びわ湖水位 渇水対策本部の目安まで下がる 知事“年明け判断”

滋賀県のびわ湖の水位が、節水の呼びかけなどを行う「渇水対策本部」を設置する目安となっているマイナス75センチまで下がっていて、三日月知事は会見で、「引き続き注視する」としたうえで、来年1月4日時点の水位を見て、本部を設置するかどうか判断する考えを示しました。

びわ湖の水位は、12月26日午前6時の時点で基準となる水位からマイナス75センチとなり、例年のこの時期の平均を40センチ下回って、滋賀県が「渇水対策本部」を設置する目安まで下がりました。

「渇水対策本部」を設置すると節水の呼びかけなどを行うことになりますが、三日月知事は26日の会見で「場合によっては年末に設置するということも選択肢としてあったが、年末から年始にかけては雪どけ水で水位が回復する傾向にあるので、引き続き注視していきたい」と述べました。

そのうえで、年明けの1月4日時点の水位を見て、「渇水対策本部」を設置するかどうか判断する考えを示しました。

約1450万人が水を利用 びわ湖からのルートは

滋賀県のほか、大阪府や京都府、兵庫県に住むおよそ1450万人がその水を利用しているびわ湖。

湖から水が流れるルートは3つあります。

1つは琵琶湖疏水で、大津市中心部から京都市へ一日およそ160万トンの水が流れ出ています。

もう1つは大津市南部の南郷から流れる宇治発電所導水路で、ここから一日に数百万トンの水が流れ出ています。

そして、最も水量が多いのが、びわ湖から流れ出る唯一の川、瀬田川です。

この瀬田川に設けられた瀬田川洗堰という施設に国土交通省の職員などが常駐して、びわ湖の水位や川の水の流量などを調節しています。

昭和36年に完成した現在の本堰には10の水門があり、上段、下段と呼ばれる2段のゲートが上下に動いて1門ずつ「全開」から「全閉」まで細かく調整することができます。

▽上下段のゲートがともに上に上がると「全開」、
▽上下段のゲートが上下に分かれて流れをせき止めると「全閉」です。

ことし8月の台風のあとは10の水門すべてが開かれ、画像からも洗堰下流の水位が高かったことがうかがえます。

一方、ことし12月の画像ではすべての水門が閉じられていて、本堰の下流は川底が見える状態になっています。

琵琶湖河川事務所によりますと、現在はバイパス水路と呼ばれる別の水路から放流していて、必要とされる量に応じて放流する量を調整しているということです。

国土交通省琵琶湖河川事務所の原田豊彰副所長は「節水を心がけていただいて、びわ湖の水を大切に使っていただきたい」と話しています。

過去の水位低下と取水制限は

びわ湖の水位が平成以降で最も低くなったのは、平成6年9月のマイナス123センチでした。

この時はびわ湖にせり出した「浮御堂」と呼ばれる大津市の景勝地の周辺でも水がなくなったほか、ふだん沖合にある長浜市の奥の洲は、現在よりさらに陸地化が進んでいました。

この影響で、京都府、大阪府、兵庫県では最高で20%の取水制限が実施され、減圧給水で水道の水が出にくくなったほか、滋賀県でも最大で10%の取水制限が行われました。

そのあとも、
▽平成7年12月に、マイナス94センチ
▽平成12年9月に、マイナス97センチ
▽平成14年10月に、マイナス99センチとなるなど、
マイナス90センチ台となる水位低下が3回あり、平成12年と14年には5%から10%の取水制限が実施されています。

漁業も水位低下による被害

びわ湖の水位が低下したことで、湖の南部では場所によって湖底の石に漁船がぶつかり、スクリューが傷つくなどの被害が出ています。

30人の漁業者が所属している滋賀県守山市の玉津小津漁業協同組合では、びわ湖に仕掛けた「エリ」と呼ばれる伝統的な定置網を使った漁をしていますが、水位が下がったことで魚がかからなくなり、仕掛けの網を片づけたということです。

また、湖岸や港には大量の水草が流れ着くようになっていて、船を出すと、湖面に浮かぶ水草で浅くなった湖底の石が隠れて船のスクリューがあたって壊れる被害が、これまでに5隻相次いだということです。

このため漁協では、大量に流れ着く水草を週に1回から2回、組合員に呼びかけて除去しています。

玉津小津漁業協同組合の田中善秋組合長は「やはり船がないと仕事にならない。通常の水位でも浅いので、これだけ水位が下がってしまうと、限られた船しか出られない」と話していました。