イスラエル軍“ハマスの100以上標的に空爆” ハマスは徹底抗戦

ガザ地区への地上侵攻を続けるイスラエル軍は、一日でイスラム組織ハマスの100以上の標的に空爆を行ったと発表するなど攻勢を強めています。これに対し、ハマス側はゲリラ戦による徹底抗戦の構えを見せていて、市民の犠牲が増え続けています。

イスラエル軍は26日、ガザ地区全体で前日からの一日でハマスの部隊や拠点、それに地下トンネルの出入り口など100以上の標的に対し空爆を行ったと発表しました。

このうち、ハマスの指導部が潜伏しているとみて攻勢を強める南部のハンユニスでは、
▽地上部隊を援護するため10人以上のハマスの戦闘員を空爆で殺害したほか、
▽武器を保管する軍事拠点に向かう戦闘員を拠点ごと攻撃したなどとして空爆の様子の映像を公開しました。

これに対しハマス側は、イスラエル軍が制圧を進める北部のジャバリアで戦闘員が市街地の建物の陰に隠れながら軍の戦車に近づき、爆発物を仕掛けようとするなど、ゲリラ戦による徹底抗戦の構えを見せています。

ガザ地区の保健当局は25日、過去24時間に250人が死亡し、これまでの死者は2万674人に上ったと明らかにしていて、戦闘休止の見通しが立たない中、犠牲者が増え続けています。

一方、ネタニヤフ首相は25日、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿し、和平を実現するための条件として
▽ハマスの壊滅、
▽ガザ地区の非武装化、
それに
▽ガザ地区の脱過激化の3つを挙げました。

ネタニヤフ首相としては、アメリカなど関係国が戦闘休止に向けた働きかけを続けるなか、軍事作戦を継続する正当性を強調するねらいがあるとみられます。

専門家「イスラエルは追い詰められた状態」

ガザ地区の戦況について、イスラエル・パレスチナ情勢に詳しい東京大学中東地域研究センターの鈴木啓之特任准教授は、イスラエル軍は戦闘休止後の南部への地上部隊の展開を経て、ガザ地区をほぼ制圧したと分析しています。そのうえで、人質の奪還やハマス幹部の捜索のため南北それぞれで軍事作戦を続けているという見方を示しました。

鈴木特任准教授は「イスラエルとしては人質を解放できず、ハマス幹部を殺害するなどの成果をあげることもできず、落としどころを探しあぐねている。このため軍事行動を強化する姿勢を示さなければならないという、いわば追い詰められた状態だ」と指摘しました。

また、先月下旬に続く新たな戦闘の休止に向けては「ハマス側は、イスラエルの空爆により人質が行方不明になったと主張していて、戦闘休止と引き換えに解放できる人質の数が限られている。イスラエル側は前回よりも譲歩した形で戦闘休止に応じれば、政権内に動揺を招きかねない」と述べ、交渉は容易ではないとの見方を示しました。

今後のイスラエルの出方について鈴木特任准教授は「戦闘の強化を宣言しても実際に可能かどうかは別問題だ。イスラエル側が人質の全員解放が困難だと判断した場合、ハマスの拠点の破壊などを成果として勝利を示し、戦闘の縮小を図ることが考えられる。ただ、封鎖状態が続けば、ガザ地区の住民が抱えている困難は解消されない」と懸念を示しました。

ガザ地区の戦況地図は

ことし10月7日のイスラム組織ハマスの襲撃を受けて、ガザ地区への軍事作戦に乗り出したイスラエル軍は、10月下旬に地上部隊による侵攻を開始しました。

まずは北部にある最大都市ガザ市を包囲するように部隊を展開し、ハマスの地下トンネルだとする映像を公開するなどして作戦を進めました。

人質の解放などを条件に先月24日から7日間にわたって戦闘は休止されましたが、今月1日に再開され、イスラエル軍は南部の中心都市ハンユニス周辺にも部隊を展開していきます。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」と「アメリカン・エンタープライズ研究所」が公開した今月24日時点の地図によりますと、イスラエル軍の地上部隊はワディ・ガザと呼ばれる川の北側の北部の広い範囲で掃討作戦を進めています。

このうち、ジャバリア難民キャンプ付近では抵抗するハマス側との戦闘が続いているとしています。

一方、南部では、ハマスの幹部が潜伏しているとしてイスラエル軍が攻勢を強めていて、地上部隊による掃討作戦の範囲は北部と比べて狭いものの、住宅などが建ち並ぶ市街地も含まれ、ハンユニス中心部にも達しています。