を見せられるように精進したい」と笑顔で話しました。

対戦相手のタパレス選手については「非常にタフで気持ちの強い選手だった。戦っていて1発のパンチもあったし、ヒリヒリしながら試合を進めることができた。そんな選手に勝つことができてやってきたことが証明されてほっとしている」と話しました。

ノックアウト勝ちを収めた場面については「ポイントでリードしているのは感覚的につかんでいたが、ポーカーフェイスだったので崩れたときにはびっくりした」と振り返りました。

今後については「みなさんが喜ぶ試合を実現していきたいので、どんどん声を上げてもらいたい」とファンに呼びかけていました。

【解説】“適正階級”でも4団体統一

史上2人目の快挙を成し遂げた井上尚弥選手。減量苦に悩まされないスーパーバンタム級では、わずか2試合で4団体統一を果たし「適正階級」であることを証明しました。

階級を上げた効果の1つが練習量の増加でした。

筋肉が落ちるほど減量に苦しんでいたバンタム級では試合目前の時期には体重を落とす練習を優先するためスパーリングを60ラウンドほどしか実施できませんでした。

しかし、今回の対戦相手となったタパレス選手は破壊力のあるパンチを持ち味に番狂わせをたびたび起こし「ナイトメア」=「悪夢」と呼ばれる実力者。今回も「井上選手が優位」と各方面から伝えられる中、大橋秀行会長は同じフィリピンの英雄で史上2人目の6階級制覇を成し遂げたマニー・パッキャオさんに似ていると指摘。井上選手も「タパレスは器用で何でもできる選手」と警戒感を強めていました。

そこで、周囲の楽勝ムードを振り払おうと、試合に向けては過去最多という、通算116ラウンドのスパーリングを実施し、タイプの違う4人の海外選手と手合わせをして対策を練るなど「試合のための練習」を重ねることができたということです。

また、試合でも階級を上げたことで井上選手の真価が発揮されました。

攻撃ではガードを固めるタパレス選手に対して破壊力のあるパンチを繰り返し、粘り強く相手にダメージを与えて10ラウンドでのノックアウト勝ちにつなげました。守備では「一発のパンチもあったし、非常にピリピリして試合を進めた」と振り返りましたが、階級を上げたことでも持ち味のスピードは健在で、有効打をもらいませんでした。

タパレス選手も「追いつけず、タイミングを合わせることができなかった」と脱帽するほどでした。

試合後「適正階級はスーパーバンタム級だと思っている。この階級でもっと強い姿を見せられるように精進したい」と振り返った井上選手。4団体統一を果たしてもなお「適正階級」でさらなる進化を追い求めます。

《井上尚弥とは》

井上尚弥選手は神奈川県出身の30歳。父親の真吾さんの影響で6歳からボクシングを始めました。高校生の時に全日本選手権を制するなどアマチュアのタイトル7冠を達成して注目を集め、高校卒業後の2012年、19歳でプロデビューしました。

破壊力のあるパンチを持ち味に勝利を重ね、2014年にはプロ6戦目でライトフライ級の世界チャンピオンとなり、その後、スーパーフライ級とバンタム級でも世界チャンピオンに輝きました。

2019年には団体の枠を超えてその階級で最も強い選手を決める大会、「ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ」のバンタム級決勝で5階級制覇の経験があるフィリピンのノニト・ドネア選手に判定勝ちを収めて優勝しました。

そして、アメリカで権威のあるボクシング専門誌「ザ・リング」が選ぶ、すべての階級を通じて最も強い選手を決めるランキング「パウンド・フォー・パウンド」で日本選手として初めて1位になり、去年12月には日本選手で初めて4団体王座統一をバンタム級で成し遂げました。

そして2階級での4団体統一を目指すため、ことし1月にベルトをすべて返上して1つ上のスーパーバンタム級に階級を上げました。

その初戦として、ことし7月にWBCとWBOの2団体統一チャンピオンで、アメリカのスティーブン・フルトン選手とタイトルマッチで対戦し、テクニカルノックアウト勝ちして日本の男子選手として2人目となる4階級制覇を果たしました。

プロでの成績は26日夜の試合まで25戦全勝でこのうち、22試合でノックアウト勝ちを収めていました。

「4団体王座統一」はこれまで9人

プロボクシングの「4団体王座統一」は
▽WBA=世界ボクシング協会
▽WBC=世界ボクシング評議会
▽IBF=国際ボクシング連盟
▽WBO=世界ボクシング機構の、
世界チャンピオンを認定する主な4つの団体すべてで王座を獲得することです。

去年、バンタム級で達成した井上尚弥選手を含めて、これまでに9人が成し遂げています。

2階級で4団体統一を果たしたのはこれまで、ことし7月にスーパーライト級に続いてウエルター級でも達成したアメリカのテレンス・クロフォード選手のただ1人でした。