日本学術会議 法人格持つ国から独立した組織に改める方針 政府

日本学術会議について、政府は、法人格を持つ国から独立した組織に改める方針を決めました。会議側には独立への反対意見があることから、具体化の法整備の検討は丁寧に進めることにしています。

これは日本学術会議を所管する松村国家公安委員長が、22日の記者会見で明らかにしました。

それによりますと、今は国の機関である日本学術会議について、今後は国から切り離して、法人格を持つ独立した組織に改めるとともに、会員選考も自律的に行うとしています。

引き続き、国が学術会議への財政支援を行いつつ、会議の財政基盤の多様化も図るほか、外部の有識者による評価委員会も設けるなど、運営の透明性を高めるしくみも検討していくとしています。

学術会議をめぐっては21日、政府の有識者懇談会が同様の内容の中間報告をまとめています。

松村大臣は「中間報告では、学術会議の機能を十分発揮できるようにするには、独立性を徹底的に担保するのが望ましいとされ、これを踏まえて決定した」と述べました。

一方、松村大臣は、学術会議側に「国の機関のままでも改革は可能だ」などと独立への反対意見があることも念頭に、具体化の法整備の検討は、会議の関係者の声も聞きながら丁寧に進めていく考えを示しました。

学術会議 光石会長「懸念が完全に解消される必要」

日本学術会議について、政府が法人格を持つ国から独立した組織に改める方針を22日に決めたことを受け、学術会議の光石衛会長は会員などに対してメッセージを発信しました。

この中では「政府の有識者懇談会では学術会議が果たすべき機能・役割を発揮するためにはこれまで以上の事務局体制の整備や予算が必要との意見を多くの委員からいただいた一方で、法人化という結論を急ぐような議論もあり、学術会議としてもたびたび懸念を表面してきた」と指摘。

そのうえで「最終的に取りまとめられた法人化の方針においては懸念点に関して一定の反映がなされたが、今後、これらの懸念が完全に解消される必要があると考えている。学術会議としても懸念点の解消に向け、今後の議論に主体的に参画していきたい」としています。

日本学術会議めぐる経緯

国の機関である日本学術会議をめぐっては、2020年10月に、会議側が、推薦した会員候補6人を当時の菅総理大臣が任命しなかったことに反発し、組織のあり方が議論されるきっかけとなりました。

自民党は、あり方を検討する作業チームを立ち上げ、その年の12月、「政治的中立性を担保するためにも独立した新たな組織として再出発すべきだ」などとする提言をまとめ、政府に提出しました。

一方、学術会議は2021年、組織のあり方について、国の機関としての形態が「役割を果たすのにふさわしい」とする報告書をまとめました。

これらを踏まえて政府は、学術会議を国の機関として存続させるものの、組織運営の透明化を図るため、会員選考に第三者が参画する仕組みを導入するなどとした見直しの方針を2022年の年末にまとめました。

そして、ことしの通常国会に日本学術会議法の改正案を提出する方向で調整を進めていましたが、会議側から「会員選考の独立性が損なわれる」と反対意見が相次いだことから、通常国会への提出を見送りました。

そのうえで、ことし8月から、有識者懇談会を設置して再検討を進めてきました。