元広島市議への特捜部検事の取り調べ “不適正” 最高検察庁

河井克行 元法務大臣の実刑が確定した参議院選挙をめぐる大規模買収事件で、任意の取り調べを受けた元広島市議会議員が、東京地検特捜部の検事から不起訴にすることを示唆して供述を促されたと訴えていた問題で、最高検察庁は「不適正な取り調べだった」などとする調査結果をまとめました。組織的な指示はなかったとしています。

この問題は、4年前の参議院選挙をめぐる大規模買収事件で、河井克行 元法務大臣から現金を受け取った罪に問われて、ことし10月に有罪判決を受け控訴している当時の広島市議が、任意の取り調べの際の録音データをもとに、東京地検特捜部の検事から不起訴にすることを示唆して買収の趣旨を認める供述をするよう促す不適切な取り調べを受けたと訴えていたものです。

これについて最高検察庁は、担当検事や捜査幹部などから聞き取りを行うなどして、調査結果をまとめました。

この中で最高検察庁は、取り調べを行った検事が、元市議に対し「できたら議員を続けていただきたいと思っているわけで、そのレールに乗ってもらいたい」などと発言したことについて、「不起訴を期待させるものであったことは否定し難い。取り調べの適正確保の見地からは不適正だ」と結論付けました。

また、取り調べの一部の録音・録画についても、元市議の不安定な供述の状況を取り繕うようなものとなっていて不適正だったとしました。

ただ、主任検事や捜査幹部に聞き取りを行った結果、こうした取り調べについて「組織的な指示はなかったと認められる」としています。

このほか、河井元大臣の公判を担当した特捜部の別の検事が、尋問で想定されるやりとりを確認した際に、不起訴を約束するなどの利益誘導を繰り返したとされる点については、そのような事実は認められないと結論づけました。

そのうえで、客観的事実関係よりも弁護士の反対尋問にいかに対応するかを優先すべきであるかのように受け取られかねない言動があり、証人尋問の公正さに疑念を生じさせるもので、「より慎重な配慮が必要だった」としています。

最高検察庁は、担当検事らを指導するとともに、検察官に対する指導・教育を強化するとしています。

最高検察庁 監察指導部長「取り調べなど適正確保に努める」

最高検察庁の松本裕 監察指導部長は「不起訴の約束や、虚偽の供述や証言をさせた事実は認められなかったが、捜査を担当した検察官の対応に不適正な点が、公判を担当した検察官の対応により慎重な配慮が必要な点が認められたことから、東京地方検察庁に対し、再発防止に向け一層の注意喚起を行った。引き続き、取り調べなどの適正確保に努めたい」とコメントしています。

東京地検 次席検事“指摘を重く受け止め 指揮・指導に努める”

東京地方検察庁の新河隆志 次席検事は「指摘された内容については重く受け止めている。適正な取り調べなどの確保に向けて、担当者の意識を向上させるとともに、積極的に指揮・指導に努める」とコメントしています。