札幌 女子中学生いじめで自殺 “学校側適切対応とらず”報告書

札幌市立の中学校に通っていた当時1年生の女子生徒がおととし、同級生からのいじめを訴え、自殺していたことが分かりました。第三者による調査委員会は、いじめがあったと認定したうえで、生徒がアンケートなどで繰り返し被害を訴えていたにもかかわらず、学校側が適切な対応をとらなかったことが自殺に影響したとする報告書をまとめ、21日公表しました。

おととし10月、札幌市の市立中学校に通っていた1年生の女子生徒(当時12)が同級生からのいじめを訴える遺書を残してみずから命を絶ち、市は専門家など第三者による調査委員会を設置していきさつなどを調べていました。

調査報告書によりますと、生徒は小学生のときから複数の同級生に仲間はずれや無視をされ、中学に進学したあとも物を隠されるなどのいじめを受けていたということです。

小学校では、教育委員会が学校を通じて年に1回行っているいじめに関するアンケートに3年連続で被害を訴える内容を記載し、当時の担任を含む教師2人が結果を確認していました。

しかし、担任の判断でいじめは解消したものとされたうえ、生徒は自殺の意図を担任に話していましたが、ほかの教師には共有されず、学校側は組織的な対応を取らなかったということです。

また、こうした情報は中学校に引き継がれていませんでした。

調査委員会では、小学校から中学校にかけて複数にわたるいじめがあったことを認定したうえで、学校側の対応を「不適切」だと指摘しています。

そして、生徒が継続的ないじめで苦痛やストレスを募らせ、そのことを周囲に発信していたのに、教師らが適切に受け止めず、対応できていなかったことが自殺に強い影響をもたらしたと結論づけ、再発防止に向け組織的な対応の徹底などを提言しています。

女子生徒の両親 「SOS出していたのに」

両親は、女子生徒のSOSが見過ごされていたことに悔しさと憤りを感じています。

女子生徒は、中学校に進学したおよそ半年後にみずから命を絶ちました。

両親によりますと、お菓子や雑貨を手作りするのが好きで、明るく、家族を笑顔にさせてくれる女の子でした。

しかし、小学校の高学年になると徐々に様子が変わり、亡くなる前に書き残したとみられる手紙には、同級生からのいじめを訴える内容が記されていたということです。

両親は、娘が再三にわたってアンケートなどでいじめを訴えていたのに、学校が本来とるべき対応をしていなかったことを調査が進む中で知ったといいます。

いじめ防止対策推進法では、学校は
▽いじめが起きた場合の対応などについて方針を定めることや、
▽対応にあたる組織を設置し、いじめの疑いがあると把握したら方針に基づいて組織的な対応にあたることが義務づけられています。

女子生徒が通っていた小学校ではいじめ対策の組織は設置していましたが、アンケートで被害が訴えられても委員会が開催されることはなかったということで、報告書は「極めて問題だ」と指摘しています。

母親は「いじめのアンケートに真剣に答えてSOSを出していたにもかかわらず、何の対応もされず、中学校への引き継ぎもされていないことにものすごく憤りを感じた。何のためのアンケートなのか、もっと組織的な対応をしてほしかった。娘に何もしてあげられず、本当に申し訳なさと悔しさでいっぱいです」と心境を語りました。

また、調査では、いじめを行ったとされる同級生については、保護者の同意が得られないなどの理由で一部の生徒への聞き取りが行われなかったということで、両親は調査のあり方についても国などに検討してほしいと考えています。

父親は「調査委員会の目的が犯人捜しではないことは理解しているが、いじめた側が反省しているのかもわからず、モヤモヤしている。娘はもうことばを発することができない。保護者がかばうと真実が分からないという点は国などに対策を検討してほしい」と話していました。

札幌市教育長「命を救えず申し訳ない」

札幌市の教育委員会は、報告書の作成にあたった調査委員会のメンバー同席の上で、22日、会見を開きました。

冒頭で、檜田英樹教育長は、「尊い子どもの命が失われ、命を救えなかったことを大変申し訳なく思っている。教育委員会として責任を感じていて、子どもが亡くなったのはいじめが原因だと捉えて、再発防止に努めていきたい」と述べ、頭を下げて陳謝しました。

報告書で学校側が組織的な対応を取らっておらず、「不適切」だったと指摘されたことについて「重く受け止めていて学校や当該の教員だけでなく教育委員会にも大きな責任がある」と話しました。

その上で再発防止策として、
▼いじめが解消されたかどうかの判断は教員単独ではなく組織で行うことや、
▼教職員への研修を徹底すること、
▼いじめに関するアンケートの回数や実施時期の見直しを行うことを明らかにしました。

札幌市教育委員会では26日、市内のすべての公立学校の学校長などを集めた緊急会議を開いて再発防止策について周知することにしています。