クマ被害過去最悪 「指定管理鳥獣」対象にするか検討始まる

クマによる被害が過去最悪となる中、環境省は、クマをニホンジカなどと同様に「指定管理鳥獣」として、捕獲などにかかる費用を支援する対象とするかの検討を始めました。

環境省のまとめでは、クマに襲われてけがをしたり死亡したりした人は、ことし4月から11月までで全国で合わせて212人にのぼり、過去最悪だった2020年度の158人をすでに上回りました。

北海道や東北の自治体から、クマをニホンジカやイノシシと同様に「指定管理鳥獣」として、国が交付金を出して捕獲などにかかる費用を支援する対象にしてほしいとの要望を受けて、環境省は専門家による検討会を開きました。

1回目の26日の検討会では、今年度のクマ被害の分析や対策についての情報共有が行われ、4月はすべてクマの生息地である森林で発生していたが、9月と10月は全国でおよそ40%が住宅の周辺で発生し、被害が多かった東北では特に秋田県で人の生活圏内での被害が多かったことが報告されました。

専門家からは、クマの餌となるどんぐりが全国的に凶作だったが、被害が増えていない地域もあることから、地域ごとにどのような対策をしているのか分析するべきだとか、クマの個体数が減って保護が必要な地域もあることから、捕獲の一方で、保護についても国の支援を検討すべきではないかといった意見が出ていました。

検討会では、来年2月末をめどに方針をとりまとめることにしています。

「指定管理鳥獣」とは

今回検討されている指定管理鳥獣は、全国的に生息数が著しく増加している、または生息地の範囲が拡大している野生動物を対象とし、指定されると適正な個体数を管理するための捕獲にかかる費用を国が交付金で支援します。

現在、指定管理鳥獣には、ニホンジカとイノシシが指定されています。

環境省によりますと、クマは34の都道府県に分布し、推定される個体数は増加傾向の場所が多いということです。

一方で、九州では、2012年に絶滅したと判断されているほか、四国では、個体数が20頭程度とされ、絶滅のおそれがあるとして、どのように保護していくかが課題となっています。

検討会座長「地域で様子異なり それぞれに合わせた対応必要」

今回の検討会の座長を務め、クマの生態に詳しい、東京農業大学の山崎晃司教授は、「ことしのクマの状況は地域によってかなり様子が異なり、それぞれに合わせた対応が必要だ。一方、すぐにできる対策としては、ことし特に被害が多かった東北地方の事例から学ぶことが重要で、今あるデータを解析するなどして、対策を改善していく必要がある」と話していました。

伊藤環境相「クマの冬眠明けるまでには結論を」

伊藤環境大臣は、今回の検討会を踏まえたクマ対策について、26日の閣議後の会見で「近年にないレベルで人身被害が各地で出ているので、なるべくスピードアップして対策を進めるように指示している。クマの冬眠が明けるまでにはしっかりとした結論を出して、戦略的にこの問題に取り組みたい」と話していました。