「ろう者」「難聴者」役などをドラマで演じた当事者たち

土曜ドラマ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」。主演の草※なぎ剛さんが演じるのは「手話通訳士」。自身は耳が聞こえるなかで、耳の聞こえない人たちの日常をサポートする仕事です。
このドラマ、ストーリーの根幹を担う「ろう者」や「難聴者」の役を、およそ20人もの当事者が演じています。「ろう者」と、聞こえる「聴者」。それぞれの個性を生かして、共に、ひとつの作品をつくることを目指しました。
今回、出演した当事者たちを取材しました。分け隔てのない撮影現場で感じたこととは。
(※「なぎ」は「弓へん」に「剪」)

NHKプラスで見逃し配信をしています

12月19日(火)におはよう日本で放送した番組は、NHKプラスで放送後1週間まで見逃し配信をしています。(配信は12月26日(火)午前7:45までです)

画像をクリックすると見逃し配信が見られます
(12月26日(火)午前7:45まで)

南雲麻衣さん。「ろう者」の俳優です。ドラマでは過去に殺人事件で父親がつかまり、世間から身を隠すように暮らす「ろう者」という難しい役どころを演じました。

南雲麻衣さん

特別扱いというのものは全く感じなかったです。現場ではひとりの俳優としてのぞんだ。

南雲さんは3歳半のとき、病気で聴力を失いました。以来、手術で人工内耳をつけ、手話ではなく、わずかに聞こえる音だけを頼りに生活を続けてきました。しかし、学校では友達の話がうまく聞き取れないため、輪には入れず孤独を感じていたといいます。

南雲麻衣さん

知りたい。いま何が起こっているんだろうと気になる性格だから、よけいに苦しかったです。

大学生のときに、転機が訪れます。「手話」で表情豊かに会話するろう者に出会った南雲さん。自身も手話を身につけて、自分を表現できる演技の道へ進む決意をしたのです。
舞台などで経験をつみ、今回、テレビドラマのオーディションに挑戦。繊細な表現を求められる重要な役を任されることになりました。
ろう者も、聞こえる「聴者」も、意見をぶつけ合える現場。一人の俳優として自分の
「個性」に自信を持ったといいます。

南雲麻衣さん

きょうはどんな撮影ができるか期待しながら現場に向かったことを覚えています。今後はもっといろいろなチャレンジをしていきたい。

一番右が田代英忠さん

ドラマへの出演を通して、お互いの理解を深めた親子がいます。
草なぎさん演じる主人公の兄役を務めた、ろう者で俳優の田代英忠さん(57)。

田代康生さん

そして、耳が聞こえる息子の康生さん(11)。主人公の幼少期を演じました。

田代さん家族の会話は、両親が「ろう者」のため、すべて手話です。
英忠さん「のってみたい?落ちちゃったら、どうするの?」
康生さん「大丈夫だって」

外での買い物などでは、耳の聞こえる康生さんが会話をつなぐことも多くあります。
そうしたなか、両親は耳が聞こえないため、ふだん康生さんが人としっかりとコミュニケーションがとれているか、心配なことも多いといいます。

生まれた息子が聞こえることがわかって、彼とどう対話すべきか不安を感じました。
恥ずかしがり屋なのに、なぜオーディションを受けると決めたのか、不思議。

実は、康生さん自身も両親の不安を感じとっていましたが、だからこそ出演を志願したのだといいます。

田代康生さん

人と話すというコミュニケーションの面で(両親に)心配されてる部分があって自分でも感じる。心配しなくて大丈夫だよとメッセージを伝えたかった。

さまざまな人とコミュニケーションをとりながら演技を作っていった康生さん。こだわったのは、耳の聞こえない親にがんの告知を通訳するシーン。
「がんが進んでいて」
「もって、あと半年」

表情や目線など、康生さんにしかできない「聴者とろう者の感情をつなぐ表現だった」と評されました。

田代康生さん

演じることがすごくすごく楽しかった、またやってみたい。

田代英忠さん

ここまでできていると思わなかった。ずっと不安でいっぱいだったんですけど、思い出しただけでも少し涙が出てきそう。

ドラマ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」の後編は、
12月23日(土)午後10時放送予定です。