介護保険制度の見直し 高齢者の負担など審議会で報告 厚労省

65歳以上の高齢者が支払う介護保険料の負担など、来年度、2024年度からの介護保険制度の見直しについて、厚生労働省は22日に開かれた審議会で報告しました。

介護保険制度は、3年に1度負担のあり方などを見直しています。

現役世代が減少していく中で制度を維持するには、高齢者の世代の負担を増やす検討が必要だとして、厚生労働省は専門家による審議会で
▽65歳以上の高齢者が支払う介護保険料の負担の見直しや
▽介護サービスを受けた際の利用料の引き上げについて議論してきました。

22日に開かれた審議会では、65歳以上の高齢者の介護保険料について、来年度から年間所得が420万円以上の高齢者を対象に引き上げることが報告されました。

具体的には、現在「320万円以上」としている最も所得の高い区分を細分化して、新たに「420万円以上」「520万円以上」など4段階を設け、年間所得が420万円以上の所得の高い高齢者については、これまでよりも高い介護保険料を負担してもらうことになりました。

また、増えた保険料の一部を使って所得が低い高齢者の負担額を減らし、同じ世代の中で負担を分け合う仕組みとします。

一方、厚生労働省は、高齢者が介護サービスを受けた際に支払う利用料について、現在は1割負担している人の中から2割負担してもらう人を増やすことで負担を引き上げる案を検討してきましたが、物価高による高齢者への影響を慎重に検討する必要があるとして引き上げを見送ることになりました。

次回、3年後の制度の見直しの中で、高齢者が支払う利用料の引き上げについて引き続き議論を行うということです。

介護の報酬改定の主な内容

来年度からの介護報酬改定について、厚生労働省はこれまでに改定の基本的な方針を取りまとめました。

【認知症のケアで新加算】
認知症の人の数は2025年にはおよそ700万人と、高齢者の5人に1人になると推計されています。
こうした中、認知症の症状の中でも、はいかいや抑うつの予防につながるとされるケアを行う介護事業所に、報酬を加算する仕組みを作ることになりました。

【一部老健などで相部屋代が自己負担に】
増え続ける介護費用を抑制するため、これまでは自己負担とせず介護保険でまかなってきた、介護老人保健施設などの「相部屋」の部屋代について、今後は利用者の自己負担として支払いを求めることになりました。
金額は月におよそ8000円で、令和7年度中に自己負担とする予定です。

【急変に対応 介護施設と医療機関の連携】
特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの施設に対して、入所者の体調の急変に対応する「協力医療機関」を定めることを義務化します。
協力医療機関で、医師や看護職員が夜間・休日に相談に応じたり診療や入院ができる体制を確保することで、急変時に速やかに対応できる体制を整えます。

【ケアマネにヤングケアラーを知ってもらう取り組み】
介護の多様で複雑な課題に対応するため、在宅で介護を受ける際にサービスの利用計画を作るケアマネージャーに、家族の介護やケアを担う「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもたちなどについて知る機会を設けます。
ケアマネージャーがヤングケアラーについての事例検討会や研修に参加した場合、報酬が加算されます。

【テレワークの促進】
人手不足の介護現場で働きやすい職場を作るため、介護事業所の職員にテレワークの導入を進めることになりました。
今後、利用者のケアプランや食事の献立の作成など、テレワークが可能な業務を検討し、具体的な事例を示すことにしています。

【訪問と通所をあわせた新介護サービス】
訪問介護の現場の人手不足を解消するため、厚生労働省は、これまで別々の事業所が担っていた訪問介護と通所介護のサービスを、1つの事業所が提供できるようにし、通所の人材を訪問でも活用できる新たな介護サービスの案をまとめました。
しかし、介護事業者から慎重な意見が相次いだことから、今後、実証実験を行い効果を検証したうえで、再度検討することになりました。