フーシ派 “紅海航行中の船舶2隻攻撃”主張 乗組員にけがなし

ガザ地区のイスラム組織ハマスとの連帯を掲げるイエメンの反政府勢力、フーシ派は18日、イスラエルに関係する船舶だとして、紅海を航行中の船舶2隻に対し攻撃を行ったと発表しました。一方、ロイター通信などによりますと、攻撃を受けた石油タンカーの乗組員にけがはなかったということです。

イエメンの首都サヌアを含む北部を掌握する反政府勢力フーシ派は18日、SNSを通じて、イスラエルに関係する船舶2隻に対し攻撃を行ったと発表しました。

このなかで「石油タンカーと貨物船のあわせて2隻に対し攻撃を行った。われわれの警告を無視したため攻撃した」とした上で、標的はあくまでもイスラエルの船舶やイスラエルに関係する船のみだと強調しました。

一方、ロイター通信などによりますと、攻撃を受けた石油タンカーの乗組員にけがはなかったということです。

フーシ派はガザ地区のハマスとの連帯を掲げ、ガザ地区に十分な支援物資が行き届くまで同様の攻撃を続けると主張しています。

米中央軍も“フーシ派が商船2隻に攻撃”と発表

アメリカ中央軍は、紅海を航行していた商船2隻に対して、イエメンの反政府勢力、フーシ派による攻撃があったと発表しました。

アメリカ中央軍によりますと、紅海南部で18日午前9時ごろ、ケイマン諸島船籍の石油タンカーが、イエメンのフーシ派の支配地域から発射された無人機と弾道ミサイルによる攻撃を受けたということです。

この石油タンカーからの支援の要請を受けて、近くにいたアメリカ海軍のミサイル駆逐艦「カーニー」が被害状況を確認するため駆けつけたとしています。

また、同じ時間帯に、別の貨物船からも水中で爆発があったと報告があったということです。

アメリカ中央軍によりますと、いずれの船舶でもけが人は報告されていないということです。

フーシ派は、イスラム組織ハマスとの連帯を掲げて紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返していて、18日も、SNSを通じて、イスラエルに関係する船舶2隻に対し攻撃を行ったと発表していました。

アメリカはフーシ派による攻撃を「国際的な平和と安定に対する脅威だ」として警戒を強めています。

米 航行の安全守る有志連合 英などと創設へ

紅海を航行中の船舶に対し、イエメンの反政府勢力・フーシ派による攻撃が相次いでいることを受けて、アメリカのオースティン国防長官は航行の安全を守るためにイギリスやバーレーンなどと有志連合を創設すると発表しました。

アメリカのメディアは、多国籍の海軍部隊によって商船を守る対策に乗り出すと伝えています。

アメリカのオースティン国防長官は18日、イギリスやバーレーン、カナダ、フランス、イタリアなど少なくとも合わせて10か国で新たに有志連合を創設し、対策の強化にあたると発表しました。

イエメンの反政府勢力・フーシ派が、紅海を航行中の船舶に対し攻撃を続けており、航行の安全を守ることを目的としています。

ウォール・ストリート・ジャーナルなどアメリカのメディアは、多国籍の海軍部隊によって商船を守る対策や紅海やアデン湾のパトロールに乗り出すなどと伝えています。

オースティン長官は18日に行われた会見で、紅海につながる海峡について「毎日、多くの国際的な貿易が行われる非常に重要な場所であり、われわれは航行の自由を守るためにできるかぎりのことをする」と訴えました。

オースティン長官はまた、19日にフーシ派による攻撃への対策について協議するため、同盟国などとオンラインの閣僚級会合を開くことも明らかにしました。

専門家“輸送時間かかることが第一の影響”

イエメンの反政府勢力・フーシ派が紅海で船舶への攻撃を繰り返している影響について、国際物流に詳しい拓殖大学の松田琢磨教授は「紅海の北にあるエジプトのスエズ運河が使えなくなって遠回りを強いられ、輸送時間などがかかるということが第一の影響だ」と話し、配送の遅れやそれにともなう輸送コストの上昇などの影響を指摘しています。

具体的には「アフリカの喜望峰を回るう回ルートを使うと、たとえば、日本とイギリスの間では距離が7000キロほど長くなり、船の速度にもよるものの、1週間から2週間くらい時間のロスが発生するだろう。燃料費や船員の労働時間の増加が考えられる」と話しています。

一方でコロナ禍以降、世界的に船舶の建造が進み、隻数は十分にあるとして、品物が届かずに不足する可能性は低いということです。

日本経済への影響については「スエズ運河は日本とヨーロッパの間の貿易に使われる航路で日本からの輸出は機械類や自動車、それに自動車部品が中心だ。ヨーロッパからは食品や化学製品の輸送によく使われている。輸入品を見ると、そこまでヨーロッパのものでなければいけないものがあるわけではなく、現時点では大きな影響はないだろう」と話しています。

そのうえで「船舶への攻撃が今後どれくらい続き、それによってものの輸送がどれくらい遅れるかが一番の懸念事項だ」として、引き続き状況を注視する必要があると話しています。