フーシ派の船舶攻撃 150隻以上に影響 物流混乱 物価上昇に懸念

イエメンの反政府勢力フーシ派が紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返していることで、これまでに合わせて150隻以上の船が輸送ルートの変更などを行ったとする推計が発表されました。アメリカのメディアはコンテナの輸送運賃が2倍以上に跳ね上がっている航路もあると報じていて、物流の混乱や物価上昇を懸念する声も出ています。

イエメンの反政府勢力フーシ派が紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返していて、海運大手各社が紅海やスエズ運河を経由した輸送を避ける動きが広がっています。

アメリカの物流調査会社プロジェクト44は、21日までに影響を受けた船の数が157隻に上るとする推計をまとめました。

このうち▽129隻はアフリカの喜望峰を回るルートに変更し、▽28隻は海上で待機しているとみられるということです。

12月20日時点でスエズ運河を通った船舶の数は、前の週に比べて34%減少したと分析しています。

また、アメリカの経済チャンネルCNBCは、影響を受けたコンテナの数は21日の時点で210万個を超えたと伝えています。

そして、輸送コストの上昇により中国の上海とイギリスを結ぶ航路などでは、コンテナ一つ当たりの輸送運賃がこれまでの2倍以上に跳ね上がっているケースもあるほか、代替輸送手段としての航空貨物の運賃も上昇しているとしています。

関係者のあいだでは物流の混乱や物価上昇を懸念する声も出ています。

スイス物流大手 “世界の海上輸送能力20%減少の予想”

スイスの物流大手「キューネ・アンド・ナーゲル」によりますと、スエズ運河を航行する船舶は年間およそ1万9000隻で、アジアとヨーロッパの間の輸送にかかる日数は船のタイプや速度によって異なるものの通常30日から40日程度だということです。

この会社によると、アフリカの喜望峰を経由するルートを通る場合は、スエズ運河経由と比べて片道では10日から15日、往復する場合は3週間から4週間、長くなる可能性があるとしています。

そのうえで「航行時間が長くなることで、世界の海上輸送能力が20%減少することが予想される」と分析しています。

また、積み荷を降ろし空となったコンテナをアジアに戻す際の遅れが課題となり、サプライチェーン全体の信頼性に影響を与える可能性があると指摘しました。

スイス物流大手「これほどの規模で進行の早い危機は前代未聞」

イエメンの反政府勢力フーシ派による船舶への攻撃の影響について、スイスの物流大手、「キューネ・アンド・ナーゲル」で国際貿易を統括するパウロ・モントローネ氏は22日、NHKの取材に応じました。

モントローネ氏はヨーロッパとアジアの間を行き来するスエズ運河経由の船舶のデータを分析したところ「現状では船舶のほぼ100%が攻撃によって船員の生命と安全が危険にさらされているため、紅海を避け、アフリカを経由している」としています。

また、航路を変更する場合、工場の操業停止や重要な部品の不足が懸念されることから、輸送の代替手段を考えるべきだとして、「例えば、日本からドバイまでは海上輸送し、ドバイからヨーロッパまでは空輸するなど商品を移動させるための解決策が必要だ」と指摘しています。

その上で、「35年以上この業界で仕事をしているが、最近のコロナ禍の混乱を含めても、これほどの規模で事態の進行の早い危機は前代未聞だ」としてフーシ派による攻撃の影響は深刻だと強調しています。