警視庁は今月2日の深夜から17日早朝にかけて、3回にわたって新宿 歌舞伎町の「トー横」周辺で一斉補導を行いました。
補導されたのは12歳から19歳の男女合わせて28人で、内訳は高校生が13人、中学生が4人、小学6年生の女の子が1人などとなっています。
住居別では、都内が8人だったのに対し、都外が20人と全体の7割に上っていて、中には、広島県や石川県から来ていた若者もいました。
歌舞伎町「トー横」周辺で28人補導 複数が大量の市販薬を所持
冬休みを前に若者が犯罪やトラブルに巻き込まれるのを防ごうと、警視庁は新宿・歌舞伎町の「トー横」周辺で一斉補導を行い、28人を補導しました。中にはせき止め薬を大量に持っていた人も複数いたということで、警視庁は市販薬の過剰摂取=「オーバードーズ」が目的だったとみて詳しい経緯を調べています。
厚生労働省は18日の会合で、風邪薬などの販売制度の案について議論。「オーバードーズ」をめぐる動きをまとめました。
大量のせき止め薬 「オーバードーズ」目的か
また、市販のせき止め薬を大量に持っていた人も複数いて、警視庁は「オーバードーズ」が目的だったとみて、詳しい経緯を調べています。
警視庁によりますと、ことし先月末までの「トー横」周辺での補導件数は、およそ860件と、去年1年間の1.5倍に増えているということです。
警視庁は今後も随時、歌舞伎町で補導を行う予定で「悪意のある大人もいるので安易な気持ちで来ないでほしい。今後も対策を強化していきたい」としています。
女子児童2人が学校で「オーバードーズ」
今月13日にも、東京 目黒区の小学校で、女子児童2人が持ち込んだ複数の種類の市販薬を過剰に摂取し、救急搬送されていたことが捜査関係者などへの取材でわかっています。
翌14日にも足立区で大量の市販薬を摂取したとみられる若い女性が意識不明の状態で救急搬送されるなど、若い世代を中心に市販薬の過剰摂取=「オーバードーズ」が問題となっていて、警視庁が薬の入手方法など詳しいいきさつを調べています。
「ODしよ」投稿多数の現実
SNSのX(旧ツイッター)では、過剰摂取=「オーバードーズ(overdose)」を意味する「OD」ということばが毎日のように投稿されています。
「つらい ODしよ」
「ODって何錠くらい飲めば楽になれる?1回で楽になりたい」
「気づいたら何錠も飲んでる」
「消えたいって気持ちからやってしまう」
「ODやめたいのに」
投稿では「OD」というキーワードとともに、ネガティブな気持ちを表す表現が見られます。また、過剰摂取をやめたいのにやめられないという心境を吐露する投稿も見られます。
また、「オーバードーズ」という呼び方をめぐってはSNS上での議論も起きています。
「かっこいい響きがある」
「カジュアルに見える」
「興味本位でする人がいるのでは」
と、呼び方を問題視する声が上がる一方で、
「呼び名は関係ない」
「問題はそこではない」
「当事者は本当に悩んでいる」
などとする意見も出ています。
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平均年齢は25.8歳 女性が79.5%
埼玉医科大学病院などが参加する厚生労働省の研究班が「オーバードーズ」に関する調査を行いました。
去年12月までの1年8か月の間、7つの救急医療機関に、解熱鎮痛薬などの市販薬の過剰摂取で救急搬送された122人を対象にしました。
その結果、平均年齢は25.8歳で、男女別では女性が79.5%と8割近くを占め、男性が20.5%でした。
職業別では、学生が33.6%と最も多く、次いでフルタイムで働く人が26.2%、アルバイト・パートが16.4%などとなっていて、7割余りが家族と同居してました。
また、過剰摂取された市販薬は、複数回答で「解熱鎮痛薬」が24.9%、「鎮咳去痰薬」が18.5%、「かぜ薬」が18%などとなっています。
このほか、入手経路は、複数回答で「実店舗」が65.9%と最も多く、次いで「置き薬」が15.5%、「インターネット購入」が9.3%でした。
研究班の医師はこう話します。
喜屋武玲子医師(埼玉医科大学病院臨床中毒科)
「病院に搬送された人は気持ち悪くなっておう吐が止まらなくなったり、ふらつきが強くて歩けなくなったり、思っていた以上の体調不良に驚いたという話をよくする。多くの人は軽症で済むがICUに入るような重篤な状況になる人もいるので注意していただきたい」
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販売制度どうなる?対策は?
こうした中、厚生労働省は18日、専門家の検討会で、乱用を防ぐための販売制度の案について議論を行いました。
案では、乱用されるおそれがある薬について、20歳未満に対しては、複数の販売を禁止して1箱のみの販売とすることや、乱用目的ではないかの確認を薬剤師などが行うこと、それに、購入者の名前を写真付きの身分証で確認し、販売した情報を記録することなどの対策を盛り込んでいます。
厚生労働省の研究班が去年10月までの2か月間で、薬物を使用したとして、全国の精神科を訪れた10代から20代の患者336人を対象に主に使用した薬物を調査したところ、かぜ薬などの「市販薬」が36%と最も多くなっていました。
厚生労働省は、検討会で議論した案を取りまとめて大臣の諮問機関で審議した上で、再来年(2025)以降に医薬品医療機器法の改正を目指していくことにしています。