南シナ海 “中国や東南アジアの国など埋め立て サンゴ礁被害”

領有権争いが続く南シナ海で、中国が実効支配する岩礁などの埋め立てを進める中、東南アジアの3か国や台湾も埋め立てを行っていると、アメリカの研究機関が明らかにしました。専門家は埋め立てによってサンゴ礁に被害が出るなど環境破壊が進んでいるとして開発を中止する必要性を指摘しています。

南シナ海では、中国がほぼ全域の管轄権を主張し、人工島を造成して滑走路などの整備を進める一方、東南アジアの国々や台湾が領有権を主張しています。

アメリカのシンクタンク、CSIS=戦略国際問題研究所がこの10年間の南シナ海の状況を衛星画像などで分析したところ、中国のほかに、ベトナムやマレーシア、フィリピン、それに台湾も自らが実効支配する岩礁などで埋め立てを進めていることが分かったということです。

このうち中国が19の岩礁などで最も広い範囲で埋め立てを行っているほか、ベトナムが20、マレーシアが5、フィリピンと台湾がそれぞれ1つの岩礁などで開発を進めているということです。

CSISは埋め立てによってサンゴ礁が破壊されていて、特に中国やベトナムが行う海底を掘削して堆積物をポンプで吸い上げる方式は環境への負荷が大きいとしています。

さらに海洋生物が死滅するなどの被害も出ているとして、6500以上の種が生息する豊かな生態系が破壊されていると指摘しています。

CSISの研究員のハリソン・プレタさんはこの海域での開発を中止する必要があるとした上で「数十年後には生態系は回復できないほどになるかもしれない。そうなれば、食料安全保障を南シナ海に依存している沿岸の国などは影響を受ける。領有権争いを回避し、共通の課題として環境問題に取り組まなければならない」と話しています。