税制改正大綱を決定 所得税定額減税の制度設計など 自公両党

自民・公明両党は、来年度の税制改正大綱を14日決定し、所得税などの定額減税について年収2000万円を超える人を対象から外す所得制限を設けることを盛りこみました。一方、防衛費の財源確保に向けた増税は具体的な開始時期の決定を見送りました。

与党の税制改正大綱は、14日午後、自民・公明両党の政務調査会長と税制調査会長らが会談して決定しました。

大綱では、1人あたり4万円の所得税などの定額減税について、富裕層は対象にすべきではないとして、年収2000万円を超える人を外す所得制限を設けるとしています。

また、定額減税を来年実施することを明記した上で、公明党の主張にも配慮して柔軟に対応できるとした内容を盛り込み、再来年以降の実施にも含みを持たせました。

児童手当を高校生まで拡充することに伴い、高校生などを扶養する場合の扶養控除の扱いについては、所得税の課税対象から差し引く控除額を年38万円から25万円に住民税は年33万円から12万円に縮小する案をもとに来年、結論を出すとしています。

その上で、子育て世帯への税制面の支援を強化するため、来年引き下げが予定されていた住宅ローン減税の対象となる借入額の上限を、子育て世帯や夫婦のいずれかが39歳以下の若い世帯に限り、引き下げを見送るとしています。

一方、1億円を超える企業が対象となる外形標準課税について、課税逃れを防ぐため、企業が資本金を1億円以下に減らし資本剰余金として計上しても、あわせて10億円を超える場合は課税の対象にするとしています。

さらに、賃上げを実施した企業の法人税を減税する「賃上げ税制」では、赤字などの中小企業でも、5年以内であれば黒字になるまで減税の優遇措置を繰り越せる制度を導入するとしています。

また、半導体や蓄電池など脱炭素や経済安全保障の観点から重要な物資を国内で生産する企業に対する減税措置を新設するなど、賃上げや国内投資を促すための税制も盛り込んでいます。

一方で、防衛費の財源確保に向けた増税については、今回も具体的な開始時期の決定を見送りました。

このほか、ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」をめぐり、自民・公明・国民民主の3党で引き続き協議することを盛り込む方針でしたが、国民民主党が内閣不信任決議案に賛成したことを問題視し記載を見送りました。

減税とあわせ 低所得者への給付も

1人当たり4万円の所得税などの定額減税とあわせ、政府は低所得者への給付措置も設けることにしています。

所得税と住民税の非課税世帯には、すでに給付している3万円に加え、7万円の給付を行うことにしています。

また、所得税を納めていないものの住民税は納めている世帯も、10万円を給付する方針です。

政府は、こうした世帯のうち、子育て世帯には、さらに手厚い支援が必要だとして、18歳以下の子ども1人当たり5万円を追加で給付する方向で調整を進めています。

いずれも早ければ来年2月から3月にかけて給付を始めたいとしています。

さらに政府は、所得税を納めていても年間の納税額が1人当たり4万円に満たない人に対しては、減税額に達するまでの差額を1万円単位で給付する案を検討しています。

一連の措置の財源には、今年度の当初予算の予備費と今年度の補正予算を充てる計画です。

自民 萩生田政調会長「適正な価格転嫁・賃上げの結果 引き出す」

自民党の萩生田政務調査会長は、与党政策責任者会議のあと記者団に対し、「最終的な大きな目標は、足元の物価高に目配りしながらデフレから完全脱却することで、そのための適正な価格転嫁や賃上げという結果を引き出していきたい」と述べました。

そして、防衛費の財源確保に向けた増税の開始時期の決定を見送ったことについては「増税はどこかでスタートしなければならない安定的な財源確保策だが、幸い来年度予算案についてはすでに確保のめどがついており、ことしの税制調査会で無理に時期を出す必要もないと判断された」と述べました。

公明 高木政調会長「デフレ脱却・持続的な賃上げを確実に」

公明党の高木政務調査会長は、与党政策責任者会議のあと記者団に対し、「デフレ脱却や持続的な賃上げをしっかりと確実なものにしていく」と述べました。

そして、防衛費の財源確保に向けた増税の開始時期の決定を見送ったことについて、「実質賃金をプラスに転じていく流れを政府・与党で打ち出している中で、『増税』が前面に出るのはいかがなものかという議論もあった。まずは経済をしっかり立て直すという前提で判断されたものだ」と述べました。

自民 宮沢税調会長「日本の成長に向け 種をまけた」

自民党の宮沢税制調査会長は記者会見で、「ことしは所得減税などがあり、長丁場の作業だったが、非常に成果のあるものになった。賃上げ税制など、今後の日本の成長に向けて種をまくことができた税制改正だった」と述べました。

一方で、防衛費の財源確保に向けた増税の開始時期の決定を見送ったことについて「増税というものは、それなりに政権の力が必要だが、残念ながら、昨今の政治状況は、かなり自民党にとって厳しく、ことしは決定しないことになった」と述べました。

公明 西田税調会長「国民負担より強い経済を作る税制になった」

公明党の西田税制調査会長は記者会見で「税制は政治のメッセージであり、家計を何とかやりくりできるようにしていくというメッセージが大変重要で、一貫性をもって国民に訴える必要があった。国民に負担をお願いするより、暮らしを守るための賃上げをいかに進めていけるかに全力を投じ、力強い経済を作り上げていく税制になったのではないか」と述べました。

自民 浅尾政調会長代理

自民党の浅尾政務調査会長代理はNHKの取材に対し、防衛費の財源確保に向けた増税の開始時期の決定を見送ったことについて「防衛費は確保する一方、今の景気の状況も考えなければならないということであり、派閥の政治資金パーティーの問題は直接関係ない。歳出は決まっているので、来年は方向性をしっかりと決めなければならない」と述べました。

自民 太田参院議員「派閥資金問題は影響なし」

自民党の太田房江・参議院議員は、記者団に対し、防衛費の財源確保に向けた増税の開始時期の決定を見送ったことについて「増税と定額減税の関係を岸田政権が追及され、支障のない範囲での先送りであり、致し方ない」と述べました。

また記者団から、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題が影響を与えたかを問われ「まったくない。粛々と議論し、しっかり仕事をしたと思っている」と述べました。

自民 上野衆院議員「防衛費 増税実施時期 明記すべきだった」

自民党の上野賢一郎衆議院議員はNHKの取材に対し、防衛費の財源確保に向けた増税の開始時期の決定を見送ったことについて「現在のさまざまな経済状況などを踏まえるとやむをえないところもあるが、実施時期も含めて明記した方がよかった。来年またしっかり議論していきたい」と述べました。

一方、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題について「不透明な政治資金の流れは許されないので明確にしていく必要があると思うし、抜本的な改革も必要だ」と述べました。

国民 玉木代表「トリガー条項協議 自民の復帰を望む」

国民民主党の玉木代表は記者団に対し、来年度の税制改正大綱で、ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」をめぐる記載が見送られたことについて「与党内でどういう議論があったのか承知してない。『トリガー条項』の問題点をどう克服するか議論することは、自民・公明両党との間で決めていて、その協議自体が無くなったとは聞いていない。岸田総理大臣の指示を萩生田氏の次の政務調査会長に引き継いでもらい、自民党が協議に速やかに復帰することを切に望む」と述べました。