英石油大手BP “紅海経由する海上輸送 一時停止” 安全を懸念

イギリスの大手石油会社BPは18日、「紅海における治安状況の悪化を受けて紅海を経由するすべての海上輸送を一時的に停止することを決定した」と発表し、海上輸送のルートをアフリカ南端の喜望峰を回るルートに変更することになりました。

紅海ではイエメンの反政府勢力・フーシ派がガザ地区のイスラム組織ハマスとの連帯を掲げて航行する船舶への攻撃を繰り返していて、先月には日本企業が運航する貨物船が乗っ取られています。

イギリスメディアによりますと、スイスの海運大手MSCやデンマークのA.P.モラー・マースクもすでに同様の対応を決めています。

海運業界などにとってはより遠距離の海上輸送を強いられた形で、輸送コストの上昇や配送が遅れるなどの影響が指摘されています。

“紅海経由の一時停止” さらに拡大も

台湾の大手海運会社の陽明海運は18日、紅海を経由する海上輸送ルートをう回させると発表しました。

今後2週間、リスクの高い海域を航行する可能性のある船舶については、直ちに喜望峰周辺にう回するか、安全な場所で待機する予定だということです。

陽明海運は「紅海とアデン湾における商船への攻撃のリスクが続いていることを考慮し、乗組員や船舶、貨物の安全を確保するため対策を実施する」としています。

また、コンテナ船を運航する台湾のエバーグリーン・マリンも、18日、「リスクと安全を考慮しイスラエルとの間で輸出入を行う業務を一時的に停止する」と発表し、ロイター通信によりますと、同じく紅海を避けて喜望峰を回る海上輸送ルートに変更するということです。

さらにフランスのコンテナ海運世界大手のCMA CGMも18日、「紅海海域で起きている商船への攻撃を引き続き深く懸念している」として、同じく紅海を避けて喜望峰を回る海上輸送ルートに変更すると発表しました。

原油価格上昇の懸念も

紅海のイエメン沖の海峡やスエズ運河を経由する航路は海上輸送の要衝です。

EIA=アメリカのエネルギー情報局によりますと、ことし上半期にこの航路で運ばれた原油や石油製品は世界全体の原油や石油製品の輸送量のおよそ12%を占めたということです。

しかし、フーシ派が紅海で船舶への攻撃を繰り返す中、海上輸送を一時的に停止する動きが広がっています。

こうした動きは原油価格やサプライチェーンに影響を及ぼすと懸念する見方も出ています。

イギリスのBBCは18日、国際情勢を分析する調査会社「ユーラシアグループ」のアナリスト、グレゴリー・ブリュー氏の見方として、さらに多くの輸送会社が航路の変更を行い、今後も1週間から2週間以上航路の混乱が続く場合は原油価格の上昇につながる可能性があるとの見方を伝えました。

またアメリカのCNNは、18日、国際貨物情報を提供する会社「フレイトス」の調査部門責任者、ジュダ・レビン氏などの話として、海上輸送の運賃の値上げや輸送時間の延長も予想されると指摘しました。

その上でCNNは、海上輸送のルートをアフリカの喜望峰に切り替えることで、輸送にかかる時間は最大で3週間伸びるとする見方も伝えています。