宇野昌磨が優勝 フィギュア全日本選手権 2大会連続6回目

フィギュアスケートの全日本選手権は男子シングル後半のフリーが行われ、前半首位の宇野昌磨選手が合計でもトップを守って2大会連続6回目の優勝を果たしました。

長野市で開かれているフィギュアスケートの全日本選手権は23日、男子シングル後半のフリーが行われました。

前半のショートプログラムで2位に10点以上の差をつけてトップに立った宇野選手は、冒頭の4回転ループは着氷が乱れ回転不足もとられましたが、すぐに立て直し、続く4回転フリップと、トリプルアクセルからの連続ジャンプは確実に決めました。

後半のジャンプも大きなミスなくまとめ、スピンとステップはすべて最高評価のレベル4を獲得した宇野選手は、フリーは193.35、ショートプログラムとの合計得点を298.04とし、2大会連続6回目の優勝を果たしました。

優勝回数では羽生結弦さんや本田武史さんに並んで歴代2位となりました。

2位は鍵山優真選手で冒頭の4回転サルコーをほぼ完璧に決めて、4点台の高い出来栄え点を獲得するなど、フリーでは宇野選手を上回る全体トップの得点で合計を292.10とし前半から順位を1つ上げました。足のケガから復活し、この大会2年ぶりの表彰台です。

3位はグランプリシリーズのカナダ大会を制した山本草太選手で、4回転3本を含むすべてのジャンプを着氷し合計得点287.00で、この大会初めての表彰台に立ちました。

宇野「自分としては最高のものを出せた」

連覇を果たした宇野昌磨選手は「皆さんがこれだけすばらしい演技をしてすばらしい大会になった中で、自分が優勝できたことをうれしく思う。皆さんほど最高の演技ではなかったかもしれないが自分としては最高のものを出せたと思う」と話しました。

その上で、出場が濃厚になった来年の世界選手権に向けては「このままではグランプリファイナルを制したアメリカのイリア・マリニン選手には遠く及ばないと思うが、大会までの3か月、僕の持てる力をすべて出し切ることができればギリギリ戦えると思うので、ジャンプを頑張っていい調整をしていきたい」と話していました。

鍵山「うれしいけど悔しくて悔しいけどうれしい」

フリーでは全体トップの得点も2位に終わった鍵山優真選手は「まだ気持ちを整理することができていないがひと言で言うなら『うれしいけど悔しくて悔しいけどうれしい』。この大会ならではの独特の雰囲気と緊張感の中で予想していたよりもハイレベルですごい試合になり思い切り演技ができたのはよかったと思う」と振り返りました。

シーズン後半に向けては「まだまだ構成も上げられる段階なので、新しい構成を考えて体力づくりやプログラムのブラッシュアップをしていきたい。4回転ジャンプは絶対に増やしたい」と意気込んでいました。

山本「もっと先を見据えて目標を高い位置に」

3位に入り、10回目の出場で自身初の表彰台となった山本草太選手は「すごくうれしく思う。今回は結果や順位を気にせず、練習の成果をすべて出し切ろうと思ったのでそれがかえって緊張感につながらずすごくいい演技ができたんじゃないかと思う」と振り返りました。

その上で「本当にいろんな方が応援してくれていると感じたしその中で10回目で初めて表彰台に上がれて本当によかった。全日本選手権の表彰台は1つの目標ではあったがもっともっと先を見据えて目標を高い位置に掲げて成長していければと思う」と話していました。

宇野 闘志に再び火「“競技者”としてやる」

「結果を求めたい」

宇野昌磨選手は競技者として勝負にこだわる姿勢に立ち返り、大会連覇を果たしました。

世界選手権で2連覇するなど、“絶対王者”になったからこそモチベーションの維持に苦しんできた宇野選手。

今シーズンは「自分を満足させる演技をすること」を目標に表現力に重点を置いて練習に取り組んできました。

“競技者”よりも“表現者”として「フィギュアスケートはジャンプだけではないと伝えたい」という思いで大会に臨んできた宇野選手。

しかし、今回は違いました。

開幕前の取材から「結果を求めたい」と繰り返し口にしたのです。

その理由について宇野選手は「マリニン選手の存在が大きかった。グランプリシリーズのあと今シーズンも“競技者”としてやると決めた」と話しました。

12月に行われた、グランプリファイナルで次々と高難度の4回転ジャンプを成功させるアメリカの19歳、イリア・マリニン選手に敗れ2位に終わったことで、宇野選手の闘志に再び火がついたのです。

そして、「勝つためにはやはりジャンプが必要」と自身の中で今シーズン最もうまく跳べたという11月のNHK杯のジャンプの映像を繰り返し確認し、ジャンプに再現性を持たせることを目指してグランプリファイナルまでよりも練習で跳ぶ本数を倍以上に増やしたといいます。

23日のフリーでは「自信が持てるジャンプの内容ではなかった」としながらも4回転フリップや4回転トーループからの連続ジャンプを決めて高い出来栄え点を得るなど成果を示しました。

さらに、直前の調子を見て状態のいいジャンプに構成を変更するなど結果にこだわる姿勢も見せました。

演技後、宇野選手は「本当は表現面を練習したいし、ジャンプにこだわることは本来やりたいことではないので楽しい練習ではなかったし気持ち的には難しかった。それでもこの試合を最高のものにしたいという思いをもって臨むことができた」と話しました。

そして、出場が濃厚になった来年の世界選手権に向けては4回転ジャンプの本数を増やして昨シーズンまでの4種類5本の構成に戻すことも視野に練習を進めるといい、「これまでの3年間で最も難しい大会になると思うし自分が優勝するにはスケート人生で1番の演技をしないといけない。マリニン選手に勝つために最高の調整をして臨みたい」と明確に勝つことを目標に掲げました。

史上6人目の世界選手権3連覇を目指して、競技者であり続けることを選んだ宇野選手に注目です。