【解説動画】イスラエルとアメリカ 軍事作戦めぐり深まる溝

ガザ地区への地上侵攻を進めるイスラエルと、強く支持してきた同盟国、アメリカ。
しかしいま、ガザ地区への軍事作戦をめぐって両者の溝が深まっています。


「キャッチ!世界のトップニュース」望月麻美キャスターの解説です。
(12月15日放送)

※動画は3分43秒、データ放送ではご覧になれません。

両者の意見が異なっているのは大きく2点です。

▽ひとつは、「戦闘をいつまで続けるか」です。

アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官はイスラエルに指示はしていないとした上で、可能なかぎり早く戦闘が終わることが望ましいという考えを示しています。

また、ニューヨーク・タイムズは14日、4人のアメリカ政府高官の話として、バイデン政権はイスラエル政府に対し、年末ごろまでに大規模な地上侵攻を終え、より標的を絞った攻撃にするよう伝えたと報じました。

背景には高まるアメリカ国内外からの非難があります。
増え続ける民間人の犠牲、そして、悲惨な人道状況に、国際社会ではイスラエルへの非難が日増しに高まっています。

またアメリカの世論も、イスラエルへの支持は低下してきています。

さらに、バイデン政権の足元である民主党の一部の議員からも、イスラエル支援に反対する声が出てきています。

バイデン大統領は12日、イスラエルへの軍事支援を継続する立場に変わりはないと強調しながらも、「無差別的な爆撃によってイスラエルは世界で支持を失いつつある」と踏み込んで苦言を呈していました。

一方、イスラエルです。
ガラント国防相はハマスの壊滅には少なくとも数か月がかかるとの見方を示しました。

ネタニヤフ首相も13日、「大きな痛み、国際的な圧力に直面しながらも言う。われわれを止めることはできない」と述べました。

ハマスの壊滅という目的達成のために攻撃を続ける方針を強調しています。

▽相違のもうひとつは「戦闘終結後に誰がガザ地区を統治するか」です。

バイデン大統領はイスラエルとパレスチナの「2国家共存」による和平を目指すべきだとしています。
そして、イスラエルはガザ地区を占領したり封鎖したりすべきではなく、最終的にはパレスチナ暫定自治政府が統治すべきだとしています。

一方、ネタニヤフ首相は戦闘後、ガザ地区を事実上、占領下に置く考えを示しています。

深まるアメリカとの見解の違いは、イスラエルの立場にどう影響するのでしょうか。

ネタニヤフ政権にとって痛手となりそうですが、ニューヨーク・タイムズは13日「リスクと共に恩恵もある」として、次のような分析を行っています。

10月7日のハマスからの奇襲攻撃を防げなかったのは政権の失態だという批判もある中、ネタニヤフ首相は「バイデン大統領に立ち向かい、パレスチナ国家の樹立を妨げられるリーダーだ」と、支持層に訴えることができるというのです。

バイデン政権は、来週にはオースティン国防長官がイスラエルなどへの訪問を予定しています。

イスラエルとアメリカの溝は埋まるのか、それともイスラエルが恩恵とされるものを重視し続けるのか注目されます。