中国 一部の台湾製品の関税優遇停止へ 総統選前に揺さぶりか

中国政府は1月から一部の台湾製品について関税の優遇措置を停止すると発表し、1月の台湾総統選挙を前に中国への対抗姿勢を示す台湾の与党・民進党に圧力を加えるねらいがあるとみられます。

中国政府は21日、台湾が中国製品に対して一方的に差別的な措置をとっているとして、1月1日から台湾で生産されたプロピレンやキシレンなど、12の化学製品の輸入について現在行っている「経済協力枠組み協定」に基づく関税の優遇措置を停止すると発表しました。

FTA=自由貿易協定に当たる「経済協力枠組み協定」は、中国と台湾の間で2010年に締結され、貿易の自由化に向けて関税の引き下げや撤廃などが行われてきました。

しかし、中国政府は12月15日、台湾が中国産の農産物などの輸入制限を行い、貿易障壁になっているとする調査結果を公表し「台湾の民進党当局が輸入を一方的に制限している」として対抗措置をとる可能性を示唆していました。

今回、中国政府は「台湾が効果的な措置をとり、貿易制限を取り消すことを望む」と強調しています。

中国としては1月13日に投票が行われる台湾総統選挙を前に、経済分野で揺さぶりをかけ、中国への対抗姿勢を示す台湾の与党・民進党に圧力を加えるねらいがあるとみられます。

優遇措置の停止 双方への影響が限定的な品目選んだか

中国政府が台湾からの輸入に関する関税の優遇措置を停止すると発表した12品目のうち、プロピレンはプラスチック製品の原料で、自動車をはじめ幅広い産業で利用されています。

またキシレンは水にとけにくい化合物の溶剤として建設業や印刷業などで活用されています。

プロピレンやキシレンは、いずれも中国が主要な生産国で、中国国内では需要に対して供給が多い状態にあるという指摘もあります。

また台湾からの輸入総額に占める割合が低いという調査結果も出ていて、中国政府は双方への影響が限定的なこれらの品目を選んだ可能性があると指摘されています。

中国「一つの中国に基づき協議 解決望む」

これについて、21日、中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の報道官は「台湾海峡両岸は『92年コンセンサス』に基づき、『経済協力枠組み協定』に署名した」と強調しました。

「92年コンセンサス」は1992年に中国の共産党政権と当時の台湾の国民党政権が「中国大陸と台湾が一つの中国に属すると確認した」とされるもので、中国が台湾との対話の前提条件としています。

現在の台湾の民進党政権は、「92年コンセンサス」の存在を認めていないことから、中国の国務院台湾事務弁公室の報道官は「双方が『92年コンセンサス』に基づいて、経済貿易関係のさまざまな問題について協議し、解決することを望む」とも述べ、台湾側に「92年コンセンサス」の受け入れを改めて迫った形です。

台湾では1月、総統選挙が行われ、政権奪還を目指す最大野党・国民党の侯友宜候補は「92年コンセンサス」の受け入れを明言しており、中国としては国民党による政権交代に期待を示し、台湾側を揺さぶる思惑があるとみられます。

台湾「まさに経済的な威圧だ」

台湾の内閣にあたる行政院の林子倫報道官は、定例の記者会見で「中国の調査は透明性に欠いているだけではなく、事実をわい曲し台湾が『経済的枠組み協定』の規範に反していると結論づけている。政治的な目的が大きいことは明らかで、まさに経済的な威圧だ」と述べ、中国側の対応を批判しました。

最大野党・国民党の候補 民進党政権にも批判の矛先

台湾総統選挙で政権奪還を目指す最大野党・国民党の侯友宜候補は21日開いた会見で、中国政府の決定について「台湾の人たちの感情を著しく傷つけるものだ」と批判しました。

一方で「中国側が貿易障壁の調査を始めた時、皆が経済協力枠組み協定の停止を心配したのに、民進党政権は具体的な対応を何もとらなかった」と、民進党政権にも批判の矛先を向けました。

台湾の有権者に対して「民進党政権の失策」と印象づけて、選挙戦を有利に運ぼうという思惑がありそうです。