大阪 クリニック放火事件から2年 遺族や元患者らが犠牲者悼む

大阪 北区のビルに入るクリニックが放火され、巻き込まれた26人が死亡した事件から17日で2年です。現場には朝から遺族や元患者などが次々に訪れ、犠牲者を悼んでいました。

おととし12月17日、大阪 北区のビルに入る心療内科のクリニックが放火され、巻き込まれた患者や医師、スタッフあわせて26人が死亡しました。

この事件では谷本盛雄容疑者(当時61)も死亡し、その後、殺人と放火などの疑いで書類送検され、不起訴となっています。

現場のビルは2年がたった今も、立ち入りができないようになっていて、クリニックが入っていた4階は割れた窓に板がはり付けられ、看板も当時のまま残っています。

事件から2年となる17日、現場には朝から遺族やクリニックに通っていた元患者などが次々に訪れ、犠牲者を悼んでいました。

遺族「あの日から気持ちは何も変わっていない」

このうち、亡くなった院長の西澤弘太郎さん(当時49)の妹、伸子さんは、午前8時半前に夫や友人とともに訪れ、静かに手を合わせていました。

また、クリニックに通っていた30代の娘を亡くした両親も現場を訪れました。

娘は事件当日が最後の通院の日だったということで、母親は「あの日から気持ちは何も変わっていません。まだまだ、これから楽しいことがたくさんあったはずなのに、事件に巻き込まれてしまい、本当に悔しいです」と話していました。

クリニックに5年間通っていたという30代の元患者の男性は「去年は、まだ気持ちが落ち込んだままで、ここに来ることができませんでした。西澤先生が職場に復帰できるよう応援してくれていたので、ここで立ち止まらないようにしたいです」と話していました。

元患者「新しい勤務先見つかったこと 西澤先生に報告」

現場のビルの前では17日、亡くなった人の友人やクリニックに通っていた元患者たちが訪れ、それぞれ花を手向けて手を合わせていました。

事件で犠牲になった患者の女性と同級生の30代の男性は「同じ中学校と高校に通っていました。今も卒業アルバムで顔を見ると、『もっと話したかった』と思います。同級生の1人として忘れないし、これからも忘れません。きょうは『会いに来たよ』と伝えました」と話していました。

また、事件当日の午後にクリニックを受診する予定で、3年間通院していたという30代の元患者の男性は「きょうは新しい勤務先が見つかったことを西澤先生に報告しに来ました。いつも前向きなことばをかけてくれて、私の道しるべでした。クリニックに通うことが大切な日常だったので、今も時が止まっている感じがします」と話していました。

西澤院長の妹「見守ってほしいと兄に伝えた」

クリニックの院長で事件で亡くなった西澤弘太郎さん(当時49)の妹、伸子さんが現場を訪れた後、報道陣の取材に応じました。

現場のビルの前で手を合わせたのは17日が初めてだということで、伸子さんは「兄を亡くした悲しみと向き合うのが怖く、これまで手を合わせることができませんでしたが、ことしは気持ちの変化があり、向き合えるようになりました。きょうは現場に手を合わせに来る人や、兄を思ってくれている人のことを見守ってほしいと兄に伝えました。きっとほほえんでうなずいていると思います」と話していました。