校則公表の公立高校6割に 行き過ぎた校則問題めぐり NHK調査

行き過ぎた校則の問題を受け、文部科学省が校則を公表し絶えず見直すよう手引きを改訂して1年。
ホームページなどで校則を公表している公立高校が少なくとも全国の6割に広がっていることがNHKの調査でわかりました。
一方、校則の理由を明示している学校や生徒が見直しに参加している学校は1割から3割にとどまり、専門家は「学校間で二極化している」と指摘しています。

文部科学省は去年12月、小学校から高校までの生徒指導の手引きを12年ぶりに改訂し、校則については
▽ホームページなどで公開し、定められた背景などを示すこと
▽マイナスの影響を受ける児童や生徒がいないか検証し絶えず見直しを行うこと
▽見直しには児童や生徒が参加すること
などを求めていました。

改訂から1年 校則公表の公立高校“6割”に NHKアンケート調査

NHKでは改訂から1年にあわせ、全国の都道府県の教育委員会に公立高校の状況についてアンケート調査を行いました。

その結果
▼校則をホームページなどで公表している学校が「ある」と回答したのは40の教育委員会で、あわせて2053校、公立高校全体の少なくとも59%に広がっていることがわかりました。

一方で
▼校則の理由や背景を示している学校が「ある」のは21で、把握されている範囲では324校
▼見直す際の手続きを示している学校が「ある」のは24で、664校、見直しに生徒が参加している学校が「ある」のは42で、1000校でした。

学校数を把握していない教育委員会も少なくなく、全体の1割から3割にとどまっていました。

また
▼校則の見直しに課題を感じるか聞いたところ、「感じる」「やや感じる」という回答が18、「感じない」「ほぼ感じない」が29でした。

▼課題を「感じる」「やや感じる」と答えた教育委員会に理由を複数回答で聞いたところ
▽「学校間で温度差がある」が14と最も多く
▽「学校の秩序が乱れる懸念がある」が7
▽「教員が忙しく対応できない」が6などとなりました。

専門家は「校則公開の動きは評価できる一方、前向きな学校とそうでない学校で二極化しており注視していく必要がある」と指摘しています。

文部科学省は今後、よい事例を収集して全国に共有し、取り組みを促すことにしています。

「地毛証明書」や「下着の色指定」は?

今回の調査では
▼生まれつきの髪の色を証明させる「地毛証明書」を提出させる学校があると回答したのは17の都府県で、教育委員会が把握する範囲で28校でした。

NHKがおととし行った調査では、25の都道県で、教育委員会が把握するだけで272校ありました。

また
▼「ツーブロック」と呼ばれる髪型を禁止する学校があるのはおととしの調査では30都道府県、少なくとも208校ありましたが、今回は25県で、少なくとも72校でした。

▼アンダーシャツも含めた「下着の色を指定」する学校があるのはおととしの調査では25都県で少なくとも181校ありましたが、今回は18県、少なくとも66校と、それぞれ減少していました。

これらの校則については、文部科学省が見直しの事例にあげていて、多くの教育委員会がすでに見直しを行ったと回答していますが、一部では把握していなかったり見直す予定がなかったりする教育委員会もありました。

校則見直しの難しさや効果について 現場の声は?

今回のアンケート調査では、校則見直しの難しさや効果、実際の取り組みについても意見が寄せられました。

▼このうち石川県教育委員会は、悩みとして
▽「校則が緩和された場合、一部の生徒が学級や学校の秩序を乱すのではないかという懸念」や
▽「生徒、保護者、教員が対話する時間の確保が難しい」と挙げた一方で

校則の見直しに取り組んでよかった点として
▽「生徒との対話の中で、お互いの本音を話し合うことができた」ことや
▽「見直しに取り組んだ生徒にとって、大きな励み、やりがいとなった」ことを挙げています。

▼奈良県教育委員会は「多くの学校で時代の流れに合わせて校則の見直しを進めようという動きはみられる」としつつ、「校則を見直すことで秩序が乱れるという固定観念もあることから、大きな見直しにつながらない学校もある。校則を変更したあとも、校則を守れない生徒やその保護者への対応に苦慮している学校もある」としています。

▼沖縄県教育委員会は現場の教員からの意見として、「校則見直しの対応などを学校に大きく委ねられており、負担を感じている」とか「どこまで認めるかなど線引きはなかなか難しい」、「校則の見直しに特化した研修を実施してほしい」といった声が寄せられているとしました。

このほか課題としては
▽「就職試験への対応を考えると頭髪服装をどこまで許可するか難しい」とか
▽「生徒の意見に安易なものがある」といった声のほか
▽「校則を見直す意義などについて教職員間で十分な共通理解が図られていないことがある」という声も複数ありました。

よかった点としては
▽「生徒の主体的な学校づくりが進んだ」とか
▽「生徒が主体的に校則を遵守しようとする意識が高まった」といった声のほか
▽「校則の見直しの議論で生徒が多様な価値観や考えに触れ、多角的な視点で物事を捉えることができるようになった」という声もありました。

また、実際の取り組みとして、生徒が主体となってSNSなどの利用のルール決めを行った例が挙げられていました。

▼徳島県教育委員会は今年度、全県立学校で「生徒が主体的に参画できる校則の見直し」を行い、10月に「見直した校則」と「見直しの過程」を学校や県のホームページで公開したとしています。

今後は県立学校の好事例の紹介などを通して、小中学校における「児童生徒主体の校則の見直し」の加速を支援するということです。

【専門家】名古屋大学大学院 内田良教授 “学校間で二極化”

今回の調査結果について、学校現場の問題に詳しい名古屋大学大学院の内田良教授は「校則の公表は、透明性を高めて外部に説明できる内容にする観点で行われてきたもので、ホームページへの掲載などが進んでいるのは非常に良い傾向だ」と評価した一方で「なぜ校則があるのか、学校側が説明し生徒も納得したうえで守られることが重要で、理由を説明できないようなルールはいらないはずだが、そういった認識でいる学校は少ない」と指摘しています。

その上で「実際には生徒から『校則がなかなか変わらない』という声や、教員から『校則を変えようと提案しても周囲の教員の協力が得られない』という声も聞かれる。公表や見直しの取り組みに積極的な学校と、全く動いていない学校で二極化していると感じる」と話していました。

そして校則のありかたについて「人権侵害にあたるような理不尽な校則は学校側が率先して変えた上で、スマートフォンの使い方など共同生活を送る上でのルールは、生徒が参加しながら決めることが必要だ。大人が校則で服装や持ち物、休みの過ごし方まで決めるのでなく、子どもに選択の幅を認め自分で考えながら成長していくという考え方が重要だ。教育界全体で校則のあり方についての議論も求められる」と指摘していました。