【15日詳細】イスラエル軍 ガザ地区全域で軍事作戦続ける

イスラエル軍がガザ地区への地上作戦を続ける中、アメリカのホワイトハウスで安全保障政策を担当する大統領補佐官がイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相やガラント国防相と会談しました。このなかでガラント国防相はハマスの壊滅には少なくとも数か月がかかるとの見方を示しました。

イスラエルやパレスチナに関する日本時間12月15日の動きを随時、更新してお伝えします。

ケレム・シャローム検問所 物資搬入を一時的に許可 イスラエル

イスラエル政府は15日、ガザ地区への人道支援をめぐって、イスラエルとの境界にあるケレム・シャローム検問所からの物資の搬入を一時的に許可すると発表しました。

現在、支援物資の搬入は、エジプトとの境界にあるラファ検問所に限定されていて、国連は、ガザ地区の人道危機に対応するためケレム・シャローム検問所からも安全検査だけでなく物資の搬入が必要だと訴えていました。

“ガザ地区作戦 3週間以内に戦術切り替えを” 米大統領補佐官

アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは14日、バイデン政権がイスラエルに対し民間人の犠牲を少なくするため、3週間以内にガザ地区での作戦をより正確な戦術に切り替えるよう要求したと報じました。

アメリカは、より小さな規模の精鋭部隊が人口が密集した地域に散発的に入り、イスラム組織ハマスの幹部の捜索・殺害やトンネルの破壊などをより正確に行う作戦への移行を求めているとしています。

ただ、イスラエル側が示した案はアメリカが想定しているよりも作戦の移行に時間がかかる内容だったということです。

アメリカ・ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官は14日からイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相らと会談しました。

サリバン補佐官は15日、イスラエルの商業都市、テルアビブで会見し「我々は激しい攻撃の段階からの切り替えについて非常に建設的なやりとりを行い、それが行われると期待している」と述べ、イスラエル側の作戦のあり方について民間人の犠牲が少なくなるよう協議を重ねていく考えを示しました。

ただ、具体的にいつ、どのような条件で作戦を切り替えていくかについては引き続き密接に議論すると述べるにとどまりました。

サリバン補佐官はこのあと、ヨルダン川西岸でパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長とも会談する予定です。

ガザ地区ではサリバン補佐官の滞在中も、民間人に犠牲者がでています。

パレスチナテレビなどによりますと15日、ガザ地区南部ハンユニスでは、住民の避難先になっている学校で爆発があり、少なくとも12人が死亡し、大勢のけが人がでたということです。

ガザ地区での死者数は1万8787人に上っていて、民間人の犠牲者をいかに防ぐかが、喫緊の課題になっています。

“イスラエル側から攻撃縮小の条件など説明” 米大統領補佐官

アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は14日、イスラエルでネタニヤフ首相と会談しました。

このなかでイスラエル側からガザ地区での軍事作戦について、標的を絞った攻撃に規模を縮小する条件などについて説明があったことを明らかにしました。

アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は14日、イスラエルを訪問し、ガラント国防相に続き、ネタニヤフ首相と会談しました。

ホワイトハウスの発表によりますと、会談ではイスラエル側からガザ地区での軍事作戦について、現在行われている大規模な地上作戦から、標的を絞った攻撃に規模を縮小する条件などについて説明があったとしています。

また、アメリカのニュースサイトアクシオスはアメリカとイスラエルの当局者の話として、サリバン補佐官が攻撃の規模縮小について「数か月ではなく数週間のうちに行われる必要がある」とイスラエル側に要請したと伝えました。

バイデン大統領もまた14日、イスラエル軍による攻撃について「われわれは市民の命を守ることに集中してほしいと考えている」と述べて、軍事作戦の進め方について慎重になるべきだという考えを強調しました。

サリバン補佐官は15日には、ヨルダン川西岸のラマラでパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長と会談することにしていて、ホワイトハウスは戦闘終結後のガザ地区の統治などについて協議するとしています。

また、アメリカ国防総省はオースティン国防長官が今月16日からイスラエルなどを訪問することを明らかにしました。

ネタニヤフ首相などとの会談で民間人の安全を考慮することの重要性を強調するとしています。

米高官 会談でガザ地区への支援物資搬入も協議

サリバン補佐官はネタニヤフ首相らとの会談の中でガザ地区への支援物資の搬入についても協議しました。

このうち焦点となっているガザ地区とイスラエルとの境界にあるケレム・シャローム検問所を通じた支援物資の搬入について、会談のなかで協議したことをバイデン政権の高官が記者団に対して明らかにしています。

また、この高官は近く、搬入が実現するという見通しを示しました。

ガザ地区全域で軍事作戦 激しい戦闘 深刻な物資不足も

イスラエル軍は、イスラム組織ハマスの壊滅に向けてガザ地区全域で軍事作戦を続けています。

現地では激しい戦闘が起きていてイスラエル軍は14日、南部などで兵士8人が重傷を負ったと発表しました。

また、イスラエルのメディアは、イスラエル軍がガザ地区の住民に対し、ハマスのガザ地区のトップシンワル指導者など幹部の居場所についての情報を提供すれば懸賞金を与えるとするチラシを配っていると伝えています。

一方、AP通信が14日に南部のラファで撮影した映像には支援物資を積んだトラックを子どもたちが追いかけたり、多くの住民たちが支援物資に群がったりしている様子が写っていて、深刻な物資不足がうかがえます。

「ハマス壊滅は容易でなく 数か月以上かかる」イスラエル国防相

アメリカのホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は14日、イスラエルでガラント国防相と会談しました。

会談の冒頭、ガラント国防相は「ハマスの壊滅は容易ではなく、長い時間を要する。数か月以上かかるがわれわれは勝つ」と述べ軍事作戦は長期にわたるという見通しを示しました。

また、サリバン大統領補佐官はイスラエルの戦時内閣の閣議に出席し、ネタニヤフ首相らと人質の解放に向けた協議を行ったうえで、ガザ地区へのさらなる支援物資の搬入や民間人の保護などを求めました。

イスラエル軍の攻撃による死者 1万8787人に

ガザ地区南部のエジプトとの境界に近いラファで14日に撮影された映像では、市街地のあちこちから煙が立ち上り、建物が大きく壊れているのが確認できます。

また、がれきの中から取り残された人を救出したり消火活動にあたったりする人たちの姿も確認できます。

住民の1人は「イスラエル軍は避難してきた人や高齢者がいる家をねらった。ほとんどが女性や子どもだ」と訴えていました。

ガザ地区の保健当局は14日、イスラエル軍による攻撃でこれまでに1万8787人が死亡したとしています。

ハマス政治部門幹部「トンネルに海水 対処できる」

イスラム組織ハマスの政治部門の幹部は14日、レバノンの首都ベイルートで会見し「敵は地上侵攻で5000人以上の兵士が負傷したことを認めているが本当の死者数を隠している」と主張しました。

そのうえで「ガザ地区の統治機構の移行はパレスチナ人が考えるべき問題であり、誰であっても介入することは認められない。戦闘のあとのガザ地区の未来には手を突っ込まず、イスラエルがどうなるかについて考えたほうがよい」と述べ、戦闘終結後のガザ地区の統治をめぐって意見を交わしているイスラエルやアメリカを改めてけん制しました。

また、イスラエル軍がガザ地区の地下トンネルに水を流し込んでいると伝えられていることについては「トンネルに海水を流し込むというイスラエルの脅迫には対処できる。トンネルを構築したのは経験豊かな技術者たちだ」と強気の姿勢を示しました。

“海水を流し込み破壊” 2015年から複数回実施

ガザ地区に築かれた地下トンネルに海水を流し込んで破壊する措置は隣国エジプトが2015年から複数回にわたって実施したことがあります。

当時、ガザ地区が経済封鎖されるなか、エジプトとの境界地帯には数千本の地下トンネルが築かれ、エジプト側から違法に物資を運びこむ、いわゆる密貿易が行われていました。

エジプトの破壊措置によりガザ地区南部のラファではトンネルに流し込まれた海水が地表にあふれだし、地面が泥だらけになったり住宅が水につかるなどの被害が相次ぎました。

当時のイスラエルの閣僚はこの破壊措置について、イスラエルの意向を受けてエジプトが実施したことを明らかにしています。

イスラエル軍 モスク内動画めぐり兵士ら処分へ

イスラエル軍の兵士たちがイスラム教のモスクのなかでユダヤ教の礼拝のことばを唱える様子を写した動画がSNSで拡散しました。

動画ではヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区のジェニンにあるイスラム教徒が礼拝を行うモスクのなかで、イスラエル軍の兵士たちがスピーカーを使ってユダヤ教の礼拝のことばを唱えたりユダヤ教の祭りを祝う歌を歌ったりする様子が写されています。

ジェニンでは、イスラエル軍がたびたび「対テロ活動」としてパレスチナ人の抵抗勢力の掃討作戦を行っています。

イスラエル軍はこれらの兵士たちを直ちに任務から外し、今後、処分すると発表しました。

これに対しパレスチナ外務省は声明で「モスクの神聖さを汚し道徳的価値を嘲笑するものであり、前例のない挑発的なものだ」などと非難しています。

このところイスラエル軍の兵士たちが作戦中に撮影したとみられる映像がSNS上で拡散し、批判の対象になるケースが相次いでいます。

イスラエルの有力メディア、ハーレツは、イスラエル軍の兵士がハマスの戦闘員を殺害したり遺体を軍用車両で何度もひいたりする様子を写した動画をガザ地区から投稿しているとみられるアカウントがあると報じています。

“エジプトがイスラエルの要請で戦闘休止働きかけ”の報道

中東カタール系のメディア「アラビ・ジャディード」は14日、エジプト政府高官の話としてエジプトがイスラエルからの要請を受けて人道的な戦闘休止に向けて働きかけを行っていると伝えました。

記事ではイスラエルがエジプトに対しハマス側との間で新たな交渉を仲介するよう求めていて、以前、合意された戦闘休止の時と同じように
▽ハマス側は拘束している人質を解放し、
▽イスラエル側は刑務所に収監しているパレスチナ人を釈放し、
▽その間、双方は戦闘を休止するとしています。

一方で記事は、ハマスの幹部がこのメディアの取材に応じ停戦が実現するまでは人質の解放交渉に応じることはないとして、記事の内容を否定したとしています。