【詳細】ロシアウクライナに軍事侵攻(12月24日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる24日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ将校「あらゆる砲弾が不足している」

アメリカによるウクライナ支援の先行きが見通せない状況が続く中、ウクライナ東部の前線で戦うウクライナ側の将校がNHKのオンライン取材に応じ、砲弾不足によって不利な状況に立たされているとして欧米による支援の継続を訴えました。

取材に応じたのはウクライナの内務省傘下のアゾフ旅団に所属し、東部の前線で戦闘に参加するイリア・サモイレンコ氏です。

サモイレンコ氏の部隊では、ウクライナへの支援が停滞している影響で砲弾不足が深刻になっているということです。

サモイレンコ氏は「口径155ミリや122ミリの弾薬、それにロケット弾などあらゆる砲弾が不足している。砲撃の精度をさらに上げるためにさまざまな戦術を利用しようとしている」と述べ、砲弾を節約するため戦術の変更も余儀なくされていると明らかにしました。

その上で、ロシア側は、人員や兵器、戦車や無人機の量が豊富で、ウクライナ側は経験があり技術も高いものの不利な状況に立たされていると訴えました。

そしてサモイレンコ氏は「前線がこう着する中では、敵の防衛線を突破できれば主導権を握れるが弾薬不足でそれができない」と述べた上で「もしも支援が得られなかったら戦場は今よりひどい状況になってしまう」と述べ、ロシア側に主導権を握られさらに追い込まれることへの危機感を示し、アメリカをはじめとした西側諸国による支援の継続を訴えました。

欧米 ウクライナ軍事支援にかげりか

ドイツの研究機関、「キール世界経済研究所」によりますと、去年(22年)1月24日からことし10月末までにウクライナに対して約束された軍事支援は、総額981億ユーロ余り、日本円にして15兆3000億円余りに上ります。

国や地域別では、アメリカが438億ユーロ余り、日本円にして6兆8000億円余りと全体の4割以上を占めているほか、ドイツが171億ユーロ、イギリスが65億ユーロなどと続いています。

アメリカはことし、射程の長い地対地ミサイルATACMS(エイタクムス)や殺傷能力が高いクラスター弾、それに主力戦車「エイブラムス」の供与を新たに開始しました。

また、ドイツとイギリスも、それぞれ主力戦車の「レオパルト2」や「チャレンジャー2」を届けたほか、イギリスは射程が250キロ以上と長い高精度の巡航ミサイル「ストームシャドー」も供与しています。

ただ、最大の軍事支援国であるアメリカでは、議会で新たな支援のための緊急予算の審議が滞っているほか、中東情勢の影響でウクライナへの援助にかげりが出ているとする指摘もあります。

アメリカのABCテレビは先月(11月)、アメリカがウクライナに供与してきた主な砲弾の量が、イスラエル軍とイスラム組織ハマスによる一連の衝突が始まった10月以降その前と比べて「3割以上減っている」と伝えました。

砲弾の一部が予定されていたウクライナではなく、イスラエルに渡っているということです。

プーチン大統領 欧米の軍事支援は “終わりつつある”

ロシアのプーチン政権は、アメリカなどのウクライナ支援にかげりも見えてくるとして軍事侵攻を取り巻く状況はロシアにとって有利に進んでいると自信を深めているとみられます。

プーチン大統領は今月19日の国防省の会合で「われわれが主導権を握っていると断言できる」と述べています。

具体的に兵力について今月、ウクライナの前線におよそ62万人が展開しているとして、兵士の数は十分だと強調しています。

さらに、今月はじめの大統領令では兵士を17万人増やして132万人規模にするとしているほか、ショイグ国防相も来年末(まつ)までに、徴兵制度とは別に、軍と契約する兵士、「契約軍人」を増やして、およそ75万人とする考えを明らかにしていて、長期戦も見据えて兵力の増強を続けています。

そして、ロシアは兵器の生産能力も強化しています。

ショイグ国防相は、侵攻開始前と比べて▼戦車は5.6倍、▼無人機は16.8倍、▼砲弾については17.5倍にそれぞれ生産能力を引きあげたとしています。

一方、プーチン大統領は欧米によるウクライナ側への軍事支援について今月「いずれ終わるだろうし、終わりつつあるようだ」と述べ、供与される量が減っていくという見方を示しています。

そして、ウクライナ側の反転攻勢については「失敗している」と主張した上でロシアの目標は変わっていないとして軍事侵攻を続ける姿勢を改めて強調しました。

ウクライナ クリスマス ことしから12月25日に

ウクライナでは、これまでロシアと同じ1月7日をクリスマスとしてきましたが、ことしから正式に暦を変更し、多くのヨーロッパ諸国と同じ12月25日にクリスマスを祝うことにしています。

首都キーウ中心部の公園には大きなクリスマスツリーが立てられ、クリスマス・イブを迎える24日には、お祝いの雰囲気も広がっています。

ただ、市民の間からは終わりの見えない戦争に疲れや不安の声も聞かれました。

公園で犬の散歩をしていた50歳の男性は、「ことしは期待していたウクライナ軍の反転攻勢がうまくいかず、みながっかりしていて、社会全体に疲労感が漂っています。ウクライナを支援してくれている国々も疲れてきていると感じます」と話していました。

また、25歳の女性は、「戦争は長期化していて、兵士だけでなく国全体が慢性的なストレスにさらされています。来年は、最前線でも社会全体でも状況が改善することを願っています」と話していました。

「ウクライナ国立バレエ」ロシアの作曲家の音楽差し替え上演

首都キーウを拠点とする「ウクライナ国立バレエ」は、ウクライナからおよそ1か月の予定で来日していて、24日に都内でアンデルセンの童話を原作とする「雪の女王」を上演しました。

世界の支配を試みる雪の女王を愛や友情の力で倒すという物語で、日本で披露されるのは今回の来日公演が初めてです。

7年前の制作当初はロシアの作曲家の音楽を使用していましたが、軍事侵攻を踏まえて曲を差し替えるなどしたということです。

主役の女の子を演じたイローナ・クラフチェンコさんは「キーウではミサイル攻撃が続き、練習もままならない厳しい状況です。全力で演じ、観客が拍手で応じてくれるのを見て、力を分かち合っている気がします」と話していました。

また、長年ウクライナでバレエに携わり去年、芸術監督に就いた寺田宜弘さんは「戦争がいつ終わるか見通せず、ウクライナはいままで以上に不安定になっていると感じます。国外での公演はウクライナの芸術を多くの人に知ってもらうチャンスで、すばらしい公演を続けたいです」と話していました。

軍事侵攻1年10か月 在日ウクライナ人ら 継続支援呼びかけ

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して24日で1年10か月となる中、日本で暮らすウクライナ人たちが東京・新宿で継続的な支援を呼びかけました。

この活動は日本で暮らすウクライナ人が中心となって都内で定期的に行っているもので、年内最後の活動となった24日は、日本へ避難しているウクライナ人などおよそ30人が参加しました。

参加した人たちは新宿駅の近くに立ち、これまでの支援への感謝の思いや現地に医療品や食料などを届けるための募金への協力を呼びかけました。

また、ウクライナで親しまれているクリスマスソングを歌って平和を訴え、通りかかった人の中には立ち止まって歌を聞いたり、募金したりする人たちの姿が見られました。

活動を行った団体のメンバーのマローワ・ナターリヤさんは「日本だけでなく世界的に見てもウクライナへの関心が低くなっていることを感じていますが、現在も戦争によって悲惨な出来事が続いているので、日本の皆さんにもどうか目をそらさずにいてほしい。関心を持ってもらうことがウクライナにとっても力になります」と話していました。

“ロシア軍無人機14機を撃墜” ウクライナ空軍

ウクライナ空軍は24日、ロシア軍が南部のミコライウ州やザポリージャ州に無人機15機で攻撃を仕掛け、このうち14機を撃墜したとSNSで発表しました。

また、南部ヘルソン市の当局者はロシア軍の砲撃で3人が死亡し、8人がけがをしたとしています。

“プーチン大統領 9月以降 停戦向けた協議に関心” 米有力紙

ロシア軍による攻撃が続く中、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは23日、ロシア政府の元高官やアメリカなどの当局者の話として、プーチン大統領が少なくともことし9月以降、仲介者を通じて停戦に向けた協議に関心を示してきていると報じました。

具体的には米ロ両国と関係を持つ外国政府を含む複数のルートでアメリカなどに伝えられ、キーウを首都とするウクライナの主権を認めるかわりに現時点でロシア軍が支配している20%近いウクライナの領土をロシア側が維持することを提案しているということです。

ただ、ウクライナのゼレンスキー大統領は、すべての領土の奪還を訴えているうえに、記事ではアメリカ政府関係者の話として「ロシアがよくやる相手を惑わせる試みで、本当にプーチン大統領が妥協しようとしているものではないだろう」とする懐疑的な見方も伝えています。

軍事侵攻開始から1年10か月 ウクライナ東部南部で激しい戦闘

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して24日で1年10か月になりますが、ことし6月に大規模な反転攻勢に乗り出したウクライナ軍と、防御陣地を固めるロシア軍との攻防は、こう着状態に陥っているとも指摘されています。

こうした中、ウクライナ軍は23日、東部ドネツク州の拠点、アウディーイウカの周辺でロシア軍が30回余り攻撃を繰り返すなど、東部や南部で激しい戦闘が続いていると明らかにしました。

また、ウクライナ各地でロシア軍による空爆などの攻撃があり、民間人にもけが人が出ているとしています。

ウクライナ側では、戦闘の長期化で兵員の確保が課題になっているほか、アメリカによる支援の先行きが見通せない状況が続いて弾薬不足への懸念も強まっています。

ゼレンスキー大統領は22日、オランダからウクライナへのF16戦闘機の引き渡しに向けた準備が始まったと明らかにしていて、航空戦力の強化を急いで戦況の打開につなげたいねらいがあるとみられます。

一方、イギリス国防省は23日、前線の状況についてSNSに投稿し「大量のネズミが発生して、双方に被害が出ている可能性が高い。ネズミは車両や防御陣地に入り込み、兵士の士気に影響を与える」と指摘しました。