海外アプリで巨大IT企業に消費税納税義務を導入へ

オンラインゲームの人気の高まりもあって拡大が続くスマートフォン向けアプリの市場。14日に決定された自民・公明両党の来年度の税制改正大綱には、海外の事業者のアプリの売り上げにかかる消費税の納税義務を、アプリの販売元ではなく、IT大手など、「アプリストア」の運営企業に課す新たな制度導入の方針が盛り込まれました。消費税をめぐる国内と海外の事業者の間の不均衡の解消を目指しています。

海外と国内の事業者の “税をめぐる不均衡” 解消ねらう

総務省の情報通信白書によりますと、国内のスマートフォンアプリの市場規模は、来年には5兆1471億円に達すると予想されていて、2015年の5倍以上に拡大しています。

中でも、通勤・通学のすき間時間などに楽しめるオンラインゲームの人気が高まっていて、スマホ向けアプリの売上高全体のおよそ6割を占めています。

しかし、こうしたアプリを販売する国内の事業者と、海外に拠点を置く事業者との間で税をめぐる不均衡があるという指摘がされてきました。

海外の事業者であっても、日本での売り上げにかかる消費税は、日本に納める必要がありますが、これらが適切に納められていないケースが少なくないとされているのです。

例えば、世界的に人気のオンラインゲーム「フォートナイト」を日本向けに提供しているルクセンブルクの法人が日本のユーザーからの課金収入をめぐって、東京国税局からおよそ30億円の消費税の申告漏れを指摘され、およそ35億円を追徴課税されたことも、11月に明らかになっています。

関係者によりますと、事業者が意図的に納めていない、あるいは、日本の税制度が理解されていない、両方のケースがあると考えられていますが、海外に拠点が置かれている事業者の場合、日本の国税当局による調査が難しく、実態を把握しづらいという課題もありました。

14日に決定された自民・公明両党の来年度の税制改正大綱には、海外の事業者が、「アプリストア」などのプラットフォームを介して日本の消費者にアプリを販売した場合、プラットフォームを運営している企業が、販売を行ったとみなし、消費税の納税義務を課すという新たな制度導入の方針が盛り込まれました。

プラットフォームでの海外事業者のアプリの売上額が、年間50億円を超えるグーグルやアップルなどのIT大手を想定し、再来年4月から制度を適用するとしています。

国税庁によりますと、アプリなど、デジタルサービスのプラットフォームの運営企業に対して課税する制度は、EUなど多くの主要国ですでに導入されているということです。

事業者「市場成長させるにはフェアな競争環境が必要」

ゲームアプリのデータなどをまとめた「ファミ通モバイルゲーム白書2023」によりますと、国内のゲームアプリの売り上げトップ10のうち3本は、海外の事業者が販売元になっています。

市場での競争が激しくなる中、アプリの開発や販売をしている国内の事業者からは、公平性の確保を求める声が上がっています。

東京・渋谷区の「MIXI」は、自分で育てたキャラクターで敵を倒して遊ぶスマートフォン向けのゲームが10年前の発売以来、ヒットを続けていますが、ユーザーがゲームに求めるクオリティーが高まっている事に加え、人件費や物価の高騰もあって、ゲーム1本あたりの開発コストは、年々上昇しているといいます。

こうした中、税を適正に納めない事業者があった場合、正しい競争が損なわれると考えています。

MIXI 島村恒平CFO
「年間100億円近い消費税を納付しているが、中長期で見れば、消費税を納める会社とそうでない会社との間で会社に留保できる額が大きく変わってくるので、将来的な競争力にも影響が出てくる。市場を成長させるためにはフェアな競争環境が必要で、同じ条件のもとで勝負できる土台が作られることを望んでいる」

ゲームファン「どの国で作られているかは気にならない」

スマートフォンでオンラインゲームを楽しむ人に、街で話を聞きました。

1日で10時間ほどプレイすることもあるという20代女性
「目的は暇つぶしとストレス発散です。月に最高で3万円ほど課金したこともあります」

海外のゲームを楽しむことがあるという20代男性
「海外ゲームは日本のゲームよりたくさんのお金を投資して作られている印象で、キャラクターのデザインもしっかりしていると思います。ゲームをダウンロードする時、どこの国の会社が作っているかは、あまり気になりません」

専門家「税制も社会の動きに適応し 変えていくべき」

アプリのプラットフォームの運営企業に消費税の納税義務を課すという新たな制度の導入について、租税法に詳しい青山学院大学の三木義一名誉教授は、「国税当局のマンパワーの限界もあって、零細を含めた海外の事業者すべてに納税を求めていくことは事実上不可能という現実があったと思う。プラットフォームに課税するという仕組みは、EUなど大半の国ですでに導入されていて、日本と同様の制度を採用しているのはすでに数か国しかなく、対応は遅かったと感じる。これから先、国際取引はさらに増えていくわけで、税の制度も、社会の動きに適応した仕組みに変えていく必要がある」と話していました。