米 ホワイトハウス“日本製鉄の米企業買収合意 精査に値する”

日本製鉄がアメリカの大手鉄鋼メーカー「USスチール」を買収することで合意したことについて、アメリカ・ホワイトハウスは21日「アメリカの安全保障への影響などの観点から、真剣な精査に値する」とする声明を出しました。

日本製鉄は今月18日、アメリカの大手鉄鋼メーカー「USスチール」を買収することで両者の間で合意したと発表しました。

USスチールの株主総会や関係当局の承認が得られることなどを前提に、日本製鉄が来年4月から9月までの間にUSスチールを子会社化するとしています。

これについて、アメリカ・ホワイトハウスで大統領に経済政策の助言を行うNEC=国家経済会議のブレイナード委員長は21日、声明を発表し、USスチールはアメリカの安全保障に不可欠な鉄鋼製造の中核だと指摘しました。

そして「バイデン大統領は、外国企業による買収は、それが親密な同盟国であっても安全保障とサプライチェーンへの潜在的な影響という観点から真剣な精査に値すると考えている」と強調しました。

そのうえで、アメリカ政府の外国投資委員会が慎重に調査するという見通しを示すとともに、調査の結果しだいでは必要な行動をとる用意があるとしています。

今回の買収合意をめぐってはアメリカの鉄鋼業界の労働組合、USW=全米鉄鋼労働組合が買収を批判する声明を発表していて、一部の議員などからも強い反発の声が上がっています。

アメリカ 一部の議員から強い反発の声

アメリカでは一部の議員から強い反発の声が上がっています。

このうち、鉄鋼産業が盛んな東部ペンシルベニア州選出の民主党のフェターマン上院議員は18日、旧ツイッターのXに「労働者、そしてペンシルベニア州にとって間違っており実にとんでもないことだ。買収を阻止するために自分ができることはすべて行う」と投稿しました。

また、オハイオ州選出の民主党のブラウン上院議員は20日、バイデン大統領に送った書簡で「アメリカの鉄鋼業は国のインフラ、国家安全保障、国際競争力において極めて重要だ」として外国企業の日本製鉄によるUSスチールの買収の提案とその影響を包括的に精査するよう求めました。

さらに共和党では18日、オハイオ州選出のバンス上院議員が「金(かね)のためにアメリカの防衛産業基盤の極めて重要な部分が売却されることになった」という声明を発表し、19日、フロリダ州選出のルビオ上院議員などとイエレン財務長官に対してアメリカ政府の外国投資委員会で審査するよう要求しました。

今回の買収合意をめぐってはアメリカの鉄鋼業界の労働組合、USW=全米鉄鋼労働組合が買収を批判する声明を発表しています。

鉄鋼業が盛んなペンシルベニア州やオハイオ州は、来年11月の大統領選挙で重要なカギを握るだけに与野党いずれの議員も労働組合や労働者へアピールするねらいもあるとみられます。

林官房長官「個別企業の経営に関する事案 コメント控えたい」

林官房長官は閣議のあとの記者会見で「個別企業の経営に関する事案であり、コメントは差し控えたい」と述べました。

そのうえで「日米同盟はかつてなく強固になっており、インド太平洋地域の持続的、包摂的な経済成長の実現、ルールに基づく自由で開かれた経済秩序の維持・強化、経済安全保障分野における協力などで引き続き連携していく」と述べました。