政治

診療報酬改定 人件費など「本体」0.88%引き上げで調整 政府

政府は、医療機関に支払われる診療報酬の来年度の改定をめぐり、医療従事者の人件費などに充てられる「本体」を0.88%引き上げる方向で最終調整を進めています。

目次

来年度の診療報酬改定をめぐり、政府は、医療従事者の賃上げを行う必要があるとする一方、増加し続ける医療費の抑制も課題となっていて人件費などに充てられる「本体」の扱いが焦点となっていました。

こうした中、岸田総理大臣は15日、総理大臣官邸で武見厚生労働大臣や鈴木財務大臣と会談しました。

その結果「本体」を0.88%引き上げる方向で最終調整を進めることになりました。

今月下旬の来年度予算案の編成までに正式に決定する見通しです。

一方、医薬品の公定価格の「薬価」は、市場価格にあわせる形で1%程度引き下げられ、診療報酬全体では前回・2022年度の改定に続いてマイナス改定となる見通しです。

診療報酬とは

診療報酬は、病院や診療所、薬局などの医療機関に対して支払われる医療費のことです。

▽診療や医療サービスの対価で医療従事者の人件費などに充てられる「本体」と、
▽医薬品や医療機器の公定価格を定める「薬価」の2つで構成されています。

昨年度は総額およそ46兆円が支払われていて、財源の内訳はおおむね保険料が5割、税収などの公費が4割、患者の自己負担が1割程度となっています。

診療報酬全体の水準や個別の診療行為などの価格は2年に1度の改定で国が決めていますが、医療の質の向上や医療従事者の処遇改善を求める声がある一方、現役世代の負担増や財政への配慮を求める声もあり、「改定率」は毎回、予算編成の焦点の1つとなります。

前回・2年前の改定では、「本体」を0.43%引き上げた一方「薬価」を1.37%引き下げて、全体では0.94%のマイナスでした。

2016年度以降「薬価」の引き下げを原資に「本体」を引き上げて、全体の改定率をマイナスにする傾向が続いていました。

改定の焦点と主張は

今回の診療報酬の改定では、高齢化に伴って増え続ける医療費の抑制が課題となる中、医療従事者の賃上げをどう実現するかが焦点となりました。

【医師会・厚労省は】
日本医師会をはじめとする医療関係団体は、今年度の春闘の賃上げ率が3.58%となった一方、医療分野の賃上げはおよそ2%にとどまっているとして、この差を埋めるとともに、来年度以降の賃上げへの対応も必要だとして「本体」の大幅な引き上げを求めました。

また、厚生労働省も30年ぶりの物価・賃金の上昇を反映させる必要があるとしていて、新型コロナの特例加算などを除くと今年度の一般病院の利益率は10%を超える赤字となるとした独自の推計を示し「本体」の引き上げを求めました。

また、財源については、日本全体の賃上げが進むことによる、保険料収入の増加なども考えられると主張していました。

【財務省は】
一方、財務省は、医療従事者の賃上げには理解を示しつつも、現役世代の保険料負担を軽減するためにも「本体」の引き下げが必要だとしてきました。

そして賃上げの原資として活用を求めたのが、診療所の利益剰余金などです。

財務省が独自に行った医療機関の経営状況の調査では、病床を持たない「診療所」の経常利益率の平均は、2020年度の3.0%から2022年度には8.8%に上昇しています。

この結果、利益剰余金が昨年度までの2年間で平均で1900万円増えて1億2400万円となっていて、大半の診療所は賃上げの原資をすでに確保できていると指摘していました。

その上で、病院と比べても診療所の利益率が高いことから、病院と診療所の間で報酬の配分を見直すことなども求めてきました。

国民負担の状況は

国全体の医療費は、高齢化に伴って増加が続くと見込まれていて、国民負担をいかに抑えるかが課題となっています。

診療報酬として医療機関に支払われる医療費の総額は、財務省によりますと今年度の予算ベースでおよそ48兆円にのぼります。

これは保険料や税金、患者が窓口で支払う自己負担で賄われています。

具体的には、
▽国民や事業主が支払う保険料が24兆円、
▽税収などをもとにした国と地方の支出が17兆円、
▽患者が窓口で支払う自己負担などが7兆円となっています。

医療費は高齢化に伴って年々増え続けていて、来年度・2024年度は、診療報酬の改定率が仮にゼロ%だった場合8800億円増加し、
▽保険料は4400億円、
▽国と地方の支出は3400億円、
▽患者の自己負担などは1100億円の増加が見込まれます。

診療報酬の改定率が仮に1%引き上げられた場合、4800億円程度増える計算で、その場合、
▽保険料の負担は2400億円、
▽国や地方の支出は1800億円、
▽患者の自己負担などが700億円増えます。

一方、政府は少子化対策の強化のために2028年度までに国と地方の総額で年間3兆6000億円程度の安定的な財源を確保するとしています。

内訳としては、
▽すでにある予算の活用で1兆5000億円程度、
▽社会保障の歳出改革で1兆1000億円程度、
▽公的医療保険を通じて国民や企業から集める「支援金制度」によって1兆円程度を見込んでいます。

「支援金制度」は、医療や介護など社会保障費の歳出改革と国民の賃上げの実現を通じて保険料負担の軽減を図り、その範囲内で集めることで、国民に実質的な負担が生じないようにしていくとしています。

診療報酬が引き上げられれば医療費は膨らみやすくなり、目標とする社会保障の歳出改革を実現するには、それ以外の部分でさらに改革を徹底する必要が出てきます。

医療費の増加や少子化対策の強化といった課題に、国民負担をどう抑えながら対応していくかが課題となっています。

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