睡眠時間の推奨 成人は6時間 “睡眠の質”上げるポイントは?

皆さんは一日に何時間の睡眠をとっていますか?

厚生労働省の検討会は健康のために推奨する睡眠時間や生活習慣を世代ごとに示した「睡眠ガイド」を新たにまとめました。

睡眠アドバイスのスペシャリストに聞くと、「寝始めから3時間の睡眠の質」が最も大切だということです。

どうすれば「質」は高まるのか、ポイントを教えてもらいました。

厚生労働省の検討会「成人の睡眠時間は6時間以上 推奨」

厚生労働省は、およそ10年前に健康的な睡眠のための指針をまとめましたが、その後も睡眠による休養を十分とれていない人が増えているなどとして、今回、専門家による検討会で推奨する睡眠時間や生活習慣を世代ごとに示した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を新たにまとめました。

この中で世代を成人と子ども、それに高齢者の3つに分け、このうち成人については推奨する睡眠時間を6時間以上を目安とするとしました。

また子どもについては、
小学生は9時間から12時間
中学生・高校生は8時間から10時間確保することを推奨しています。

一方、高齢者については、寝床にいる時間が8時間以上にならないことを目安に必要な睡眠時間を確保してほしいとしました。

「睡眠休養感」が低いほど死亡リスク高まる

また今回は睡眠について近年の研究で科学的に明らかになった内容も盛り込まれました。

この中で、成人と高齢者は、目覚めた時に体が休まったと感じる「睡眠休養感」が重要で、アメリカで行われた調査では、40歳から64歳の働き盛りの世代について、睡眠時間が5時間半未満で「睡眠休養感」が低いほど死亡リスクが高まったという結果が紹介されています。

そして「睡眠休養感」を高める対策としては、就寝間際に夕食をとったり、朝食を抜いたりといった習慣の改善をあげています。

睡眠不足の子ども “肥満リスクや学力低下”の報告も

一方、子どもについては研究の結果、睡眠時間が不足すると肥満のリスクが高くなったり、学業成績が低下したりしたという報告があり、対策として生活習慣に注意し、小学生から高校生までは一日に1時間以上体を動かし、ゲームやスマートフォンの利用時間を2時間以下にすることを推奨しています。

今回まとまった「睡眠ガイド」は早ければ来月(1月)にも厚生労働省のホームページで公開され、どう活用していくかについて有識者会議を立ち上げ議論していくとしています。

日本人の睡眠時間 世界でも少ない

日本人の睡眠時間は、世界のほかの国と比べても少ないという調査結果が出ています。

OECD=経済協力開発機構のおととしの(2021年)調査によりますと、日本人の平均睡眠時間は、7時間22分で各国平均の8時間28分より1時間以上短く、33か国の中で最も短いという結果になりました。

専門家「日本人は睡眠に無頓着 幸福度低い要因に」

睡眠の問題に詳しく厚生労働省の検討会の座長も務める久留米大学の内村直尚 学長は、日本人の睡眠時間の短さについて次のように指摘しています。

久留米大学 内村直尚 学長
「日本人は睡眠に対して無頓着なところがあり、眠ることを犠牲にして働くことが頑張っている証拠だとして、戦後、睡眠を削って働いたり勉強したりすることによって経済成長と教育のレベルを高めてきたと思う。それが日本人の健康寿命を短くしたり幸福度を低くしたりといった一つの要因になっている」

睡眠に関する悩みでクリニックに訪れる人も

都内の医療機関には、さまざまな世代の人たちから睡眠に関する悩みが寄せられています。

睡眠や生活習慣病などを専門とする東京 港区のクリニックでは、一日に20人ほどが睡眠に関する悩みや睡眠障害で受診していて、21日も眠りの浅さや朝起きたときの疲労感を訴える人が訪れていました。

40歳の女性
「毎日、眠りが浅いので、寝ている間はずっと夢を見ていて、起きても休んだ感じがしないという状態が慢性的にあります。専門的に診てもらえて安心感があります」

58歳の男性
「日中に眠気があり、車の運転をやめて休息をとることもありました。治療で症状がなくなったので睡眠の質は重要だと感じています」

クリニックによりますと、中学生から75歳以上の後期高齢者まで幅広い世代の人たちが訪れていて診察では体調やホルモンバランス、睡眠時の呼吸や脳波の状態を検査し、必要に応じて薬を処方しているということです。

また、それぞれの年代に合わせて、推奨される睡眠時間や生活習慣の見直しなどを伝えています。

「あおやま睡眠・内分泌クリニック」 和合健彦 院長
「日中の眠気が原因で、子どもであれば先生から注意されたり、大人では仕事の効率が落ちたりとさまざまな問題が出ています。睡眠が体にも悪影響を及ぼすことがまだまだ広く認知されていないと感じるので、国が指針を出して、眠りの問題を改善しようという動きはよいことだと思います」

睡眠アドバイスのスペシャリスト「寝始め3時間が重要」

睡眠の質を上げためにはどうすればよいのか。

寝具メーカーの「西川」で睡眠アドバイスのスペシャリスト、「スリープマスター」に認定されている、森優奈さんに“そのコツ”について話を聞きました。

森さんは、睡眠において最も重要なことは「寝始めから3時間の睡眠の質」だと指摘します。

たとえ十分な睡眠時間が確保できたとしても、寝始めの3時間の質がよくないと、朝すっきり目覚める事ができなかったり、午前中でも眠気を感じたりすることがあるといいます。

一方で、ただ、3時間寝ればいいというわけではなく、成人では6時間から7時間の睡眠は必ず必要で、まとまった睡眠時間をとるのが理想的だと指摘しています。

寝始めから3時間の睡眠の質を上げるために、一日の生活の中でのポイントをあげてもらいました。

《朝》
▽朝は深呼吸を数回する程度の短い時間でもいいので日光を浴びる。

《日中》

▽運動する場合は、午後から夕方までが望ましいとしていて、夜、寝る前は軽めのストレッチが効果的だといいます。

《夜》

そして
▽夕食と飲酒は睡眠の2時間から3時間前までに済ませる。
▽入浴は就寝の1時間前までに行い、40度ほどのお湯に15分~20分程度つかるのが理想的だといいます。

また、お気に入りのパジャマに着替えるなど、「自分なりの入眠儀式」を毎日行うことで気持ちが切り替わり、入眠しやすくなるといいます。

「昼寝」を推奨 正午~15時に15分~20分程度

また、眠気を感じる昼下がり。森さんは「昼寝」を推奨しているといいます。

森優奈さん
「正午から午後3時ぐらいの間に眠気を感じることがあると思うが、それは私たち人間の体のリズムの一環で、自然のことなので、その時に頑張って仕事をしたり勉強したりするのではなく、仮眠は、正午から15時の間に15分から20分程度とることを勧めています」

その際に、気をつけるポイントは、ソファーなどリクライニングできる場所だったり、机の上に伏せたりして、完全に体を横にしないことが理想的だとしています。

また、長時間の昼寝は夜の睡眠に影響を及ぼしたり、昼寝から覚めたあとに活動のパフォーマンスが落ちてしまう可能性があるといいます。

寝る前のスマホ利用は?

一方、就寝の直前までスマートフォンが手放せない人も多いと思います。

森さんは、今の時代、利用を完全に控えるのは難しいとしたうえで、設定を夜間のモードにしたり、ブルーライトをカットするシートを張ったりするなどして、できるだけ画面の照明を落として使うことを勧めています。

そのうえで、視聴する内容は、できるだけリラックスできるコンテンツや、自分の頭の中で考えてしまうような内容でないものがいいとしています。

睡眠に特化したサービスを提供するホテル

都内では睡眠に特化したサービスを提供するホテルも登場しています。

東京 港区にあるカプセルホテルでは、通常の宿泊のほか仮眠ができるプランを提供していて、21日も日中だけで3人が利用していました。

最初の1時間は1000円で、1時間追加するごとに500円かかるプランとなっています。

ホテルによりますと30代から40代の男女の利用が多く、多い日には一日で10人が仮眠をとるということです。

また、宿泊プランの場合はベッドに設置されたセンサーでいびきの回数や大きさ、心拍や寝返りの回数を測定することができ、赤外線カメラで寝顔を撮影することも可能です。

測定結果によってはホテル側が専門のクリニックや病院を案内しています。

「ナインアワーズ赤坂・スリープラボ」の運営会社 米本秀高さん
「以前は睡眠時間が短いことが是とされていた感覚がありましたが、今は睡眠時間を確保することはかっこいい、あるいは非常に大事だという認識に変わっていると感じます。そういった利用者がホテルをうまく活用してくれています」